[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

アメリカ化学留学 ”大まかな流れ 編”

[スポンサーリンク]

 

アメリカ留学シリーズです。

まずアメリカのPh.D.コースというのは日本の博士課程と何が違うのかというのを大まかに書いていこうと思います。

(この文章で書かれるケースはあくまで北米の1大学のケースを基にしていて、すべての大学がこのシステムに準じるものではありません。あくまで参考程度に読んでください)

1.取得期間に関して

サイエンス分野でのアメリカのPh.D.コースというのは日本で言う修士課程と博士課程がくっついたものです。取得までにおおよそ5年程度を要するのが普通です。日本の修士が2年、博士が3年それぞれかかるのが平均だと思いますので、全体でかかる時間はほぼ同じです。もちろん研究の進捗具合などでも取得時間は前後しますし、研究室の先生のPh.D.というものに対する考え方みたいなのも大きいファクターです。

ちなみにエンジニアリング系になると日本のようにマスターとPh.D.はかっちり分かれているケースが多い気がします。ただしこのような学科では、奨学金が提供されていることは少なく、企業から派遣されている研究者の方が多いイメージです。

 

2.やらなくてはいけないことに関して

アメリカの大学の卒業式といえば、ふくろう博士のあの帽子とガウンです。しかしそこに辿り着くまでにクリアする課題は幾つもあります。その中の幾つかは日本の博士課程にも共通するものですが、幾つかは特異的な要件も挙げられます。

ここでは “キュームテスト”、“中間公聴会”、“授業”を紹介したいと思います。

キュームテストというのは最新論文を読み込む能力が付いているかを試すテストです。お題の論文はある先生から1週間前に提示されます。そしてその論文をどれだけ理解しているかを測るテストが課されます。そういったテストを規定回数合格しなくてはいけません(例えば9回中5回合格しないとDrop!)。これに失敗すると、Masterコースへの編入を余儀なくされ、Ph.D.コースはFailということになります。

中間公聴会というのは自分の研究や研究のプロポーザルを先生たちの前で発表して、質疑応答に耐え忍ぶというテスト(チャンスは2回で失敗するとDrop!)です。

こういった試問はアメリカのPh.D.コースならではのシステムで、そしてこれに失敗してMasterコースに逝ってしまうことが意外と多いというのが“The アメリカのPh.D.”という感じです。

 

3.授業に関して

アメリカに来ていちばん日本と違うなと思ったのが、授業の位置づけです。日本では修士課程以上になると割と研究室での研究が授業よりも重視されていたように思います。

しかしアメリカではかなりがっつりとした授業をきちんと取らされ、一定以上の成績をとらなくてはDropになってしまいます。そのため学生は初めのうちは研究室に全くいかずに授業に集中することになります。

 

ここで留学生的に気になる、英語での授業に関してなのですが日本で英語の論文を読んでいるような人であれば気合でなんとかなるレベルのものであると付記しておきます。また化学の英単語は意外と安易な単語が使われていて馴染みやすいです。例えば日本では「配位」という単語はおおよそ化学に携わっていないと使わない単語ですが、英語では「Coordination」です。「服をコーディネートする」と同じ単語です。それに加えて先生もインターナショナルの生徒にはある程度なれているので、頑張ればいけます。

 

授業は修士持ちであれば、幾つかはトランスファーできます。ですが、1から取ると初めの1年半以上は授業に集中しなくてはいけない程度の単位が要件となっています。

時間をかなり食われるアメリカPh.D.の授業の体系ですが実際賛否両論あるきがします。個人的には日本での修士時代に散発的に得た知識をアメリカで体系的に学び直す事ができて、それはとっても良かったです。

 

4. 授業をしなくてはいけない

そして自分の授業に加え、僕の学科は少なくとも3セメスターのTeachingが課されていました。つまり学部生の化学の授業を受け持つのです。 配属される授業にもよるのですが、仕事内容は実験の授業の補助や定期テストの制作、採点、あとチューターみたいなことから、はては実際に生徒の目の前にたっての授業まで。これはインターナショナルの生徒にとってはかなりの大仕事で、特に僕はかなり苦手でした。またセメスターの最後に普通の先生と同様に、生徒に評価のアンケートを取ったりします。これの評判が良いと学期末の全体ミーティングで表彰されたりします。

 

そして研究、卒業へ

上のRequirementをすべて満たしたら、晴れて研究に没頭できる環境が作られます。研究室の財政具合によってはTeachingをずっとしなくてはいけないこともありますが、財政的に余裕のある研究室ではResearch Assistantをあてがわれることがあります。これは研究をすることによって給料がもらえるAssistantshipで、煩雑なTeachingでの仕事をしなくて済むことになります。

そしておもに研究室のボスから課された課題をクリアして幾つかの論文をPublishすると晴れて卒業というのが流れです。

 

日本よりもやらなくてはいけないRequirementの種類は多い気がしますが、全て終わってみればいい経験で、本気をある程度出さなくてはいけない事も多いので、なかなか楽しいですよ。

今度はそろそろ入学願書を出す頃ということもあり、Ph.D.コースへの入学願書みたいなことでも書いていこうかと思います。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4757418566″ locale=”JP” title=”理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)”] [amazonjs asin=”4872344111″ locale=”JP” title=”サイエンティストを目指す大学院留学―アメリカの博士課程で学ぶ最先端のサイエンス・テクノロジー”]

 

やすたか

投稿者の記事一覧

米国で博士課程学生

関連記事

  1. 金属を使わない触媒的水素化
  2. 鉄錯体による触媒的窒素固定のおはなし-1
  3. ゴールドエクスペリエンスが最長のラダーフェニレンを産み出す
  4. 「ヨーロッパで修士号と博士号を取得する」 ―ETH Zürich…
  5. 危ない試薬・面倒な試薬の便利な代替品
  6. 超一流誌による論文選定は恣意的なのか?
  7. エネルギーの襷を繋ぐオキシムとアルケンの[2+2]光付加環化
  8. ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティク…

注目情報

ピックアップ記事

  1. Hybrid Materials 2013に参加してきました!
  2. 砂糖から透明樹脂、大阪府立大などが開発に成功
  3. Brevianamide Aの全合成:長年未解明の生合成経路の謎に終止符
  4. カラス不審死シアノホス検出:鳥インフルではなし
  5. 2008年12月人気化学書籍ランキング
  6. 光照射によって結晶と液体を行き来する蓄熱分子
  7. 研究者のためのCG作成術②(VESTA編)
  8. 実験化学のピアレビューブログ: Blog Syn
  9. トンネル効果が支配する有機化学反応
  10. 新たなクリックケミストリーを拓く”SuFEx反応”

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

異方的成長による量子ニードルの合成を実現

第693回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科(佃研究室)の髙野慎二郎 助教にお願…

miHub®で叶える、研究開発現場でのデータ活用と人材育成のヒント

参加申し込みする開催概要多くの化学・素材メーカー様でMI導入が進む一…

医薬品容器・包装材市場について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、医…

X 線回折の基礎知識【原理 · 基礎知識編】

X 線回折 (X-ray diffraction) は、原子の配列に関する情報を得るために使われる分…

有機合成化学協会誌2026年1月号:エナミンの極性転換・2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(MNBA)・細胞内有機化学反応・データ駆動型マルチパラメータスクリーニング・位置選択的重水素化法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年1月号がオンラインで公開されています。…

偶然と観察と探求の成果:中毒解毒剤から窒素酸化物を窒素分子へ変換する分子へ!

第692回のスポットライトリサーチは、同志社大学大学院理工学研究科(小寺・北岸研究室)博士後期課程3…

嬉野温泉で論文執筆缶詰め旅行をしてみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

論文を書かなきゃ!でもせっかくの休暇なのでお出かけしたい! そうだ!人里離れた温泉地で缶詰めして一気…

光の強さで分子集合を巧みに制御!様々な形を持つ非平衡超分子集合体の作り分けを実現

第691回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院 融合理工学府 分子集合体化学研究室(矢貝研究室…

化学系研究職の転職は難しいのか?求人動向と転職を成功させる考え方

化学系研究職の転職の難点は「専門性のニッチさ」と考えられることが多いですが、企業が求めるのは研究プロ…

\課題に対してマイクロ波を試してみたい方へ/オンライン個別相談会

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波”について、今回は、適用を検討してみ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP