[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Practical Functional Group Synthesis

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”1118612809″ locale=”JP” title=”Practical Functional Group Synthesis”]

内容

A practical handbook for chemists performing bond forming reactions, this book features useful information on the synthesis of common functional groups in organic chemistry.

• Details modern functional group synthesis through carbon-heteroelement (N, O, P, S, B, halogen) bond forming reactions with a focus on operational simplicity and sustainability.
• Summarizes key and recent developments – which are otherwise scattered across journal literature – into a single source
• Contains over 100 detailed preparations of common functional groups
• Included 25 troubleshooting guides with suggestions and potential solutions to common problems.
• Complements the text in enhanced ebook editions with tutorial videos where the author provides an introduction to microwave assisted chemistry

Wiley社内容紹介より)

対象

  • 有機合成を行う大学院生~研究者
  • 官能基別に最新の反応を学び、使いたい研究者

 

解説

本書は内容で記したとおり、官能基別に、有機合成反応によるそれらの構築法を記した書籍である。全685ページあり、タイトルから想定すると、古典的ではあるが信頼性が高い変換反応を詳細な実験項やコツなどとともに述べている書籍かとおもいきや、扱っている変換反応が最新のものが大半であった。

著者は米国バックネル大学のRobert A. Stockland Jr教授。正直、研究者としては名前があまり知られていないが、教育にはかなり力を入れているようだ。

Robert A. Stockland Jr.

Robert A. Stockland Jr.

 

全7章構成で、1章では合成を成功させるにはなにが必要か?というところからはじまる。具体的には、合成のゴールはなにか?グローブボックスは必要か?溶媒は脱気が必要か?そもそも溶媒は必要か?どうやって化合物を精製したらよいか?どうやって化合物を保存するかなどに一問一答で答えている。その後、例を交えて実用的に合成に使われる古くて新しい条件や触媒、反応条件について述べている。2章からは実際に官能基別に反応を紹介していくというスタイルだ。アルコール、エーテル(2章)、アミン、アミド(3章)、有機リン化合物(4章)、チオエーテル・スルホン(5章)、有機ボロン酸、ボロン酸エステル(6章)、有機ハロゲン化物(7章)の合成を紹介している。

いわゆる、カルボニルの化学はほとんど含まれておらず、クロスカップリング反応に使える官能基やそれを促進する触媒の合成に特化したような内容であった。実際の中身をみてみると、官能基をつくる反応例が並べられていて、その反応の基質適用範囲(反応例の数)と最大収率が記載されている。有機合成化学に共通したことであるかもしれないが、中身の文章を読む必要はあまりなく、反応式を眺めているだけでも”読めて”しまう。

 

2016-02-08_17-45-03

 

その中でも実用的な反応に関しては実験項とともに紹介している(およそ100反応)。著者が有機リン化合物の合成反応を研究しているからか、有機リン化合物の合成が非常に多い250ページ)。個人的にはエーテルの合成に興味があったので、最新の反応とその文献が網羅されているので、有用であった。一般的にはクロスカップリング反応の使える条件や、これから有機リン化合物を取り扱おうと考えている人には大変参考になると思う。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527338144″ locale=”JP” title=”Reactions and Syntheses: In the Organic Chemistry Laboratory”] [amazonjs asin=”4759814795″ locale=”JP” title=”天然物合成で活躍した反応: 実験のコツとポイント”][amazonjs asin=”4621081519″ locale=”JP” title=”研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 有機合成のための遷移金属触媒反応
  2. タンパク質の構造と機能―ゲノム時代のアプローチ
  3. The Merck Index: An Encyclopedia…
  4. よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解…
  5. 世界の一流は「雑談」で何を話しているのか
  6. 世界の化学企業ーグローバル企業21者の強みを探る
  7. 化学産業を担う人々のための実践的研究開発と企業戦略
  8. 教養としての化学入門: 未来の課題を解決するために

注目情報

ピックアップ記事

  1. 不安定さが取り柄!1,2,3-シクロヘキサトリエンの多彩な反応
  2. 米化学大手デュポン、EPAと和解か=新生児への汚染めぐり
  3. 有機合成化学協会誌2020年7月号:APEX反応・テトラアザ[8]サーキュレン・8族金属錯体・フッ素化アミノ酸・フォトアフィニティーラベル
  4. スタチンのふるさとを訪ねて
  5. Zachary Hudson教授の講演を聴講してみた
  6. 2012年ノーベル化学賞は誰の手に?
  7. イミンを求核剤として反応させる触媒反応
  8. 「第22回 理工系学生科学技術論文コンクール」の応募を開始
  9. 有機化学美術館が来てくれました
  10. 【速報】2010年ノーベル物理学賞に英の大学教授2人

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP