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化学者のつぶやき

実験教育に最適!:鈴木ー宮浦クロスカップリング反応体験キット

日本が誇る有機合成技術「クロスカップリング反応」。そう、パラジウム触媒存在下ハロゲン化物と有機金属反応剤を混ぜるだけで2つのユニットをつなげることができる素晴らしい反応です。特に有機金属反応剤として有機ホウ素化合物を用いたものは鈴木ー宮浦クロスカップリング反応と呼ばれ、工業的にも広く用いられ、かつ有機合成に詳しくないひとでも比較的簡単に炭素ー炭素結合をつくれることから多分野に波及している分子構築法です。

その功績から2010年のノーベル化学賞を受賞し…

とここまではケムステの読者ならばいうまでもなくご存知のところだと思います。

受賞当時は「誰もが知る偉業」と思っていましたが、最近大学学部1年生(理学部)の授業で尋ねてもピンと来ない人が多いようです。過去の偉業であり現在は使われていないものならばまだしも、最新化学でも頻繁に使われているクロスカップリング反応を知らないのは残念極まりない!と思うのですが、仕方がない面もあります。それは、

合成反応って地味!

ということです。混ぜて出来ました!といっても実際の生成物を目指できるわけでもなく、スペクトルを学んでいなければ通常構造決定もできません。うまく反応剤を設定して、白色固体として析出するような生成物に仕上げても、

「白い固体がでた。以上です。」

で終わります。そうビジュアル的にあまり感動が得られないんです。研究者の方ならTable of Contentsを書かなければならない際にそれを再認識することがあるでしょう。実際に使えるのだから、そこは関係ない!といいきってしまえばそれまでですが、そういった”地味な”実験では印象に残らないことは目に見えています。そういうわけで、高校でも、大学低学年の化学実験でもあまり採用されません。

さて、そんな地味なクロスカップリング反応をより”印象的”にすべく、開発されたのが「鈴木ー宮浦クロスカップリング反応キット2!」答えを先に行ってしまうと、なんと生成物が光ります。光るだけで印象付けるって小手先な…とお思いの方もいるかもしれませんが、視覚で捉えられる化学実験は大変効果的です。では簡単に内容を説明してみましょう。

 

実は第一弾があった「鈴木ー宮浦クロスカップリング反応キット」

よくみてください。今回のキットは「2」なんです。鈴木章先生がノーベル賞を受賞された、直後「鈴木ー宮浦クロスカップリング反応キット」は北海道大学の協力を得て、和光純薬から発売されていました(図1)。簡単にノーベル賞反応を体験できるということで人気を博しましたが、上記の理由などで、合成後なんとも言えない感想で終わることが多々あったそうです。

Kit_name

図1 鈴木ー宮浦クロスカップリング反応キット

 

反応は、以下のとおり(図2)。p-ブロモ安息香酸とフェニルボロン酸を水溶媒下、パラジウム触媒、塩基を加えて混ぜるとたった15分で生成物の4-ビフェニルカルボン酸(カリウム塩)がごそっと析出します。生成物は水に対する溶解性が低いので溶液が白く濁れば成功!

Reaction_Scheme

図2 第一弾の反応形式

 

「うわっ!白く濁った!」… はい地味ですね。

そこで、ごく最近、北海道大学大学院地球環境科学研究院 山田 幸司 准教授監修の元て開発したのが今回の第二弾です(図3)。

 

第二弾は光ります

 

Kit_Box

図3 鈴木ー宮浦クロスカップリング反応キット2

 

一見して第一弾と同じ雰囲気。第二弾においても、反応を仕込むのは至極簡単。アセトン溶媒に、パラジウム触媒と有機ハロゲン化物、有機ボロン酸を投入するのみ。

ただし、有機ハロゲン化物、有機ボロン酸の構造が異なっています。例えば、以下の反応ならば、出来上がった化合物は蛍光性を持った分子で、黄色に光ります。

Kit_Scheme1

 

さらに以下の反応は、生成物が青く光る。

 

Kit_Scheme2

さらにさらに、黄色に光った分子はソルバトクロミズム性をもつため、溶媒を少しかえるとなんと黄色から青に変わります(図4)。

Kit_name-1

図4 生成物にヘキサンを加えてブラックライトを照射

素晴らしい!これで、カップリング反応の歴史から、反応機構、開発者、蛍光の仕組み、さらにはソルバトクロミズムまで教えることできますね。地味な反応をうまく視覚化したアイデア商品です。

 

ぜひ採用を!

有機化学者としてはぜひとも高校や大学の実験に採用してほしいと思い、執筆しました。ところで気になるお値段はというと…,1キット14,000円!高い!ちなみに第一弾は10,000円なんで光る分値段があがってる…

これでは大勢で各人が実験するには少々お金がかかりすぎな感があります。そこで、裏ワザ(というほどでもないですが)!

実は量にもよりますが、このキッド買わなくても、夫々の試薬(パラジウム触媒、塩基、有機ボロン酸、有機ハロゲン化物)を買ったほうが安いのです。

キット内容
①. 2-アセチル-5-ブロモチオフェン 容量:820mg
②. 4-(N,N-ジメチルアミノ)-フェニルボロン酸-ピナコールエステル容量:500mg
③. p-メトキシフェニルボロン酸 容量:300mg
④. 炭酸ナトリウム   容量:200mg
⑤. 酢酸パラジウム   容量:8mg

これで、14,000円。個別で買うと、

①. 2-アセチル-5-ブロモチオフェン 容量:25g  10,000円 (820mg 328円)
②. 4-(N,N-ジメチルアミノ)-フェニルボロン酸-ピナコールエステル 容量:5g 30,000円 (500mg 3,000円)
③. p-メトキシフェニルボロン酸 容量25g  29,000円 (300mg 348 円)
④. 炭酸ナトリウム   容量:500g 980円 (200mg 0.4円)
⑤. 酢酸パラジウム   容量:1g 6500円 (8 mg 52円)

同じものが3,728円で準備できます。容量を小さくしてもおそらく5000円以下で準備できるでしょう。②が圧倒的に高いのが玉にキズですが、なんとか割引してもらいましょう!

とはいえど、折角なんで経緯を表して和光純薬で購入してあげてくださいね。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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コメント

  1. オキシムやヒドラゾンにすれば蛍光色が変わるとか、①ならpHで蛍光色が変わるとか、ありそうな予感

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