[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第30回 弱い相互作用を活用した高分子材料創製―Marcus Weck教授

[スポンサーリンク]

第30回の海外研究者インタビューは、マーカス・ウェック教授です。ニューヨーク大学化学科に在籍しており、超分子ポリマー、生体材料、光学材料、触媒などへの応用に重点を置いた有機材料の開発に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

私の高校化学の先生を責めてくださいね。化学と生物学は、高校時代自然に飲み込めた、ただ二つのトピックだったのです。数学・言語学などは、私にとっていつも学ぶのが大変すぎました。こういったものを、楽しく手触り感ある実験や、授業中の予期せぬ爆発なんかと組み合わせられたなら・・・幼い子供としては他にもいらなかったでしょうね。

ドイツの大学における最初の2〜3年間、私の化学愛はほぼ全て「排除」されていました―これは認めなければなりませんね。教授たちは(科学と年功知について)50年前から進歩しておらず、講義は退屈であるか、存在しないも同然でした(ドイツ式大学システムがよほど好きでなければやってられません)。最初のコースに落第したときには専門を変えようと思い、化学から離れる寸前まで行きました。「学士号」をもらったあとに、初めて面白くなりました。科学愛を取り戻させてくれた私の最初の師、Helmut Ringsdorfには感謝しなければならないですね。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

疑問の余地なく、音楽指揮者になるでしょうね。(家族や友人がいなかったなら)化学に加えて、クラシック音楽に情熱的愛情を捧げていたでしょう。唯一、オペラや交響曲の演奏中には、化学のことは頭から追いやられますし、考えようとも思いません。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

これまでの科学者たちが既に指摘していることを、繰り返し述べたいとは思いません。明らかなことですが、社会における最重要な科学的課題と困難―それは環境問題から健康問題にまでわたります―に対し、化学者は主要な(または鍵となる)貢献をすべきです。私たちは全員、これら困難に関わる科学的課題に取り組んでいます。

我々科学者が解決に取り組んでいない(あるいは少なくとも良い仕事をしていない)問題の一つに、一般人向けの科学教育があります。社会の「指導者」(政治家など)を含む一般市民が科学の基本原理を理解していないと、非常に危険で問題のある(あるいは解決に取り組もうとしない)意思決定が成されてしまいます。たとえば、二酸化炭素の排出が環境に良くないことは、科学者たちは20-30年前から知っていました。しかし、国民と政府に対してそれを問題視させることができなかったのです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

それは難しい質問ですね。私ともう一人だけということなら、モーツァルトを選びますね。きっと楽しい夕食になるでしょう。

Wolfgang Amadeus Mozart (1756年 – 1791)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

正直に言うと、ラボで最後の実験をしたのはだいぶ前のことです―およそ6年前でしょうか(助教授着任2年目)。今でもグループメンバーを手伝ってはいますが、「自分の」プロジェクトを持ってはいないので、自分で反応を仕込むことはありません。もし私がラボワークに戻ったとしたら、メンバーは私を追い出す(または自ら部屋を出る)可能性が高いでしょう。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

いつものことですが、これは最も難しい質問です。リヒャルト・ワーグナーの「ニーベルングの指環」(CDが全部で14枚あるのですが、「1つのオペラ集」だとカウントしてもいいですかね?)を持って行くと思います(可哀想な島の動物たち。いつもワーグナーを聴き続けなければならないなんて。彼らは私を文明世界に帰してしまうかもしれない)。

[amazonjs asin=”B00005FJHE” locale=”JP” title=”ワーグナー : 「ニーベルングの指環」全曲”]

本はもっと難しいです。トールキンの「指輪物語」か、ゴーゴリの「死せる魂」のいずれかを選ぶと思います。

[amazonjs asin=”4566023710″ locale=”JP” title=”文庫 新版 指輪物語 全9巻セット”][amazonjs asin=”4309207154″ locale=”JP” title=”死せる魂”]

原文:Reactions – Marcus Weck

※このインタビューは2007年9月14日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第六回 電子回路を合成するー寺尾潤准教授
  2. 第89回―「タンパク質間相互作用阻害や自己集積を生み出す低分子」…
  3. 第175回―「酸素を活用できる新規酸化触媒系の開発」Mark M…
  4. 第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブ…
  5. 第10回 太陽光エネルギーの効率的変換に挑むー若宮淳志准教授
  6. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …
  7. 第17回 研究者は最高の実験者であるー早稲田大学 竜田邦明教授
  8. 第136回―「有機化学における反応性中間体の研究」Maitlan…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 世界初 ソフトワーム用自発光液 「ケミホタルペイント」が発売
  2. 製薬業界における複雑な医薬品候補の合成の設計について: Nature Rev. Chem. 2017-2/3月号
  3. ケムステのライターになって良かったこと
  4. 有機合成化学協会誌2026年6月号:抗体・薬物複合体・機能性有機蛍光色素・速度論的反応機構解析・触媒的脱水型ベンジル化・植物由来モノマー
  5. 【化学・食品業界向け】 蒸留による分離・濃縮をシンプルで省エネに ~無機分離膜が起こすイノベーション~
  6. メタロペプチド触媒を用いるFc領域選択的な抗体修飾法
  7. アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!
  8. 研究者の成長を予測できる?:JDream Expert Finder
  9. 化学小説まとめ
  10. 第57回若手ペプチド夏の勉強会

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

第43回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

テーマ「創薬化学の新たな潮流 多彩なアプローチで未来を創る」 日時2026年11月11日…

圧力は「設定値」だけで決まらない【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

査読に AI を使われた体験談

生成 AI の普及は加速しており、調べもの、英文校閲など研究者の皆さんも活用していることと思います。…

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP