[スポンサーリンク]

H

均一系水素化 Homogeneous Hydrogenaton

[スポンサーリンク]

 

概要

アルケンへの均一系触媒を用いる水素化。水素はsyn付加する。また、アルキンからも同様にアルカンを得ることができる。均一系のメリットは条件の穏和さおよび化学選択性にある。他方、触媒の分離・後処理が不均一系のそれと比してやや面倒なこともある。

DIPAMPを創製しL-DOPAの工業化に成功したW.S.Knowles、およびBINAPの創製者である野依良治は2001年のノーベル化学賞を受賞している。

基本文献

  • Wilkinson catalyst: (a) Osborn, J. A.; Jardine, F. H.; Young, J. F.; Wilkinson, G. J. Chem. Soc. A 1966, 1711. doi:10.1039/J19660001711 (b) Harmon, R. E.; Gupta, S. K.; Brwon, D. J. Chem. Rev. 1973, 73, 21. DOI: 10.1021/cr60281a003
  • Birch, A. J.; Williamson, D. H. Org. React. 197624, 1.
  • Crabtree catalyst: (a) Crabtree, R. H. Acc. Chem. Res. 197912, 331. DOI: 10.1021/ar50141a005 (b) Crabtree, R. h.; Davis, M. W. J. Org. Chem. 198651, 2655.DOI: 10.1021/jo00364a007
  • Asymmetric Hydrogenation: (a) Ojima, I.; Clos, N.; Bastos, C. Tetrahedron 1989, 45, 6901. doi:10.1016/S0040-4020(01)89159-6 (b) Gridner, I. D.; Imamoto, T. Acc. Chem. Res. 200437, 633. DOI: 10.1021/ar030156e

 

反応機構

Wilkinson錯体の場合、オレフィンの挿入段階が律速なので、配位しやすい基質ほど反応しやすい。このため反応性は下に示す順列に従う。
homogeneous_hydrogenation_4.gif

反応例

Schrock-Osborn触媒やCrabtree触媒のようなカチオン性触媒は、近傍に配位性官能基が存在すると、触媒配向により立体選択的還元を起こせる。[1] homogeneous_hydrogenation_2.gif
オレフィン選択的還元の例。ニトロ基、ニトリル、カルボニルなどは還元されない。ただしアルデヒドが存在すると脱カルボニル化が進行するので、用いることが出来ない。
homogeneous_hydrogenation_5.gif
L-DOPA合成の不斉水素化工業プロセス
homogeneous_hydrogenation_6.gif
Taxolの合成[2] homogeneous_hydrogenation_10.gif
ジアミン配位子を加えると、化学選択性が劇的に変化する。アミンのプロトンがカルボニル酸素と相互作用した遷移状態をとるためだと考えられている(野依不斉水素移動反応も参照)。
homogeneous_hydrogenation_11.gif

実験手順

ニトロアルケンの還元[3] homogeneous_hydrogenation_9.gif

実験のコツ・テクニック

通常Wilkinson錯体と呼ばれるロジウム錯体がFirstChoiceとして用いられるが、反応性の低い四置換オレフィンは還元できない。イリジウムを中心金属とするCrabtree触媒を用いると四置換オレフィンでも反応は進行する。
homogeneous_hydrogenation_3.gif
キラルな二座不斉リン配位子を用いる不斉水素化テクノロジーは、現代までに高度な発展を見せ、いくつかのプロセスが工業化に至っている。中でも、以下に示す配位子が歴史的・実用的には重要とされる。
homogeneous_hydrogenation_8.gif

参考文献

[1] (a) Crabtree, R.H. Davis, M. W. J. Org. Chem. 1986, 51, 2655. DOI: 10.1021/jo00364a007 (b) Brown, J. M.; Hall, S. A. Tetrahedron Lett. 198425, 1393. doi:10.1016/S0040-4039(01)80167-2

[2] Wender, P. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 1997119, 2755 & 2757. DOI: 10.1021/ja9635387 DOI: 10.1021/ja963539z

[3] Harmon, R. E.; Parsons, J. L.; Cooke, D. W.; Gupta, S. K.; Schoolenberg, J. J. Org. Chem. 1969, 34, 3684. DOI: 10.1021/jo01263a122

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. パターノ・ビューチ反応 Paterno-Buchi Reacti…
  2. シモンズ・スミス反応 Simmons-Smith Reactio…
  3. ブーボー/ボドロー・チチバビン アルデヒド合成 Bouveaul…
  4. 庄野酸化 Shono Oxidation
  5. 還元的アルドール反応 Reductive Aldol React…
  6. 還元的脱硫反応 Reductive Desulfurizatio…
  7. ベンジジン転位 Benzidine Rearrangement
  8. 触媒的C-H活性化反応 Catalytic C-H activa…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. カルロス・バーバス Carlos F. Barbas III
  2. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (2)
  3. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑥
  4. 「魔法の水でゴミの山から“お宝”抽出」
  5. 2011年10大化学ニュース【前編】
  6. 平尾一郎 Ichiro Hirao
  7. 「先端触媒構造反応リアルタイム計測ビームライン」が竣工
  8. E-mail Alertを活用しよう!
  9. 拡張Pummerer反応による簡便な直接ビアリール合成法
  10. 離れた場所で互いを認識:新たなタイプの人工塩基対の開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP