[スポンサーリンク]

ケムステニュース

エーザイ 巨大市場、抗ガン剤開発でライバルに先行

[スポンサーリンク]

ハリコンドリン

?

?

?

?

?

?

世界で286億ドル(約3兆2000億円)──。米医薬品調査会社のIMSが算出した抗ガン剤の2005年の市場規模(メーカー販売価格ベース)だ。抗ガン剤の市場は医薬品市場全体の成長率7%を上回る18%で拡大しており、2009年には550億ドル(約6兆2000億円)に達するとIMSは予測している。?

E7389

 巨大市場を前に、業界4位のエーザイや国内最大手の武田薬品工業、業界2位の第一三共、同3位のアステラス製薬の国内製薬大手4社は、これまで注力してこなかったこの抗ガン剤の市場開拓に乗り出した。こうした中、積極的に事業開拓に乗り出していると市場から評価されているのが、エーザイだ。

 エーザイは抗ガン剤の新薬候補で臨床試験が最も先行しており、「E7389」という開発コード名の化合物では、乳ガンの臨床試験が米国で第3相に入っている。今年3月にエーザイが発表した2012年3月期までの中期6カ年計画では、中枢神経とガンの2つの領域に研究開発費の75%を投入し、新薬開発を加速する方針を示した。E7389以外にも5つの抗ガン剤の新薬候補化合物を臨床試験中だ。(引用:日経ビジネスオンライン)

 E7389はハリコンドリンBというクロイソカイメン由来の海洋天然物の誘導体で、ハリコンドリンBの右半分の骨格を有しています。

 天然物ハリコンドリンBは1985年に現在名古屋大理学部の教授である上村大輔先生によって単離された天然物で、強力な抗腫瘍活性を示します。ただし天然からはほとんど量が得ることができないため合成による供給が必要でした。

 ハリコンドリンBを全合成したのはテトロドトキシンやパリトキシンの合成で有名なハーバード大学の岸義人教授。1992年のことでした。非常に複雑であるということから現在まで、この合成一例のみしかありません。鍵反応はNHK反応です。

 ボストンのエーザイ研究所は生物活性評価によりハリコンドリンBの半分の骨格を有するE7389でもハリコンドリンとほぼ同様な活性を示すことを見つけ、医薬品として展開し始めました。これを医薬品とするためににエーザイは数百グラムのE7389を合成したのです。問題がなければ、数年後には上市するでしょう。

 現在主力のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」と抗潰瘍剤「パリエット」が2013年までに両方とも欧米で特許が切れます。ここ数年ですばらしい躍進を見せているエーザイですが、この辺の開発にいくらお金をつぎ込み、シェアを確保することができるかが今後の課題となりそうですね。

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2023年版】
  2. 分子積み木による新規ゼオライト合成に成功、産総研
  3. ハーバード大Whitesides教授プリーストリーメダルを受賞
  4. Advanced Real‐Time Process Analy…
  5. エーザイ、米国で抗てんかん剤「Banzel」(ルフィナミド)の小…
  6. iPadで使えるChemDrawが発売開始
  7. 米デュポンの7-9月期、ハリケーン被害などで最終赤字
  8. 科学:太古の海底に眠る特効薬

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 私がなぜケムステスタッフになったのか?
  2. 日本のお家芸、糖転移酵素を触媒とするための簡便糖ドナー合成法
  3. 生きた細胞内のヘムを検出する蛍光プローブ
  4. 挑戦を続ける日本のエネルギー企業
  5. 令和元年度 のPRTR データが公表~第一種指定化学物質の排出量・移動量の集計結果~
  6. 今冬注目の有機化学書籍3本!
  7. 株式会社メカノクロス – メカノケミストリーの社会実装に向けた企業の設立
  8. ガンマ線によるpHイメージングに成功 -スピンを用いて化学状態を非侵襲で観測-
  9. アサートン・トッド反応 Atherton-Todd Reaction
  10. 二フッ化酸素 (oxygen difluoride)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2006年11月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP