[スポンサーリンク]

ケムステニュース

持田製薬/エパデールのスイッチOTC承認へ

[スポンサーリンク]

 薬事・食品衛生審議会の薬事分科会は19日、持田製薬の脂質異常症治療薬エパデール(一般名イコサペント酸エチル、EPA)のスイッチOTC薬(医療用医薬品から一般用医薬品への転用)について承認を了承した。

持田製薬は、既に大正製薬とEPAスイッチOTC化製品の販売提携を締結しており、同製品はエパデールT/エパアルテとして大正製薬から2013年に発売される予定。

患者は医療機関を受診する時間的余裕がない場合などに直接薬局に行き、薬剤師の指導を受けて医薬品を購入できるよう になる。自覚症状の少ない生活習慣病領域でのスイッチOTCとしては初めての製品となる。

 

エパデールはω3 脂肪酸の1つであるエイコサペンタエン酸のエチルエステルを主成分とする天然物由来製剤です。多価不飽和脂肪酸という非常に酸化されやすい構造を、魚油から独自技術によって高純度に精製されています。持田製薬により1981年に開発され、同社の主力製品として売上高は年400億円程度と大きく、国内の高脂血症薬の中でも有力製品となります。多様な作用を有しており、抗血栓作用、血清脂質改善作用のみならず、抗動脈硬化作用、抗炎症・免疫調節などの多彩な作用により冠動脈疾患の発症抑制につながると考えられています。

EPAスイッチOTCの話題は2年以上前から出ていて今更珍しい話でもないのですが、今回のニュース報道を見ていて「おかしな報道されてるなぁ」と感じたので取り上げます。

 

痩せ薬ではない

ある民放TVニュースで「メタボお父さん達にも朗報!?」として、肥満にフォーカスを当てた報道がされていました。それを受けてか一部ネット上で「痩せ薬キター!」という感じの書き込みも見受けられますが、誤りです。EPAは生活習慣病治療薬であり、肥満も生活習慣病ではあるけれど、EPAは抗肥満薬ではありません

(今後期待されている抗肥満薬としては、以前取り上げたロルカセリンQsymia、あるいはContraveなどがあります)

 

異例の賛成多数により承認

どの記事も「異例の賛成多数により承認」って書いてありますが、何が異例なんだかよく解らないですね。

なぜ賛成多数が「異例」なのか?:本来は「全会一致」が基本であり、賛成多数(=反対あり)で承認されたのは過去に例がありません。日本医師会が反対を繰り返しており、それがスイッチOTCの検討に2年もかかっている要因です。

なぜ反対しているか?:「安全性の懸念」と報じたニュースもありますが、EPAの安全性は懸念されていません。患者判断で生活習慣病治療を行うことは危ないという懸念です。「脂質異常症には糖尿病や脂肪肝などが隠れている場合があり、それらの早期発見を妨げる可能性がある

なぜ承認したのか?:日本医師会が反対にも関わらず「異例」の賛成多数で承認へ押し切ったのは、何としてでも医療費抑制を断行したい行政の意図が見え隠れします。2002年に厚労省の検討会は「生活習慣病等の疾病に 伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上等の分野についても、スイッチOTC薬の開発を積極的に進め、国民の選択肢を拡大することが望まれる」と報告しています。

行政が生活習慣病分野のOTC薬の活用を促進する一方で、日本医師会は「エパデールが通ったからといって、生活習慣病全般でスイッチOTCを推し進めていいわけではない」と強調しています。

 

メディア・リテラシーに疑問を感じたニュースでした。ケムステニュースが理解のお役に立てば幸いです。

 

関連リンク

 

関連記事

  1. 2010年日本化学会各賞発表-学会賞-
  2. パーデュー大、10秒で爆薬を検知する新システムを開発
  3. エーザイ、抗てんかん剤「イノベロン」、ドイツなどで発売を開始
  4. 乳がんを化学的に予防 名大大幸医療センター
  5. アンモニアで走る自動車 国内初、工学院大が開発
  6. 熊田誠氏死去(京大名誉教授)=有機ケイ素化学の権威
  7. 超小型シリンジ開発 盛岡の企業
  8. 化学物質の環境リスクを学べる「かんたん化学物質ガイド」開設

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 中村 正治 Masaharu Nakamura
  2. 総合化学4社、最高益を更新 製造業の需要高く
  3. 排ガス原料のSAFでデリバリーフライトを実施
  4. 博士課程と給料
  5. 2009年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表
  6. 機械的力で Cu(I) 錯体の発光強度を制御する
  7. 秋の褒章2010-化学
  8. 量子力学が予言した化学反応理論を実験で証明する
  9. 第56回「複合ナノ材料の新機能を時間分解分光で拓く」小林洋一 准教授
  10. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年12月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

ペプチドの精密な「立体ジッパー」構造の人工合成に成功

第563回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科応用化学専攻 藤田研究室の恒川 英…

SNS予想で盛り上がれ!2023年ノーベル化学賞は誰の手に?

さてことしもいよいよ、ノーベル賞シーズンが到来します!化学賞は日本時間 10月4日(水) 18時45…

ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2023年版】

各媒体からかき集めた情報を元に、「未来にノーベル化学賞の受賞確率がある、存命化学者」をリストアップし…

DMFを選択的に検出するセンサー:アミド分子と二次元半導体の特異な相互作用による検出原理を発見

第562回のスポットライトリサーチは、大阪府立大学(現:大阪公立大学)大学院 工学研究科 電子・数物…

イグノーベル賞2023が発表:祝化学賞復活&日本人受賞

今年もノーベル賞とイグノーベル賞の季節がやってきました。今年もケムステではどちらについても全速力で記…

ポンコツ博士の海外奮闘録XXII ~博士,海外学会を視察する~

ポンコツシリーズ国内編:1話・2話・3話国内外伝:1話・2話・留学TiPs海外編:1話・…

マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくある失敗とその対策とは?

開催日:2023/09/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

第40回ケムステVシンポ「クリーンエネルギーの未来を拓く:次世代電池と人工光合成の最新動向」を開催します!

まだ暑いですが、秋の気配は感じられていますでしょうか。2020年初頭から…

材料開発の未来を語る、マテリアルズ・インフォマティクスに特化したカンファレンスが9/26(火)開催!

【参加無料】詳細・視聴予約はこちら今まさに、第一線で活躍しているマテリアルズ・インフォマティクス…

オンライン会議に最適なオーディオ機器比較~最も聞き取りやすい機器決定戦~

オンライン会議は、離れた相手と気軽にコミュニケーションをとることができるため、コロナ禍がひと段落した…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP