[スポンサーリンク]

N

ニトロキシルラジカル酸化触媒 Nitroxylradical Oxidation Catalyst

[スポンサーリンク]

概要

アルキル置換型ヒドロキシルアミンは空気下に容易に酸化を受ける。このときアミンα位炭素にプロトンが結合していると脱離してニトロンを生成するが、4置換炭素であったりanti-Bredt型のためプロトン脱離しにくい構造を取る骨格の場合は、ニトロキシルラジカルとして安定に存在しうる。これらはアルコールをカルボニルへと変換する穏和な酸化触媒として応用できる。

かねてよりTEMPOが酸化触媒として広く活用されてきたが、活性中心周りの立体障害を小さくしたAZADOシリーズが高活性酸化触媒になることが岩淵らによって示され、より広汎な基質へと応用可能になった。TEMPO酸化については別項を参照されたい。

また近年では銅もしくは鉄触媒との組み合わせによって高化学選択的な酸素酸化が行えることが示されている。こちらも別項を参照されたい。

基本文献

<AZADO & Me-AZADO>

  • Shibuya, M.; Tomizawa, M.; Suzuki, I.; Iwabuchi, Y. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8412. DOI: 10.1021/ja0620336

<ABNO>

  • Shibuya, M.; Tomizawa, M.; Sasano, Y.; Iwabuchi, Y. J. Org. Chem. 2009, 74, 4619. DOI: 10.1021/jo900486w

<keto-ABNO>

<nor-AZADO>

  • Hayashi, M.; Sasano, Y.; Nagawsawa, S.; Shibuya, M.; Iwabuchi, Y. Chem. Pharm. Bull. 2011, 59, 1570. doi:10.1248/cpb.59.1570

<review>

 

反応機構

触媒サイクルの基本的な考え方はTEMPO酸化を参照。

各々のニトロキシルラジカルは、構造および置換基の違いによって酸化還元電位を大きく変える事ができる。このため構造チューニングによって酸化活性を調節することが可能となる。(参考:Tetrahedron Lett. 201253, 2070.)

N_oxylradical_10

(画像:ACS Catal. 20133, 2612. より引用)

反応例

立体的に混み合ったアルコールの酸化[1]

N_oxylradical_3

亜塩素酸を共酸化剤として用いることでカルボン酸まで一段階で酸化可能。[2]

N_oxylradical_4
NOx共存下に酸素酸化を行うことも可能。[3]

N_oxylradical_5

触媒にキラリティを持たせることによって速度論的光学分割酸化が行える。[4]

N_oxylradical_2

フルオロアルコールの穏和な酸素酸化[5]

N_oxylradical_6

Taiwaniadductsの全合成[6]

N_oxylradical_7

Sphingofungin Eの合成[7]:シアノヒドリン経由で酸化することで困難な位置の酸化を達成している。

N_oxylradical_8

(-)-acetylaranotinの合成[8]

N_oxylradical_9

参考文献

  1. Shibuya, M.; Tomizawa, M.; Suzuki, I.; Iwabuchi, Y. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8412. DOI: 10.1021/ja0620336
  2. Shibuya, M.; Sato, T.; Tomizawa, M.; Iwabuchi, Y. Chem. Commun. 2009, 1739. DOI: 10.1039/B822944A
  3. (a) Shibuya, M.; Osada, Y.; Sasano, Y.; Tomizawa, M.; Iwabuchi, Y. J. Am. Chem. Soc. 2011, 1336497. doi:10.1021/ja110940c (b) Liu, R.; Liang, X.; Dong, C.; Hu, X. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 4112. DOI: 10.1021/ja031765k (c) Lauber, M. B.; Stahl, S. S. ACS Catal. 20133, 2612. DOI: 10.1021/cs400746m
  4. Murakami, K.; Sasano, Y.; Tomizawa, M.; Shibuya, M.; Kwon, E.; Iwabuchi, Y. J. Am. Chem. Soc. 2014, 13617591. DOI: 10.1021/ja509766f
  5. Kadoh, Y.; Tashiro, M.; Oisaki, K.; Kanai, M. Adv. Synth. Catal. 2015, DOI: 10.1002/adsc.201500131
  6. Deng, J.; Zhou, S.; Zhang, W.l Li, J.; Li, R.; Li, A. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 8185. DOI: 10.1021/ja503972p
  7. Ikeuchi, K.; Hayashi, M.; Yamamoto, T.; Inai, M.; Asakawa, T.; Hamashima, Y.; Kan, T. Eur. J. Org. Chem. 201330, 6789. DOI: 10.1002/ejoc.201301065
  8. Fujiwara, H.; Kurogi, T.; Okaya, S.; Okano, K.; Tokuyama, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 13062. DOI: 10.1002/anie.201207307

関連書籍

外部リンク

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ネバー転位 Neber Rearrangement
  2. 三枝・伊藤 インドール合成 Saegusa-Ito Indole…
  3. 求核剤担持型脱離基 Nucleophile-Assisting …
  4. 有機テルル媒介リビングラジカル重合 Organotelluriu…
  5. アマドリ転位 Amadori Rearrangement
  6. エッシェンモーザーメチレン化 Eschenmoser Methy…
  7. ピーターソンオレフィン化 Peterson Olefinatio…
  8. エピスルフィド合成 Episulfide Synthesis

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 材料適合性 Material compatibility
  2. 炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす
  3. 基礎から学ぶ機器分析化学
  4. ナノチューブを簡単にそろえるの巻
  5. 位置およびエナンチオ選択的Diels-Alder反応に有効な不斉有機触媒
  6. 【速報】新元素4つの名称が発表:日本発113番元素は「ニホニウム」!
  7. 深海の美しい怪物、魚竜
  8. 林・ヨルゲンセン触媒 Hayashi-Jørgensen Catalyst
  9. 「さびない鉄」産業界熱視線
  10. サレット・コリンズ酸化 Sarett-Collins Oxidation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年7月
« 6月   8月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

注目情報

最新記事

Delta 6.0.0 for Win & Macがリリース!

NMR解析ソフトDeltaの最新版6.0.0がリリースされました!&nb…

こんなのアリ!?ギ酸でヒドロカルボキシル化

可視光レドックス触媒によるギ酸を炭素源としたヒドロカルボキシル化が開発された。チオール触媒を介したラ…

ポンコツ博士研究員の海外奮闘録 ケムステ異色連載記

本稿は,世間一般にほとんど知られていない地方私立大学で学位を修了し,エリートでもなく何も成し遂げてい…

新型コロナの飲み薬モルヌピラビルの合成・生体触媒を用いた短工程化

新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) 感染症に対する飲み薬として、Merck…

秋吉一成 Akiyoshi Kazunari

秋吉 一成(あきよしかずなり)は日本の有機化学者である。京都大学大学院 工学研究科 高分子化学専攻 …

NIMS WEEK2021-材料研究の最新成果発表週間- 事前登録スタート

時代を先取りした新材料を発信し続けるNIMS。その最新成果を一挙ご紹介する、年に一度の大イベント「N…

元素記号に例えるなら何タイプ? 高校生向け「起業家タイプ診断」

今回は化学の本質とは少し離れますが、元素をモチーフにしたあるコンテンツをご紹介します。実験の合間…

多価不飽和脂肪酸による光合成の不活性化メカニズムの解明:脂肪酸を活用した光合成活性の制御技術開発の可能性

第346回のスポットライトリサーチは、東京大学 大学院総合文化研究科(和田・神保研究…

10手で陥落!(+)-pepluanol Aの全合成

高度な縮環構造をもつ複雑天然物ペプラノールAの全合成が、わずか10工程で達成された。Diels–Al…

吉野彰氏が2021年10月度「私の履歴書」を連載。

今年の10月はノーベル化学賞が有機化学分野から出て、物理学賞を真鍋淑郎先生が受賞して、非常に盛り上が…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP