[スポンサーリンク]

B

ボールドウィン則 Baldwin’s Rule

[スポンサーリンク]

 

概要

分子内閉環反応の起こりやすさは、閉環部位での軌道相互作用の難易に大きく影響される。この傾向を纏め上げたものがBaldwin則である。

求核・求電子・ラジカル環化いずれに対しても適用可能。

基本文献

<review>
  • Gilmore, K.; Alabugin, I. V. Chem. Rev. 2011, 111, 6513–6556. DOI: 10.1021/cr200164y
  • Gilmore, K.; Mohamed, R. K.; Alabugin, I. V. Wiley Interdisciplinary Review: Comp. Mol. Sci. 2016, DOI: 10.1002/wcms.1261

開発の歴史

1976年イギリス・オックスフォード大学のBaldwinが閉環反応の起こりやすさの傾向をまとめ、論文に報告した。

Sir Jack Edward Baldwin

Sir Jack Edward Baldwin

詳細

エントロピー効果、立体電子効果、環ひずみなどを考慮すると、閉環のための一般的経験則が総じて以下のようにまとめられる。

・5~7員環は最も巻きやすい。
・3,4員環は環ひずみを生じる分、生成速度は小さくなる。
・8~11員環は渡環反発および環歪みを生じ最も形成が困難。
・12員環以上は閉環がエントロピー的に不利であり、分子間反応が起こりやすい。

開裂する結合が環の外側にある場合をexo環化、内側にある場合をendo環化と呼んで区別する。

baldwin_rule_3.gif
求核剤攻撃を受ける炭素の混成がsp3の場合はテトラヘドラル(tet、sp2の場合はトリゴナル(trig、spの場合はダイアゴナル(digと表記して分類する。軌道相互作用を考慮すると、求核剤は下に示すように適切な角度をもってして接近する必要に迫られる。この接近が容易かそうでないかで環化の起こりやすさは決まる。
baldwin_rule_4.gif
以上に形成環の員数を付け加えて環化反応を分類すると、以下のようなルールが成り立つ。

有利: 3~7-exo-tet、3~7-exo-trig、6,7-endo-trig, 3~7-endo-dig, 5~7-exo-dig

不利: 5~7-endo-tet、3~5-endo-trig、3,4-exo-dig

不利な環化だからといって起こらないわけではなく、あくまで有利な環化に比べて起こりにくいだけである。

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”462108447X” locale=”JP” title=”ショートコース有機化学 有機反応からのアプローチ”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. フリーデル・クラフツアルキル化 Friedel-Crafts A…
  2. 野崎・檜山・岸反応 Nozaki-Hiyama-Kishi (N…
  3. チャン・ラム・エヴァンス カップリング Chan-Lam-Eva…
  4. バートン脱アミノ化 Barton Deamination
  5. 史 不斉エポキシ化 Shi Asymmetric Epoxida…
  6. メーヤワイン アリール化反応 Meerwein Arylatio…
  7. 芳香族メタ光環化付加 Aromatic meta-photoc…
  8. メチオニン選択的タンパク質修飾反応 Met-Selective …

注目情報

ピックアップ記事

  1. 結晶世界のウェイトリフティング
  2. 学士院賞:数論幾何学の加藤和也京大大学院教授ら10人に
  3. カーボンナノリングのキーホルダー式固定化法の開発
  4. ライマー・チーマン反応 Reimer-Tiemann Reaction
  5. 星本 陽一 Yoichi Hoshimoto
  6. 親子で楽しめる化学映像集 その2
  7. 1つの蛍光分子から4色の発光マイクロ球体をつくる
  8. 井野川 人姿 Hitoshi INOKAWA
  9. 固体高分子電解質の基礎、材料技術と実用化【終了】
  10. アメリカで Ph.D. を取る –結果発表ーッの巻–

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

CIPイノベーション共創プログラム「有機電解合成の今:最新技術動向と化学品製造への応用の可能性」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「有機電解合…

CIPイノベーション共創プログラム「世界を変えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界を変え…

年会特別企画「XAFSと化学:錯体, 触媒からリュウグウまで –放射光ことはじめ」

放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAFS)は、物質の電子状態や局所構造を元素選択的に明らかにでき…

超公聴会 2026 で発表します!!【YouTube 配信】

超公聴会は、今年度博士号を取得する大学院生が公聴会の内容を持ち寄ってオンライン上で発表する会です。主…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

さて、Part Iに引き続きPart II!年会をさらに盛り上げる企画として、2011年より…

凍結乾燥の常識を覆す!マイクロ波導入による乾燥時間短縮と効率化

「凍結乾燥は時間がかかるもの」と諦めていませんか?医薬品や食品、新素材開発において、品質を維…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

まだ寒い日が続いておりますが、あっという間に3月になりました。今年も日本化学会春季年会の季節です。…

アムホテリシンBのはなし 70年前に開発された奇跡の抗真菌薬

Tshozoです。以前から自身の体調不良を記事にしているのですが、昨今流行りのAIには産み出せな…

反応操作をしなくても、化合物は変化する【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか温度を測ること…

ジチオカーバメートラジカル触媒のデザイン〜三重項ビラジカルの新たな触媒機能を発見〜

第698回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(大井研究室)博士後期課程1年の川口…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP