[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

化学連合シンポ&化学コミュニケーション賞授賞式に行ってきました

さて、先日お知らせした通りケムステが「化学コミュニケーション賞2012」を頂けることになり、3月18日開催の受賞式&シンポジウムに参加いてきました。その様子を、代表/副代表に代わりましてレポートします。

 

日本化学連合シンポジウム

 日本化学連合シンポジウムは過去5回(その他に公開シンポジウム)が開催されております。今回の第6回のテーマは「科学技術と社会を結ぶサイエンスコミュニケーション」。私もケムステスタッフとして「記事を通じて読者とコミュニケーション」させて頂いてる身ですので、しっかり勉強させて頂こうと参加いたしました。
 *以下レポートしますが盛り沢山だったので、詳しくは各々のリンク先をご覧下さい。

 

第1部 シンポジウム「科学技術と社会を結ぶサイエンスコミュニケーション」

講演

「サイエンスコミュニケーションの広がり -エネルギーのこれから-」北澤 宏一((社)サイエンスコミュニケーション協会副会長・(独)科学技術振興機構顧問)

「研究者とメディアをつなぐサイエンス・メディア・センター構築の試み」瀬川 至朗(早稲田大学 政治学研究科教授・元毎日新聞編集局次長)
「科学と社会を結ぶサイエンスコミュニケーター」 内田 麻理香(サイエンスライター & サイエンスコミュニケーター)

 北澤先生は原発問題の民間事故調委員長をされていた方で、原発事故で見られたサイエンスコミュニケーションの課題と今後のエネルギー論についてお話し頂けました。「国民が合理的な選択をしていくためには情報の浸透が重要」で科学技術と情報の発信を考えなくてはいけない。

 瀬川先生からはサイエンス・メディア・センター(SMC)のスタートアップと活動についてのお話しでした。専門研究者とメディア関係者のディスコミュニケーションや相互不信の解消のため、双方をつなぐハブとしてSMCを設立。311震災時にはサイエンスアラート発行、ネット上のデータ収集/整理、海外資料の翻訳、ジャーナリストへの助言という社会貢献の成果を報告。今後の課題として1)持続可能な組織とするための経済基盤の確立、2)SMCの研究者データベース登録が海外と比べ明らかに少ない事を挙げられていました。

 内田先生からは科学コミュニケーション概論と潜在層へのアプローチについてでした(復習にこちらを読書中)。欠如モデルの一方向/双方向という議論ではなく、話題のタネを科学側から提供して、興味をもった人とのコミュニティをつくるのが良い。そして興味をもった人を広げる「潜在層へのアプローチ」として「サイエンスx異分野」のタネを提供するのが良い↓

サイエンスx異分野:サイエンスx料理、サイエンスx子育て、xビジネス、xガンダム(!?)

講義

「科学を伝える映像コミュニケーション術-振り向く科学映像には訳がある-」小林 隆司( (独)物質・材料研究機構 広報室 広報チーム長・元テレビ局ディレクター)

小林先生はNHK番組制作局ディレクターとして「ためしてガッテン」「サイエンスZERO」などの政策に関わってこられた方。さてどんなお話が聞けるのか?

・映像は心理学。写真と動画の決定的な違い=時間の経過がある

→「気持ちの流れ」が発生する:これは武器にも失敗要因にもなる
・興味の薄い一般の人に向けて、論理的に説明しても振り向いて貰えない。素人目にはつまらない科学現象に工夫をする。「解り易く」伝えるのは道半ば、「興味あるように」伝える。

論理で繋ぐ「解説」ではなく、聞き手の心を揺さぶって「なんで?知りたい!」気持ちを作ってやる

・その方法として

  1. 逆算する:「ピーク」を決める←じゃ、その前ににどんな気持ちでいなきゃいけないか(=何を伝えておくか)←その前に←その前に…と逆算していく。順番を変える。
  2. キーワードを発見する:何を見て欲しいかを自分で決める。他は捨てる←選ぶ過程で新たな切り口が見えてくる
  3. ぬり絵方式

それを意識すると、化学現象を伝える映像もこんな面白くなる。研究成果として伝えたいのは1:08から始まる光ファイバーに黒点が連なって行く部分。ただしこれだけ見ても「すげー」とはなりません。そこに向かって気持ちをつくるために「実験室の中を光の玉が走る」映像を使っています。なるほど

→YouTube:「えっ!光の球が走る…!?」~光ファイバーの大事件~

 

 動画だけでなく、プレゼンや文章作成全般に活かせる内容だと思います。当日は実際のTV映像を交えたまさに「気持ちに響く」講義で、実感をもって ”ガッテン” 致しました。

第2部 「化学コミュニケーション賞 2012」 表彰式&受賞講演

*化学コミュニケーション賞

「放射化学を通じた化学生涯教育の実践」井上 浩義慶應義塾大学 医学部 化学教室 教授)

「化学情報伝達・啓発のためのウェブシステムの構築」化学ポータルサイト Chem-Station 代表者:山口 潤一郎(名古屋大学大学院理学研究科 准教授)

「新聞連載とサイエンスショーを通じての化学コミュニケーションの実践」栗岡 誠司(神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科 准教授)

*審査員特別賞

「教員のチームワークを活かした化学情報の発信」日本分析化学専門学校代表者:重里 徳太(学校法人重里学園 日本分析化学専門学校 校長)

「紙芝居と実験ショーの開発・公演活動 -子供への化学コミュニケーション-」吉祥 瑞枝,守 恭助,山内 閑子(サイエンススタジオ・マリー)

井上先生は「先進的科学技術は社会的理解と科学的理解が必要」と考え、技術の利益/不利益の両面を正しく伝えるため、小中高校生および保護者を対象に「放射線を知っていますか?」という科学技術体験(講義、実習、病院見学等)を16年にわたって行われております。開始当初は「原子力推進か?」と誤解もされたし、応募数が少なくどうやって人集めをするか苦労したが、4年前から応募者が急増しており、ようやく活動が認知されて来たと実感しているそうです。

 

ケムステからは、山口代表の「ケムステとして初の」講演でした。2000年5月に立ち上げ13年、試行錯誤してきたがCMSの導入により世界中どこからでも記事作成が出来るようになり、60名超のスタッフによる豊富なコンテンツ提供が可能となりました。Nature Chemistryや化学便覧に紹介される所まで認知が来ているので、将来は国際的化学コミュニティのポータルサイトを目指していきたい。

 

栗岡先生は高校教師で培った実験をタネに、理科の面白さを幼稚園児から大人まで幅広く伝える「サイエンスショー」を1999年にスタート。その活動の新聞取材をきっかけに新聞連載「理科の散歩道」を2000年に開始し、共に現在も継続されています。サイエンスショーは「燃焼」「呈色」など、先ず魅せて「なぜ?」と感じさせ、後から考えさせるよう工夫されていいます。「理科の散歩道」の連載は週1回計580回の長期連来ですが、現在は100名の教員ライターが原案作成をする体制になっています。文の出だしを理科クサくないよう工夫をすることで、読者啓発だけでなく、ライター達には「伝える技術」の習得に役立っていると感じているそうです。

化学とは物質を知り、つくること。そして日常生活と身近なところに存在するという事を伝えたい。

 *残念ながら、特別賞の受賞講演は設定されていませんでしたが、その興味深い活動はリンクから辿る事ができます。

  • 第3部 交流会

 交流会が「第3部」となっているシンポも珍しいですが、講師、受賞者、委員の先生方とたっぷり交流する機会を頂けました。話題の多くはやはり「化学コミュニケーション」についてで、苦労話、届ける工夫、本業との両立等々。特に受賞者の方々は長年「化学コミュニケーション」を継続されてきた方々ですので、私がケムステ活動で悩んでいる部分についてもアドバイス/激励頂けました。こういう機会があると、モチベーション維持しやすいです。

感想と今後に望むもの

 「サイエンスコミュニケーション」あるいは「化学コミュニケーション」という、なんとな?くはわかる、でも日常あんまり意識した事はない言葉。はちゃんと考えたことが無かったのでは?と気付かされました。シンポを通じて、体系付けや様々なアプローチ事例を見ることができ、貴重な機会を与えて頂きました。ここで終えずに演者著作を中心に、ちゃんと勉強してみたいと思います。

 大変面白いシンポだった反面、残念だった点が2つあり、1点は「月曜開催」だったことです。シンポ参加者数は120名と多いものの年齢層が高く、平日開催ではラボを空け難いのか学生さんは僅かでした。幅広い世代の化学者にアプローチしたい所ですので、今後は週末開催の方が嬉しいです。

 もう1点は「受賞者講演が短い/無い」点です。受賞者達は長年活動されてくた言わば化学コミュニケーションのプロですから、シンポのフォーカスをそこに合わせても良い気も致しました。私は幸いにして、交流会でたっぷりお話を伺えたのですが、どの方の活動も大変興味深いお話でした。これを広く共有しない手はないんじゃないか!? という事で受賞者の皆様に「お仕事の宣伝がてら、ぜひケムステに寄稿を!」とお願い致しました。読者の皆様、お楽しみに♪

関連書籍

 

関連記事

  1. 積極的に英語の発音を取り入れてみませんか?
  2. 夢の筒状分子 カーボンナノチューブ
  3. 第96回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part II…
  4. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
  5. 生体深部イメージングに有効な近赤外発光分子の開発
  6. 有機合成の進む道~先駆者たちのメッセージ~
  7. 「温故知新」で医薬品開発
  8. 2015年ケムステ人気記事ランキング

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. “クモの糸”が「ザ・ノース・フェイス」のジャケットになった
  2. アピオース apiose
  3. アブノーマルNHC
  4. 汝ペーハーと読むなかれ
  5. 【予告】ケムステ新コンテンツ『CSスポットライトリサーチ』
  6. セミナーチャンネルを開設
  7. マイクロリアクター徹底活用セミナー【終了】
  8. 市販の新解熱鎮痛薬「ロキソニン」って?
  9. 配位子だけじゃない!触媒になるホスフィン
  10. 反応の選択性を制御する新手法

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

ジアゾニウム塩が開始剤と捕捉剤を“兼務”する

アリールジアゾニウム塩を用いたプレニルカルバマート/ウレアのシクロアミノジアゾ化反応が開発された。入…

パラジウム光触媒が促進するHAT過程:アルコールの脱水素反応への展開

2016年、イリノイ大学シカゴ校・Vladimir Gevorgyanらは、Pd(0)触媒の共存下、…

ウラジミール・ゲヴォルギャン Vladimir Gevorgyan

ウラジミール・ゲヴォルギャン(Vladimir Gevorgyan、1956年8月12日-)は、アメ…

有機合成化学協会誌2018年11月号:オープンアクセス・英文号!

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2018年11月号がオンライン公開されました。今月…

観客が分泌する化学物質を測定することで映画のレーティングが可能になるかもしれない

映画には、年齢による鑑賞制限が設けられているものがあります。その制限は映画の内容に応じて各国の審査団…

庄野酸化 Shono Oxidation

概要アルコール溶媒中にアミドまたはカルバメートを電解酸化し、N,O-アセタールを得る反応。アミン…

PAGE TOP