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化学者のつぶやき

有合化若手セミナーに行ってきました

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先週土曜日に慶応大薬学部で行われました「有機合成化学協会関東支部若手セミナー」に参加してきました。

この手のセミナーとしては珍しく、発表9演題が全て「企業研究者からの発表」でした。就職活動が始まったばかりの修士1年の学生さんには特に興味深い内容だったのではないでしょうか?

演者の方もその辺を汲んで、企業紹介や研究分野の一般的な紹介を丁寧にされていました。のみならず、

「企業の研究者として必要なことは?」、「趣味を通じて人間力を高める事も大事」、「素晴らしい仕事なので一緒に働きましょう!」

等、学生への熱いメッセージを込める方も多く、私までなんだか元気付けられてしまいました。

 

ところで慶応薬学って?

 会場である慶応大学薬学部は古い方には耳馴染み無いかと思います。2008年に共立薬科大学が慶応と合併し慶應義塾大学薬学部が誕生しました。キャンパスは東京タワーの目の前。懇親会会場の廊下から、クリスマスネオンを装った東京タワーの夜景があまりに奇麗でしたのでパチリと撮ったのが冒頭の写真。

「夜景が奇麗で羨ましいね」って慶応の学生に聞いてみると、「毎日見てると、もう何も感じずに実験してますね」だって。そんなもんかもしれませんね。けど、なんと勿体ない…

 

 

 

製薬/メディシナルケミストリー

川北 洋一(武田薬品工業)「Design and Synthesis of Pyrrol[3,2-d]pyrimidine HER2/EGFR Dual inhibitors」

柳 友崇(田辺三菱製薬)「真のHTSヒットとは?」

井上 淳(東レ)「高リン血症治療薬を指向した高選択的リン吸着ポリマーの開発」

中村 勇二(第一三共)「新規レニン阻害剤の合成研究」

川北氏からは臨床試験中のTAK-285およびそのバックアップ化合物の創成研究についてでした。Pseudo Irreversibility という指標が参考になりました。

柳氏はHTSの一般論を紹介した上で、ケミストが意識する事柄について「スクリーニング原理を理解する」「課題点を設定する」「合成展開性を確保する」と3点について例示、そして「真のHTS hitを得る事がプロジェクトの出発点」と纏めておられました。HTSについて成書よりもまとまった良いReviewでした。

井上氏はポリマー医薬という耳慣れない創薬の出発からスケールアップまで、試行錯誤しつつも解決していく興味深いお話しでした。粒径コントロールのため液滴の分散性に着目し、比重が大きく粘度の高いシクロヘキサン溶媒を用いて解決した点はお見事でした。

中村氏からはレニン阻害剤DS-8108bの探索研究のお話がありました。不斉点の多い標的化合物群を、キラルアジリジンーラクトン中間体から見事にキラル合成をしており、ケミストの巧さを感じさせる内容でした。

 

製薬/プロセスケミストリー

矢嶋 直樹(帝人ファーマ)「キマーゼ阻害剤の製造プロセス開発」

有本 覚(中外製薬)「オゾン酸化のスケールアップ事例」

 

矢島氏はプロセス開発について重視するのは、品質、コスト、環境安全性、知的財産として、安定したプロセス制御を目指した開発の実例として、3位置換4-Methylbenzothiophenのプロセス研究についての話がありました。H2O2/AcOHを用いる工程で、反応溶液のDSCデータ(発熱開始温度と発熱量)からの安全性担保の判断基準を示されておりました。

有本氏は重視する6項目(Speed, Profit, Enviroment, Robustness, Quality, Safety)のうち、開発初期に着目するのはSpeed, Enviroment, Safety として、4位置換Indoleのオゾン分解によりN-2-formyl-formamideを得るプロセス開発を実例にしてお話がありました。オゾン導入管の閉塞を溶媒スクリーニングにより改善。オゾン発生させても濃度は5%程度で残り95%は酸素なので爆発危険性があり、それを窒素で5倍希釈して安全性担保、反応液品質も問題なく解決したというお話でした。(DMSOを加えておくとオゾニド還元が進行するのは知りませんでした。

 

 

化学企業

澤井 大輔(富士フイルム)「熱可塑性を有する新規セルロース誘導体の合成並びにその構造と特性」

森重 敬(三井化学)「生体触媒によるバイオマスからの有用化学品製造研究」

酒井 信彦(和光純薬)「光塩基発生剤の開発」

澤井氏は新たな配列を持つセルロース誘導体を創ることで今までにない物性をもつ新規材料を得ていました。物質特許としても成立しそうです。

逆に、森繁氏はバイオマスからのセルロースを分解してグルコースを得て、それを遺伝子組み換え大腸菌によってイソプロピルアルコール等の化学原料を創る事で化学の世界も循環型社会を作ろうという壮大な試みの一端をお話頂けました。

酒井氏はフォトレジストにおいて有機合成がこんな使われ方をしているのかぁ、と非常に勉強になりました。光照射脱保護によりアミン・イミダゾール・グアニジン等の塩基を発生させる試薬を開発し、光を当てた所だけ樹脂を変性・加工する手法を開発しておりました。逆に有機合成でも光で脱保護させる保護基を使うのも便利そうだなぁと思いました。

 

どの講演も学生向けに解りやすく話しておられましたが、やっている事はレベルが高く、大変勉強になった一日でした。またぜひ参加させて頂きたいと思います。

 

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