[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

研究室の大掃除マニュアル

[スポンサーリンク]

面倒くさい。片付けている暇があったら実験したい。いや、実はゴミゴミした環境が好きだ。人それぞれの想いは千差万別であるにしろ、避けては通れないのが研究室の大掃除。アカデミックでも企業でも、人員の入れ替わりがある春や、お盆休みの前、もしくは日本の伝統に則った新年、いずれかの時期にグループ総出で年に一度は行われているのではないでしょうか。

 

筆者は北米の大学に在籍しているので、夏休みで学部生がキャンパスから居なくなり(夏休みは5~9月。学部生は皆、親元を遠く離れてstudent housingに適当な学生同士で暮らすのが一般的。)、教員は授業、院生はTAが無くなり研究に没頭できる(…ハズの)夏本番を前にしたこの時期に、大掃除を行います。ボスからの指令を受けた一部のポスドクや院生が中心となり、その都度大掃除マニュアルを作成し予めメールで皆に配布するなど、各人のタスクの周知は徹底しているつもりですが、それでもなかなか時間が掛かってしまいます。結局のところ、普段から個々人が如何に整理整頓に気を配っているかに依るところが大きいのでしょうが、それでも何かの参考になればと思い、筆者の在籍研究室で作成した大掃除マニュアルの最新版(!)をご紹介します。

まず大雑把に「1.個人スペースの清掃 2.機器類のメンテナンス 3.その他」の3カテゴリーに分けました。とりわけ2.機器類のメンテナンスについては、普段から頻繁にそのマシンを扱っている人間に割り当てるのが効率的であることは言うまでもありません。具体的なタスクは次の通りです。

1.個人スペースの清掃

a. 真空ポンプのオイルを交換。

b. 丸底フラスコ(日本なら専ら”ナス”でしょうか)、NMRチューブ、その他のガラス器具に入ったままのサンプルを、全てスクリューキャップ付きバイアル(平底のモノ)に移し、ラベルでモノを明示。

c. ドラフト(fumehood)の表面、ガラス、サッシを磨く。

d. 真空&窒素orアルゴンラインのグリスを全て拭きとってから塗り直す。また、傷んでいるゴム管は交換。

e. デシケーター等の乾燥剤を交換。

f. 電子機器(ホットスターラー、温度計、ヒートガンetc)の電源コードに傷が無いか確認。傷んでいれば修理。

g. 水道およびそこに繋いであるホースに漏れが無いか確認。適宜交換。

h. フラスコの欠け、ヒビ割れが無いか確認。特に星型のヒビ(star cracks)があるものは直ちに修理。

i. 各自のベンチに置いてある試薬を全て確認し直し、出来る限り試薬庫に戻す。

j. 過去のサンプルで不要な物はなるべく廃棄。自分の作ったものでも迷ったら廃棄。

—以下はデスクスペースの整理—

k. 各種スペクトルデータのバインダーを整理し、他の私物も整理整頓。

 

2.機器類のメンテナンス

(筆者のラボには変わった分析機器?が多いので、ここではこのブログをご覧の方々にとっておそらく一般的であろう機器のみに留めます。)

a. グローブボックス: ポンプのオイル交換およびフィルター交換。ボックス内の整理整頓。触媒の再生。

b. GC/GC-MS: セプタム交換、キャリブレーション、外付けハードディスクでデータのバックアップ。

c. 脱水溶媒システム(カラムを通すタイプ): カラムの再生。

d. 冷蔵庫: 庫内のpHを確認。パラフィルムが巻かれていないものには巻く。中を拭き掃除。

e. アルカリバス(base bath): ガラス器具を全て回収、洗浄。嵩が減っていればアルコール+水酸化カリウムを補充する。(筆者がかつて在籍したラボではiPrOHを使用していましたが、現在のラボではEtOHを使用しています。酒税の関係でEtOHは高いという話を耳にしたことはあるものの、一方メタノールが混ざった物は安いのだという話も聞いたことがあります。iPrOHとEtOHの値段をAcrosのカタログで調べたところ、純度にも依りますがほぼ同等かエタノールが若干高め、でした。ちなみに筆者はiPrOHの香りが好きです。)

 

3.その他

a. グループメンバーの電話番号等、緊急連絡リストおよび誕生日リストの更新。

b. 共同パソコン(キーボードとマウス)と電話はiPrOHで拭く。(これは本当に手垢が落ちて新品同様になります。)

c. 共同パソコンの中身を外付けハードディスクにバックアップ。デスクトップの要らないアイコンを整理。無駄なアプリケーションの削除、およびデフラグ(…もっと頻繁にやるべきなのですが)。

d. 窓拭き。

 

 誕生日リストがその他の一番上かよっ!とさり気ない突っ込みを入れてくださった方、ありがとうございますw 日々の円滑なコミュニケーションから生まれるチームワークは大掃除を速やかに済ませるためだけでなく、本業の研究に於いてこそほとばしる熱いパトスを呼び起こし、より良い成果を目指し日々努力する助けになるものだと思います。皆様の研究室/グループでは、どのように大掃除をされていますか?

 

chemical wastes.jpg

関連書籍

[amazonjs asin=”4621078739″ locale=”JP” title=”ガスクロ自由自在Q&A 準備・試料導入編”]

 

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. テトラサイクリン類の全合成
  2. 鬼は大学のどこにいるの?
  3. Google翻訳の精度が飛躍的に向上!~その活用法を考える~
  4. 液晶の薬物キャリアとしての応用~体温付近で相転移する液晶高分子ミ…
  5. 食中毒と衛生管理の重要性ーChemical Times特集より
  6. 有機合成化学協会誌2024年9月号:ホウ素媒介アグリコン転移反応…
  7. マテリアルズ・インフォマティクスの手法:条件最適化に用いられるベ…
  8. 高分子を”見る” その1

注目情報

ピックアップ記事

  1. 嘘か真かヒトも重水素化合物をかぎわける
  2. 学生に化学論文の書き方をどうやって教えるか?
  3. ケミカルメーカーのライフサエンス事業戦略について調査結果を発表
  4. 佐治木 弘尚 Hironao Sajiki
  5. 【書籍】文系でも3時間でわかる 超有機化学入門: 研究者120年の熱狂
  6. 「超分子重合によるp-nヘテロ接合の構築」― インド国立学際科学技術研究所・Ajayaghosh研より
  7. 日本化学会 平成17年度各賞受賞者決まる
  8. 『主鎖むき出し』の芳香族ポリマーの合成に成功 ~長年の難溶性問題を解決~
  9. 生命の起源に迫る水中ペプチド合成法
  10. 発光材料を光で加工する~光と酸の二重刺激で材料加工~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

CERNでは、なぜKNFのダイアフラムポンプを採用しているでしょうか―それは、粒子衝突実験のためにコン タミネーションの無い混合ガスを保証できるから

スイスとフランスをまたぐように設けられたCERNは、さまざまな円形および線形粒子加速器を運用して…

設定温度と系内の実温度のお話【プロセス化学者のつぶやき】

今回は設定温度と系内実温度の違いについて取り上げたいと思います。これは分野としてはプロセス化学に…

Carl Boschの人生 その12

Tshozoです。前回の続きをいきます。ここまでは第一次世界大戦がはじまる前のBoschたちの華…

逆方向へのペプチド伸長!? マラリアに効く環状テトラペプチド天然物の全合成

第695回のスポットライトリサーチは、北里大学大学院感染制御科学府(生物有機化学研究室)博士後期課程…

MOF の単一金属サイトで2分子の CO が “協働的” に吸着

金属–有機構造体(MOF)における金属サイトにおいて複数のガスが逐次的に吸着する際に、シグモイド型の…

令和7年度KISTEC教育講座 〜物質の付着はコントロールできる〜中間水を活かした材料・表面・デバイス設計

1 開講期間令和8年3月9日(月)、10日(火)2 コースのねらい、特色 本講座では、材…

リサイクル・アップサイクルが可能な植物由来の可分解性高分子の開発

第694回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院理工学府(跡部・信田研究室)卒業生の瀬古達矢…

第24回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

粉末 X 線回折の基礎知識【実践·データ解釈編】

粉末 X 線回折 (powder x-ray diffraction; PXRD) は、固体粉末の試…

異方的成長による量子ニードルの合成を実現

第693回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科(佃研究室)の髙野慎二郎 助教にお願…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP