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スポットライトリサーチ

アジドインドリンを利用した深海細菌産生インドールアルカロイド骨格のワンポット構築

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第510回のスポットライトリサーチは岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 精密有機合成化学研究室に在籍されていた山城 寿樹(やましろ としき)博士にお願いしました。山城博士は今年の3月に博士課程を修了し、現在は北海道医療大学薬学部衛生化学研究室にて助教として所属されています。

本プレスリリースの研究は天然物の合成に関する内容で、これまでに合成報告の無い shewanelline C の骨格の一挙構築に成功しました。この骨格構築は、同研究室で過去にインドール誘導体の合成素子として開発された AZIN(2-アルコキシ-3-アジドインドリン)試薬、イサト酸無水物とリン試薬を加熱することで達成されました。

この研究成果は、「Journal of Organic Chemistry」誌に掲載され、プレスリリースにも成果の概要が公開されています。

One-Pot Synthesis of Core Structure of Shewanelline C Using an Azidoindoline

Toshiki Yamashiro, Keisuke Tokushige, Takumi Abe

J. Org. Chem. 2023, 88, 6, 3992–3997

DOI: doi.org/10.1021/acs.joc.3c00013

実質指導教員であった阿部匠 講師より山城博士についてコメントを頂戴いたしました!

山城くんは北海道から岡山へ来てくれた変わり者です。桃アレルギーにもかかわらず、私の移動に伴いついてきてくれました。その時すでにD3!! 怒涛のように実験をして、結果を出す、四次元ポケットを持っているドラえもんのように頼もしい男です。TCIのTシャツ「合成するぞ!!お〜ばあないとで」が似合う人間もそれほど多くないでしょう。ケムステのスポンサー様のことも考慮するあたり流石です。そんな彼も、無事学位を取得しアカデミアの道を4月から歩むことになりました。学生たちの面倒も厭わず見てくれるので、天職でしょう。一方、残されたのび太くん(学生)たちはジャイアン(私)とディスカッションを繰り広げては、打ちのめされています。そんな彼らもドラえもんが気にしないでいられるように、成長していくことでしょう。

今後も、薬剤師免許を持った薬学の研究者として、これからの難局を乗り切れる人材になってほしいと願っています。

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

インドール、キナゾリンはいずれも窒素原子を含む複素環であり、医薬品や天然物の代表的な骨格です。2014年、西太平洋の海底から採取された細菌であるShewanella piezotoleransより単離されたshewanelline Cは、このインドールと、キナゾリンの誘導体であるキナゾリン-2,4-ジオンが直接結合したユニークな3-インドリン-3-イルキナゾリン-2,4-ジオン構造を持つことが報告されています。

当研究室で開発したAZIN (2-alkoxy-3-AZidoINdoline) 試薬は、独特の反応性と爆発性で有名なアジド基を持ち、各種インドール誘導体の合成素子として機能する試薬です。このAZIN試薬を利用した反応開発と標的について探索する中で、我々はshewanelline Cに出会い、その骨格に注目しました。shewanelline Cは一見すると単純な構造ながらも、これまでこの天然物の合成に関する研究報告はありませんでした。今回、私たちはAZIN試薬とイサト酸無水物に対し、メシチレン溶媒中、トリフェニルホスフィンを用い反応させることで、AZIN試薬に対するStaudinger反応が進行してイミノホスホランを発生し、続くイサト酸無水物とのaza-Wittig反応、並びに環化反応が進行することで、目的の3-インドリン-3-イルキナゾリン-2,4-ジオン骨格をワンポットで合成することに成功しました。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

思い入れがある部分はやはり、天然物の骨格をワンポットにて一挙に構築できたことです。阿部先生の元、AZINの開発とその応用について携わせていただきましたが、初期のAZINを利用した反応では、あくまでもアジド基が形式的に脱離基として反応が進行してしまい、せっかくインドリンに導入したアジド基を活かしきれていませんでした。まずは、このアジド基に由来する窒素原子を利用できれば、と思い検討を進めましたが、天然物の骨格を構築するなら無駄なく一挙に合成したいと考えていたので、実際にAZIN試薬からワンポットでの骨格構築が達成できた瞬間は、喜びもひとしおでした。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

Shewanelline Cが一見簡単な構造であるため、新規性の面で、合成ルートの検討が難題でした。研究室独自のAZIN試薬を基質に用いたとしても、目的の骨格を段階的に合成した場合、低収率ながら骨格構築は可能でした。しかし、いずれも人名反応など比較的有名な反応を利用することになるため、目新しい合成法ではなかったのです。

そこで敢えて、この骨格をワンポットで構築することに挑戦しました。反応溶媒や試薬の組み合わせなどを検討し、目的の一挙構築自体は成功しましたが、あまり収率は上がらず、収率の改善も少し苦戦しました。この時期、Chem-Stationの2015年の記事である「フェノールのC–O結合をぶった切る」をちょうど読んでおり、「反応温度はいくら高くてもいいんだ」と思い立ち、メシチレンの加熱還流条件にて、無事目的物を良好な収率で得ることができたのを覚えています。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

誰も知らない現象や化合物を誰よりも早く知ることができるのが、研究の醍醐味であると感じておりますので、誰もやらない、やろうとしないコトにあえて飛び込んでいく研究をしたいと思っています。ただし、突っ走ってとりあえず合成してみたはいいものの、よくわからないものが出来上がったぞ、ということも度々ありますので、そこは気を引き締めて行きたいです。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

当記事をご覧くださりありがとうございます。学生の時分、楽しく拝読しておりましたChem-Stationに、本研究を取り上げていただき大変光栄です。

天然物の全合成は、決して流行りの研究テーマではないと思います。しかし、自然に存在する天然物こそが、新しい生理活性物質の源であり、どんなに小さく単純に思える天然物だったとしても、合成してみるまでは提唱構造と合致するかわからないという妖しい魅力があります。これからも、そのような未だ見ぬ化合物を追い求め、出会うことのできる研究に携わっていければと思います。

また、学生の皆様は、ぜひ研究を楽しんで進めていただければと思います。私は正直、生意気な学生でしたので、何かやってのけたい、先生を驚かせたいという気持ちを持っていました。そうして臨む実験は、気分も乗り、非常にワクワクするものばかりでしたので、自然と良い成果も出ると思います。

最後になりますが、このような機会を与えてくださりましたChem-Stationスタッフの皆様に感謝申し上げます。そして、本研究の遂行にあたり、終始ご懇篤なご指導を賜りました阿部先生、ともにこのテーマを進めてくださった徳重院生にこの場を借りて深く感謝申し上げます。また、経済的なご支援を賜りました岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(略称:OUフェローシップ)タイプB、並びに日本薬学会長井記念薬学研究奨励金に感謝申し上げます。

研究者の略歴

山城 寿樹(やましろ としき)

北海道医療大学薬学部衛生化学研究室 助教

略歴:

2019/03 北海道医療大学 薬学部卒業(指導教員:高上馬希重准教授・金尚永講師)

2023/03 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 博士課程修了(実質指導教員: 阿部匠講師)

2023/04〜 北海道医療大学薬学部衛生化学研究室 助教

研究テーマ:アジドインドリンの開発・合成とその応用

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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