[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

【書籍】フロンティア軌道論で理解する有機化学

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”475981986X” locale=”JP” title=”フロンティア軌道論で理解する有機化学”]

「軌道の見方がわかる!有機反応を一貫して軌道論に基づいて解説。新しい有機化学を切り拓く読者へ贈る入魂の一冊」
(引用:書籍の帯)

昨年末刊行された「フロンティア軌道論で理解する有機化学」をご存じでしょうか。
今回はこの本についてご紹介させていただきたいと思います。

内容

量子論に基づくフロンティア軌道論は,有機電子論では難しかった筋の通った説明を有機化学に与えうる.本書の精緻な軌道図とその解説は,複雑な計算なしに学生や有機化学者の軌道図を見る目を養う.現代の有機化学に必要なエッセンスをコンパクトにまとめた意欲作.

(引用:化学同人による書籍紹介ページ

その本の名の通り、フロンティア軌道論を用いて有機化学の基礎的な反応を理解していこうという本です。

対象

  • 有機化学を学ぶすべての人
  • 軌道論が軌道計算式ばかりでとっつきづらいと感じている人

本書の構成

  • 序章 軌道論のすすめ
  • 1章 構造と結合に関する軌道論
  • 2章 反応と機構に関する軌道論
  • 3章 軌道論の基礎固め
  • 4章 代表的な反応剤のHOMO,LUMO
  • 5章 HOMO,LUMOからみた有機反応

いきなり反応について学ぶのではなく、結合の軌道論を学び(1章)、反応を見る際に必要となる基礎的な軌道について学んでいき(2章)、・・・と段階的に学んでいくことにより有機反応をフロンティア軌道論によって理解することができます。
反応に関してはカルボニル化合物への求核攻撃やヒドロホウ素化、金属カップリングに至るまで、学部生が授業で学ぶ有機化学の反応の軌道論はほぼ網羅されています。
以下に私が個人的にこんな基礎概念も本書の軌道論からわかりやすく学べますよというものを何個かご紹介します。

立体反発って何?

みなさんは立体反発という言葉を何気なく使ってはいませんでしょうか。
便利な言葉ではあるため、よく用いて反応の機構を説明することかと思います。
使うに当たっては、意味(その由来)をよく理解した上で、その説明を省略するために用いるということがよいかと思いますが学会などで稀に誤った用法が見受けられます。
この本の中では、立体反発がどこに起因しているのかというのを軌道間相互作用を可視化して記載しているため、だれにでも理解できるように構成されています。

ゴーシュ効果

ゴーシュ効果といったらみなさんもご存じかと思います。
それではゴーシュ配座はなぜそのような配座をとっているのでしょうか。
それこそ立体反発のみで考える方も多いかと思います。
しかし、本書で記載されている分子軌道論による説明を読めば化合物によってはそれだけではないということがわかります。
たとえば、エタンの両炭素に立体的に嵩高い置換基がついていた場合にはその分子は置換基がアンチペリプラナーの関係になるような配座をとると知られています。
しかしながら1,2-ジフルオロエタンではそのような配座よりもゴーシュ配座の方が安定なのです。
本書ではそのような各基礎的な現象・概念の細かな部分も軌道論を用いて解説されており、それが可視化されているという点で読みやすい書となっています。

最後に

本書は有機分子を扱う方で、分子軌道論を学びたいと考えている初学者の方には強くおすすめする本です。

関連記事

関連書籍

[amazonjs asin=”4061543326″ locale=”JP” title=”フロンティア軌道論で化学を考える (KS化学専門書)”] [amazonjs asin=”4061392506″ locale=”JP” title=”フロンティア軌道法入門 有機化学への応用 (KS化学専門書)”] [amazonjs asin=”4061533797″ locale=”JP” title=”有機反応軌道入門―フロンティア軌道の新展開”]

gladsaxe

投稿者の記事一覧

コアスタッフで有りながらケムステのファンの一人。薬理化合物の合成・天然物の全合成・反応開発・計算化学を扱っているしがない助教です。学生だったのがもう教員も数年目になってしまいました。時間は早い。。。

関連記事

  1. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方
  2. 有機化合物のスペクトルによる同定法―MS,IR,NMRの併用 (…
  3. カーボンニュートラルへの化学工学: CO₂分離回収,資源化からエ…
  4. 入門 レアアースの化学 
  5. これならわかる マススペクトロメトリー
  6. 光化学フロンティア:未来材料を生む有機光化学の基礎
  7. 構造生物学
  8. 【書評】きちんと単位を書きましょう 国際単位系 (SI) に基づ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学物質の環境リスクを学べる「かんたん化学物質ガイド」開設
  2. マイクロ波合成装置の最先端!
  3. 製薬各社 2010年度決算
  4. NeoCube 「ネオキューブ」
  5. 乙卯研究所 研究員募集 2023年度【第二弾】
  6. ブラッドリー・ムーアBradley Moore
  7. ダルツェンス縮合反応 Darzens Condensation
  8. FAMSO
  9. 植物の受精効率を高める糖鎖「アモール」の発見
  10. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

査読に AI を使われた体験談

生成 AI の普及は加速しており、調べもの、英文校閲など研究者の皆さんも活用していることと思います。…

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP