[スポンサーリンク]

ディスカッション

日本発化学ジャーナルの行く末は?

[スポンサーリンク]

 日本の総合化学ジャーナルタイトルの行く末は?少しだけ真剣になって考えてみよう

 

論文を書いた後に投稿するのが論文誌(ジャーナル)。御存知の通り、出版社・学会などの発行元、掲載分野や切り口によって世界中に数多のジャーナルタイトルが存在します。総合化学のトップジャーナルタイトルといえば、アメリカ化学会のJ. Am. Chem. Soc (ジャックス)やワイリーが出版するAngewandte Chemie(アンゲ)。この2つは歴史もあり権威も高いジャーナルとして有名です。

近年は、NPGグループのNature Chemistry(ネイチャーケミストリー)がインパクトファクター(IF:ジャーナルを評価する一指標)でいえば、前述2誌を圧倒する総合化学誌として台頭しています(IF: 25.325)。

さて、それでは日本の化学のジャーナルはどうでしょう。

総合化学誌としては日本化学会の出版するBull. Chem. Soc. Jpn.(ブルケム, BCSJ)と速報誌であるChem. Lett. (ケムレット, CL)。もちろん英文誌です。しかし、日本発の化学ジャーナルタイトルであるにも関わらず、国際的だけでなく日本国内からの評価も低いのです。長年の課題であり、これまでこの二誌の評価をあげようと日本化学会は多くの施策を行ってきましたが、ほとんど効果はみられませんでした。

BCSJとCL(2015年11月号)

BCSJとCL(2015年11月号)

 

どうしたらよいのでしょうか。このままなくなってしまえばいいのでしょうか。それとも再度盛り上げるべきでしょうか。それ以外に他に方法があるのでしょうか。

最近、ふとしたことから日本化学会ジャーナル戦略委員会委員長の玉尾皓平先生とお話する際がありましたので、緊急の議題として一度ここで取り上げてみたくなりました。というわけで、今回の記事は、皆さんの本件に関するディスカッションも期待して「日本発のジャーナルの行く末」について一緒に考えていければと思います。

 

日本発化学ジャーナルの現状

さて、上述した2誌のインパクトファクターの推移をみてみましょう。BCSJは2013年にIF2.2台を取り戻したもののCL は1.23。正直言ってかなり瀕死の状況です。上述した国際的な総合科学のリーディングジャーナルと比較するまでもありません。例えば、中国化学会の化学総合速報誌Chinese Chemistry Letters が1.587であることを考えると、いかに日本の総合化学誌のインパクトが低いのかおわかりになるでしょう。

2015-11-17_02-07-56

図1 日本の2大総合化学ジャーナルの現状(IF)

 

そもそもなぜ評価を上げる必要があるのか?

個人的な意見としてはIFを上げることには余り興味がありません。ただ、読者のみなさんは論文の投稿先を選ぶ際に何を重視しますか?

殆どの研究者が、

「広く自分の論文が研究者に読まれること」

だと思います。IFは引用数ベースの指標なので、高IF=読まれているではないですが、それがデファクトスタンダードになっているのも事実です。日本の雑誌のIFが低い現状況では、低い→投稿しない→読まない→より低くなるという負のスパイラルに陥っているのはいうまでもありません。

negativeroop

負のスパイラルのイメージ

 

ではなぜ、日本の雑誌でないといけないのでしょうか。

公的にいうなら、

「国の税金を投入しているのに、結果はすべて海外のメディアに投稿し、海外の出版社や学会を潤している状況はいかがなものか?」

といえます。

国際的になったといえども自国のメディアは必要なのです。これはウェブサイトにとっても同様です。そのため、我々ケムステも国際版と中国語版をつくり日本発の化学の二次情報メディアとして動き始めています(関連記事:ケムステ国際版・中国語版始動!)。

そう、もっと素直にいえば、

「メディアは自国の結果を”ひいき”する」

のです。これは万国共通です。その影響で色々苦汁を飲まされた人は多いと思います。特に、競合研究者がいる場合は散々な状況に陥ることもあります。論文を抑えられて、他国の競合研究者の論文が先に出てしまったこと、エディターのちからは強いとはいえども、レフェリーがほとんどOKなのに、容赦なく却下されてしまったこと。その後、似たような論文がでてきたこと。そんな経験ありませんか?オリジナリティーの高い研究でも同様です。他国で盛んでない研究に対しては評価されず相手にされないことが多々あります。そんな時に自国の国際力の高い論文誌があればよいなと思ったことはないでしょうか?

それでも評価の高い論文誌に論文を投稿するのは、やはり「広く読まれること」を重視するから。また、そのIFや論文誌の名前が、業績に関係してくるから。そんな状況で皆で自国の論文誌を盛り上げようといって、現状の研究者に”押し付ける”ことは可能なのでしょうか。もちろんすべて損得ではないですが、ギブアンドテイクの関係どころか、ギブがないのにテイクだらけの状況では限界があります。

 

日本化学会の取り組み

上述したように、日本のジャーナル強化のため、日本化学会は様々な施策を行ってきました。ところが、当時のウェブサイトとシステム(現在のものではなく)、そして資金力でよい論文を集めようというのが無理がありました。最低限の「投資」をしなければいけません。これは、Angewandte Chemieを成功に導いたPeter Glitz編集長を専業として配置し(人材の投資)、行脚により世界の化学誌の1つの地位を勝ち取ったことや(関連記事:一流の化学雑誌をいかにしてつくるか?)、Nature Publishing Groupがいち早くウェブに全面移行し、多くの資金的な投資を行ったことが好例として挙げられます。

ここまでいうと日本のジャーナルの未来はないように思えますが、ようやく一昨年度よりその一端となる「投資」を始めることができているようです。

ご存知の人もいると思いますが、日本化学会のジャーナル編集委員会は平成25年度から5年間、科研費として「編集・出版体制と国際力発信強化」を取得し、合計1.5億円の資金を得たのです。これをフル活用して「投資」をようやく始めました。この施策にてBCSJとCLのIFを3以上にあげようというのが数値的な目標です。では具体的にどのような施策を行なっているのでしょうか。まず、日本化学会の施策をみてみましょう。

 

1. ジャーナル編集体制の強化

現在のBCSJの編集長(Editor-in-Chief)は京大化学研究所の時任宣博教授、CLは東京大学の塩谷光彦教授です。

現在のEdito-in-Chief の塩谷教授と時任教授

現在のEdito-in-Chief の塩谷教授と時任教授

 

それら二誌のジャーナル戦略委員会委員長は前述した玉尾先生であり、それぞれの編集長の下に各分野の第一人者であるSenior EditorやAssociate Editorがいます。ここまでは普通です。最近新たに、編集企画マネージャーという編集と企画とマーケティングを兼務するポジションをつくっています。さらに、販促・配信・発送のプラットホームを確立するため、Thomson Reuterと提携、丸善による販促を行っています(後述)。今後は化学のわかる事務補佐を配置し、出版体制の強化を図っていくそうです(追記:既に奈良先端大で博士をとった方が採用され実務をはじめたそうです)。

 

2. ウェブサイトの刷新

ご存知と思いますが、1年半前にウェブサイトを刷新し、BCSJとCLの二誌の総合サイト「CSJ Journals」として生まれ変わりました。すでにほとんどが電子データで配信されている世界で、その顔であるウェブサイトが当時のままでしたら、99.99%広く読まれることは不可能でした。同時に日本化学会のウェブサイトもきれいになり、みためのみならず、CMSで構築されているため更新も頻繁になりました。ただし論文を閲覧するためには、アブストラクトのページから、J-Stageという学術サイトが開き、もう一度、[Full Text PDF]をクリックしなければ開きません。まさに二度手間です。この状況はどうにかしたいものです。

この状況を打開するために、2016年4月(予定)からAptypon Literatumというシステムを採用し、一本化を図っていくそうです。本システムは化学ですとアメリカ化学会が使用しています。

 

case_csj_1

CSJ Journals

3.  メール配信サービス

日本化学会会員の方々は、メール通信以外に別のメールを受け取っていませんか?とくにForcus Collectionというメールが来ます。これはThomson Reutersのメール配信サービスを使った、注目論文お知らせメールのようです。該当論文の著者の過去論文を引用した研究者にお知らせメールを送信します。自分の興味のある分野の研究者の論文のため、論文をみてみようと思うようになりましたが、読者のみなさんはいかがでしょうか?その他にも掲載論文のアピール手段としてThomson Reutersと提携して以下のサービスを始めたそうです。

2015-11-20_00-24-01

Thomson Reutersメール配信サービス

両誌には、かなり評価の高い、広く引用されている論文も多々有ります。例えば、代表的なものですが金触媒の春田 正毅 教授の論文(Chem. Lett. 1987, 16, 405 DOI:10.1246/cl.1987.405)やメソポーラス材料の黒田 一幸教授の論文(Bull. Chem. Soc. Jpn, 199063, 988 DOI:10.1246/bcsj.63.988)は、これら二誌に研究の第一報が掲載され引用数は1000を超えています。それ以外にもよい論文や総説は実はあるのです。知ることが大事だと思います。

 

4.  分野別・キーワード別カタログCSJ Journal Selects

最近2年半のBCSJ、CLのうち注目された論文(オープンアクセス)をピックアップし、20分野(キーワード)別にGraphical Abstractsと共にリストアップ、冊子体「CSJ Journal Selects」として配布しています。個人的な意見として企画自体は賛成ですが、冊子体で配布することに費用対効果はあるのかと若干疑問です。なにより、ウェブにもこれは公開されているのですが、なんとPDFファイルのみ。しかも論文のDOIのみならず、ハイパーリンクもついていない。これはかなり致命的です。ウェブベースで「注目の過去論文」として、ハイパーリンクを付し、定期的に配信したほうが明らかに訪問者も増えますし、効果的です。

CSJ Journal Selects

CSJ Journal Selects

 

さて、他にも細かいものはありますが、大きな取り組みとしてはこの4つです。さて、これで二誌のリーディングジャーナルへの道は開けるでしょうか?かなり難しいと思います。では、さらなる秘策を紹介しましょう。

 

ジャーナル競争力アップの「秘策」とその効果

その内容は

新学術領域研究の領域代表者ににBCSJもしくはCLに総説の執筆をお願いする」

ということです。新学術領域研究とは科研費のひとつの枠で、これから発展が著しい研究分野に合計5年間研究費を投じ、所属研究者はその新学術領域の大枠の中で、研究を行います。自ずとその研究分野にあった研究テーマを立てるわけですから、その領域代表者が分野に関する総説を執筆すれば、所属している研究者がそれに関係する論文を執筆する際は、その総説を引用するはずです。極端にいえば、引用するようにお願いすればいいのです。すると総説の引用数が伸び、結果として、二誌のIFが上がるという仕組みです。

2年前、玉尾先生が日本化学会会長であった際の会談でこの話を聞いた時は、これはすばらしいアイデアだと思いました。

しかしながら、新学術領域が発足した際に、その総説が出版されていなければならないわけです。さらに問題として、領域代表者が執筆しなければはじまりません。事実、平成20年から平成24年度に、17件の化学の領域が立ち上がりましたが、掲載済(脱稿済)に至ったのはたったの3件。しかも、すでにその領域は折り返し点を回った、竣りが見えてきた辺りの執筆。これでは効果がありません。

 

ではどうしたらいいのか?

ここまで、日本化学会の施策について話してきましたが、よりよい改善策はありますでしょうか。それをぜひ議論してアイデアを出したいと思います。私の意見としては、例えば以下のとおり。

  1. ウェブサイトの更新頻度をあげる:日本化学会は最も化学情報を有している団体ですから、化学の面白い話が多数あるはず。それを使って論文閲覧に誘導可能な新規コンテンツを立ち上げ、1日一つ、最低1週間に1つは記事を配信する。つまり、論文誌ウェブサイトのページビューと訪問者のウェブサイト滞在時間の向上を目指す。配信は化学がわかり翻訳が可能なサイエンスライターに依頼する(そんな人あまりいませんが….)。
  2. 大学外の敏腕編集長を採用する:大学教員は研究で忙しく、ジャーナルの未来を考えても、動ける人はほとんどいません。実務で動ける敏腕編集長をおき、多くの権限を与える(敏腕編集長の人選が鍵になりますが…)。
  3. 「秘策」の強化:化学で申請する新学術領域は総説の執筆をmustにする。進歩賞だけでなく日本化学会の学会賞や学術賞にも、業績に関するBSCJやCSJの投稿を義務付ける(不埒かもしれませんがこのぐらいの強引さも重要かも)。
  4. 高引用論文の著者へインタビュー:1のコンテンツの1つとして、二誌で高引用されている論文の著者へ、研究に関するインタビューを掲載する。研究や研究者が知っていても、関連する論文が日本の化学ジャーナルに投稿されている事実を知らない研究者は多く、周知できる(なんなら当サイトで承ってもよいです)。

 

再度の意識改革を

皆さんは意見も努力もせず「日本化学会はなにやってるんだ!」「日本の化学雑誌なんていらないや!」「いろいろやっても無駄だよ。」

と無責任に言えますか? 私は言えません。我々にとってレジェンドともいえる化学者を中心とした第一線の化学者達が、少なからず時間を割いてジャーナル強化に向けて動いているからです。今回のこの記事は、日本化学会のジャーナル編集委員会の方々もみています。

よりよくする意見を、コメント欄でも、Twitterでも、各種SNSでもなんでもよいのでご意見をお願い致します。建設的な意見はここで紹介していきたいと思います。

また、最近は多くのジャーナルタイトルが乱立し、投稿先を選ぶのも大変。自分の中で最重要な論文はやはり今までどおりで構わないと思います。そこに選ばれなかった論文は日本の化学雑誌に投稿してはいかがでしょうか。そういう私も、最近全く投稿していないので、まずは来年2報を目標に、アカウントと論文を投稿したいと思います。

日本の化学ジャーナルをリーディングジャーナルへ押し上げませんか?まずは、効率的なアイデアと、なにかひとつ歩み寄る一人一人の小さな努力を期待します。

2018年7月に記載した、続・日本発化学ジャーナルの行く末は?も併せてお読みください。

外部リンク

コメント

コメント多数いただきましたが、コメントシステムの変更で表示できなくなってしまいました。以下頂いたコメントとその返信を掲載いたします。

T.N CSJ Journalウェブサイトの論文検索で、巻と頁だけじゃなくて号も入れる必要がある問題は不便です。個人的に使ってるArticle Locatorも最近CSJ系は使えなくなりました。刷新時に改善されるといいと思います。

TN への返信

ご意見ありがとうございます。確かに号をいれる必要はないですよね。私はChemistry reference resolverを使っているので気づきませんでした。提言してみます。

北斗の犬 真似になるかもだが、ACS Central Scienceでやっている注目論文を出した若手へのインタビューとかどうでしょうか。励みにもなるし、チェックする頻度の向上も狙えるかと思います。インタビューされたら論文一つ出してもらう、としてもいいかもしれません。

北斗の犬 への返信

ご意見ありがとうございます。ご意見に賛成いたします。対象はBCSJ賞か高引用論文を出版した研究者ですかね。ACIEのAuthor Profilesのようなものでもいいと思います。いずれにしてもWebにもおこして、PVを上げることが先決な気がします。いまのCSJJournalのウェブサイトを(折角新しくなったのに)どのくらいのひとがみているかが疑問です。

ゼリン そもそも、海外の大学ってBCSJもしくはCLを購読しているのでしょうか。購読率が低いのなら、海外の大学の図書館にセールスして購読率を上げてもらうのはどうでしょうか。

ゼリン への返信

ご意見ありがとうございます。いままでそのように実務で動ける人材がいなかったものと思われます。購読率どのくらいか気になるところですね。

Nick 日本の国際化学誌の影響力を上げて盛り立てることはやはり重要と思います。
ただし、特にBCSJに投稿した経験から言うと、アクセプト後のゲラが上がってくるまでの遅さ、ゲラの直しづらさ、さらにその後webに掲載されるまでの遅さ、独自システムのためのサーキュレーションの悪さといった点で魅力に欠けると言わざるを得ません。
どうしたら(海外の人にとっても)魅力的な投稿先になるのか、どうしたらもっと読んでもらえて引用してもらえるのか真摯に考えていただけたらと思います。Nick への返信ご意見ありがとうございます。Chem Lettは異常にはやい時はありますが、BCSJの場合はあんまりなんですね。ゲラの直しづらさはあまり良くないですね。
ゆきだるま ウェブサイトのシステムを新しいものにして、更新頻度を高めるのは素晴らしい取り組みだと思います。そこでウェブサイトのデザインとして、スマートフォン、タブレット等の携帯端末での閲覧を意識したものを作成してみるのはどうでしょうか。例えば論文の情報をQRコードにする等のアイディアがあると思います。また通信環境の良くない場所でも読み込めるようにサイトの工夫があると助かります。

ゆきだるま への返信

ご意見ありがとうございます。オープンアクセスでどこでもみれるような形ならば携帯端末でのみやすさも追求したいところですね。そこのところACSは工夫していますが、よいものではないので(個人的には)やり方次第ですね。

分野違いの者 私の所属している学会でも同じような問題がありますが・・・
「自国の論文誌を盛り上げよう」と呼びかけている編集委員の方々が、あいもかわらずIFの高い海外誌へ投稿している状況では、変化は期待できないと思っちゃいますね。まずはあなたたちが投稿しなさいよと・・・
日本化学会がどうかはわかりませんが。分野違いの者 への返信ご意見ありがとうございます。化学会も会員も私も全く同様です。それに関しては現状ではかなり難しいですね。わざわざみてもらわないところに論文を投稿する人は研究者ではないと思います。ただ全部国内誌にという極論はおいておいて、年に1つはぐらいならなんとかなる気がします。私自身はそこからはじめようと思います。あとは本文に記載したように強制的に全世代に論文を投稿しなければならないしくみ(学会賞にからませる)などかもしれません。昔提案しましたがそれはやりすぎだといわれました。進歩賞という若手の賞は1報必ず投稿しなければならないんですけど。確かにそこは譲歩してほしいと思いました。ほかには高引用論文にはかなり大々的に宣伝するなど。それならIF<3の海外誌に投稿するよりも利点があると思います。
ぽすどく 雑誌”全体”が高い評価・信頼を得るためには、やはり投稿する側、審査する側(自国の研究者の割合がどの程度かはわかりませんが)一人一人の意識改革に勝るものはないような気がいたします。この記事でそうしたように、コミュニティーをリードしておられる方たちの声や想いを、多くの人(特に次の世代を担う学生やポスドク)に届けることは、長期的な意識改革にとってとても重要だと思います。
また、投稿をEncourageする案として、BCSJ賞等の受賞者には、国際会議での受賞論文に関する発表に対して一部助成することで、投稿する側のモチベーションの向上と、論文さらには雑誌の海外への宣伝効果の両方が期待出来るような気がするのですが、いかがなものでしょうか。ぽすどく への返信ご意見ありがとうございます。一部助成いいですね。そういう投資もこれまでの化学会ではできなかったというのが一番の問題であったのかもしれません。
kotori 究極的にはBCSJ, CLはそのままに新たなjournalを立ち上げてはどうかと思います.現在のBCSJやCLのようなIFというかレベルのjournalも場合によっては必要かと思います.ただここは最高峰の研究を載せるjournalだ,っていうものをCSJ発で出して,アクセプトする論文を質的にかなり絞ればどうでしょうか.

kotori への返信

ご意見ありがとうございます。NatureのNature commun, ScienceのScience advance みたいなものですね。確かに上位のジャーナルを出すというのはほとんどが電子ジャーナルとなったいまでは簡単なのでそれも現実的なのかもしれないですね。それにしても受け皿になる2誌がもうちょっと人に見られるようになってからではないと、上位もそこそこ担ってしまう気がします。BSCJとCLはトップジャーナルにならなくてもそこそこで役割を充分に果たすと思います。

PP まず査読が機能していないのが問題だと思います。雑誌のIF的には妥当かもしれませんが、CO2から石油を合成してしまうような論文を掲載する雑誌に自分の論文を投稿したいという気分にはならないです。

PP への返信

ご意見ありがとうございます。そうですね。さすがにあれは愕然としました。そのとおりだと思います。CLだからといって体制が整っていればOKというマインドを変えなければならないのかもしれません。

日本の研究費って割と特殊だと思っていて、国から出ている割合が大きいので、日本国内の雑誌に投稿することに対してインセンティブを与えたらいいと思います。
具体的にはJSTから出た科研費を使って研究したものを日本の学会の論文誌に投稿するとき、投稿料の減免、または科研費の増額等を認めるようなことをすればいいんじゃないでしょうか。ち への返信ご意見ありがとうございます。インセンティブは難しいかもしれないですが、評価の1つの指標にいれたらいいかもしれないですね。ただそこまでいくと化学だけの問題でなくなるので、ちょこっとIFをあげるというレベルよりも随分難しい気もしますが…
K.H. こんにちは。なんと申しましょうか、本話題の元中の人です(笑 今もゆるーくお手伝いをすることがあります。お久しぶりです。

さて、エントリーを拝読しました。これまでの日本化学会の経緯については、電子化を中心に2009年に一度まとめたものがありますので、ご参考いただければ幸いです。(購読についても若干触れています。かつてはBCSJとChemLettのIFは逆でした。)

岐路に立つ国産英文電子ジャーナル
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007028638

また、上記で引用していますが、日本発の意義については、2003年に以下でアピールしたことがあります。日本が世界の中で評価のイニシアチブを取って初めて一流と呼べるのではという話です。

学術情報発信のホームグラウンドを
http://www.matsuo-acad.or.jp/research/12-casereport.pdf

なお、拙筆の自慢をしたいのではなく、こうやって議論が繰り返されている中で本質を見いだし、何か打開策を見つけていく必要があると思って書き込みました。

懸案だった投資もできるようになった今、BCSJ,ChemLettもこれからの人たちで是非頑張ってください。私も現在の立ち位置でできることをやっており、今も様々な学会、ジャーナルの方と交流しております。

K.H. への返信

ご意見ありがとうございます。確かに議論と問題提起が繰り返されているように思えますが、意見がエンドユーザーまで達しておらず、発信=伝わるになっていなかった気がします。ここで議論を求めたところで全員に伝わるとは思えませんが、少なくとも現状ではエンドユーザーに伝えるには最適な場所だと思っています。仰るとおり懸案だった投資ができるようになった今がチャンスですね。

SY 筆者として良い仕事を投稿する、査読者としてほぼ既知だったり良い加減な仕事だったりをちゃんとリジェクトする、読者として面白い仕事をちゃんと評価する、と余力ある日本人研究者それぞれがやれることをやるのが大事でしょうか。購読していない機関が多いと思いますし、査読で高評価の論文や過去の先進的な仕事をハイライトして、自分たちも読みたくなる雑誌になるような取り組みはいかがでしょうか?

SY への返信

ご意見ありがとうございます。仰るとおりだと思います。とはいえど、みなさんBCSJやCLだからといって査読に手を抜いていることはないと思っています。これまでの良い論文をハイライトして紹介するのは面白いと思います。2次情報になるので日本化学会ができないのならば我々でやるしかないとも思っています。

能無し HPの日本語Ver.をつくるのはどうでしょうか?論文中身以外は全て日本語で書かれているものです。

国際化に英語は必須ですが,苦手意識のある研究者もまだまだ多いと感じます。(書けない話せないでは無く,苦手意識)受け入れ易い日本語を使い,化学歴が浅い深い問わずに広く客を呼び込む事で,裾野が広がり自然と質が上がっていくのではないか?と思います。また,日本語の方が宣伝し易く,化学業界以外の人がSNSなどで取り上げ易いとも思います。
アンゲも未だドイツ語Ver.がある事ですし,国際化だからって英語にこだわり,入り口狭める必要ないと思います。まずは国内で盛り上げるのが先だと感じます。

能無し への返信

ご意見ありがとうございます。そうですね、投稿から査読まで日本語で全部いけるなら確かに楽かもしれないですね。日常のニュースだって普通の人なら日本語で見ますし理解しやすいと思います。
仰るとおりアンゲもInternational Edditionでもドイツ人のcorresponding authorの場合はeditor、reviewerともにコメントをドイツ語で書いてきますよね。ただBCSJもCLも査読に関しては日本語でOKになっていますね。

SHO どうしても難しいという意見が多くなるかもしれないですけど、こういう話(不定期日記の2015年10月22日よりhttp://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html)もあるみたいです。
Submit からオンライン公開まで 2 週間というのは極端な例かもしれないですけど、査読が圧倒的に早いのは投稿するモチベーションになるのではないでしょうか?SHO への返信ご意見ありがとうございます。確かに自分の経験でも、アクセプトまで1週間以内はCLしかないですね。仰るように競合がいる場合や、類似の論文が投稿されてしまった場合は投稿するモチベーションにつながります。

 

通りすがり Chem. Lett.とか見るとよい論文が結構載ってますね。問題は,低インパクトファクター誌なのに掲載ジャンルが広いことじゃないでしょうか?

もしこれが専門誌だったら,その分野の人はとりあえずチェックする気になりますが,こんな手広くやってると結局見なくなります。

通りすがり への返信

ご意見ありがとうございます。日本人のものは良質な論文も多いと思います。化学の速報誌なので範囲はちょっと変えることは難しいですよね。そのために興味の有りそうな論文が出版された際に、研究者にアラートを送ったりしているのだと思います。ACIEみたいに項目をつけて分野別でも検索できるようになるとよいですね。

企業の人 優秀な論文を集めて注目を集めるのがべすとなのでしょうが、理想論なのですが

http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=18087

夜型人間 引用されるような論文を集めるのも重要だとは思いますが、その前に論文誌として、集客の努力も同時に実施しないと、無理だと思います。実際、同じような内容のrewieの引用数を見れば、結論が出ると思います。

一つのご提案ですが、ACIEやACS,RSC,Elsevierでは、ASAPの段階から、cited byで引用を知らせてますがこういった機能を付与することはどうでしょうか?http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=18087

rk 興味深い記事をありがとうございました.
実体験を含めいくつか意見させて下さい.前掲のゼリンさんのコメントに賛成で、スパイラルの一端に、海外で読まれていないことがあります.わたし自身、そのおかげで、海外から別刷り請求→知り合いに→共同研究に発展したことがあるので、結果的に(?)良かったのですがやはり欧米の化学者が「BCSJ?何ソレおいしいの?」では
投稿する意欲が下がります.

それから、これも「ち」さんが既に書かれているのですが、国内雑誌に対するインセンティブはアリだと思います.

以前、某国研にアプライした際に、国内誌への投稿が少ないことを(かなり強めに)指摘されたことがあります.当時は駆け出しだったので、日本の化学の将来などあまり考えていなかったのですが、時が
経つにつれ、この考えは重要だと思うようになりました.

いずれにせよ、こういったのは「機運」だと思うので、日本の化学者が“皆で盛り上げよう”という共通認識を持つ必要があるわけで、多少強引(領域代表者に執筆を強制する、など)でもやる必要があるように思います.

地方大は(おそらくどこも)役人の言いなりでしょうから、国が腰を上げればこぞって従うと思います.例えば文科省が「国内誌への投稿数を大学評価の基準に入れる」と一言言うだけで、大学内では
慌てふためいて「国内誌へ投稿しよう」と大合唱するでしょう.国を(文科省を)巻き込んでこういったことができる偉い人たち(領域代表者や野依さんなど?)が、旗振ってくれるといいのにな、
と思う次第です.

MasaN 少し感動してます。すばらしく建設的な記事に対する皆さんご意見に心が動きました。この問題は20年ほど前から大御所の先生が本気で動いてもなお解決しませんでした。しかし、小さな声を大きな声として集めることができるweb環境の揃った今なら変えれるかもしれませんね。昔、向山先生等がJACSに載らないものはchemlettかBCSJという時代がありました。その当時IFという概念はありませんでしたが、最新の先生の動向を知りたいと欧米でも多くの読者があったように思います。当時少しの間滞在したボストン郊外の小さな大学の図書館にもきちんと最新のまでありました。今はわかりません。
皆さんと似た意見になりますが、建設的意見と現在の懸念と願望を一つづつ。
雑誌数が昔と比べ格段に増えた今、本気で雑誌を変えたいなら、質を向上させるしかないと思います。質があがれば読者がついてきます。その突破力はweb環境を考えれば無限大です。そうすればすぐに欧米始め海外からも投稿されるでしょう。もし、日本中のすべての化学者が自分の準1級もしくは2級の論文を日本の両誌に投稿する日が来たら、必ず質が向上します。ご承知の通り日本の化学力は分野によらず世界のトップクラスです。質の向上が夢の現実に繋がるのでは。いつか、「あー、CL落ちたよー。しょうがなからOLにでも出すか」、みたいな会話ができればすばらしいですね。
あえて微妙な懸念点を議案に載せます。この記事を読む前ですが、僕は論文を海外のOAに投稿しました。IFと掲載までのスピードを重視したためです。僕の行動の裏には、早く多くの読者に読んでもらいたいという研究者としての本能のほかに、数少ない持ち論文なら、科研費等研究費の獲得の際その評価を少しでも上げたいというスケベ心がありました。実際の評価が掲載論文やIFで決まるものではなく、申請書の内容によるものと信じていますが。。現状において、皆さんが日本の2雑誌より欧米の有名誌(姉妹誌)を選ばれる理由にそういった不安が心のどこかにありませんか。
最後に希望を。個人的には、CL,BCSJからBest Paper of Month みたいな感じで2誌の情報をchemstationで発信し海外への宣伝拠点となることができるのではないかな、と感じてます。
merkel 私も感動しました。
ドイツの研究室でドイツ人教授の元働き、新規性に乏しい研究が簡単にAngewandte Chemieに次々と受理されていくのを見る一方で、日本人の研究者が同誌にまぶしいばかりの素晴らしい研究成果を、渾身の一方と載せ、かつ日本発の国際ジャーナルが廃れていく現状はなんだか考えるところがあります。私は去年、ドイツ人の教授にChemLettに私の仕事を投稿することを意見しましたが、私の働く研究機関ではChemLettもBCSJも購読していないことを理由に即却下されました。また、論文執筆の際も、BCSJの論文を引用しようとしたところ、「誰も読むことのできない論文を引用しても意味が無い」と言われ削除するよう求められました、open Access articleにもかかわらず。
また某ヨーロッパポスドクは、「日本人も投稿したがらないジャーナル、投稿しても日本人にすら感謝されずむしろ見下されるジャーナルにわざわざ投稿するメリットが無い」と言い切ります。購読に関しては、Webデザインを新しくしたのは非常にいい試みだと思います。加え、上にあったご意見のセールス、というのもなかなかいい意見だと思います。
ドイツではJASCOとTCIは日本と同様に素晴らしい成功を収めています。製品の品質のすばらしさに加え、JASCOとTCIはイメージアップにも多くの企業努力を重ねています。ドイツの美しい四季折々の写真のカレンダーや美しくデザインされた文房具やマグカップはドイツの研究室の風景の一部となっています。さらにTCIは、容姿採用を疑ってしまうほど爽やかなドイツ人青年が数カ月に一度、営業にやってきて、ほぼ全ての学生学生相手に握手を求め、カタログを広げて熱心に営業していきます。TCIの企業イメージは非常に高いと思います。これと同様に、日本人の先生が海外講演をされる際は、素晴らしい研究成果の終わりに研究室への謝辞、日本の観光案内とともにCSJジャーナルの宣伝をされるとさらにいいと思います。意地悪な人はその場こそ失笑するかもしれませんが、自国の化学の発展に一生懸命な姿は好印象には映っても決して悪印象は無いはずです。

学生が低いインパクトファクターの雑誌へ投稿するのを嫌がる、というのは万国共通だと思いますが、ドイツの学生はTetrahedron (Symposia in print) やinvited contributionのような「付加価値」を思いのほか重要視するので(日本人の私にはピンとこないけど)そういうのを増やすのも一手かもしれません。

難しいとは思いますが、外国の大学は、1年完全オープンアクセス、2年目は各々の研究機関から一定数の論文があった場合、無料または割引き、さらに出版した論文はopen access article、くらいやらないと海外からの投稿数は増えないと思います。PDFに広告を1ページ挟む等でもう少しopen access articleの数は増やせないでしょうか。

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. Branch選択的不斉アリル位C(Sp3)–Hアルキル化反応
  2. 高分子ってよく聞くけど、何がすごいの?
  3. 汝ペーハーと読むなかれ
  4. ポケットにいれて持ち運べる高分子型水素キャリアの開発
  5. 脳を透明化する手法をまとめてみた
  6. 生体分子を活用した新しい人工光合成材料の開発
  7. 化学者のためのエレクトロニクス講座~5Gで活躍する化学メーカー編…
  8. 規則的に固定したモノマーをつないで高分子を合成する

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. トップ・ドラッグ―その合成ルートをさぐる
  2. アメリカ大学院留学:研究者キャリアとライフイベント
  3. 【マイクロ波化学(株)医薬分野向けウェビナー】 #ペプチド #核酸 #有機合成 #凍結乾燥 第3のエネルギーがプロセスと製品を変える  マイクロ波適用例とスケールアップ
  4. 社会に出てから大切さに気付いた教授の言葉
  5. 連続アズレン含有グラフェンナノリボンの精密合成
  6. ロバート・フィップス Robert J. Phipps
  7. 癸巳の年、世紀の大発見
  8. リチャード・ホルム Richard H. Holm
  9. 酵素触媒反応の生成速度を考えるー阻害剤入りー
  10. 今こそ天然物化学☆ 天然物化学談話会2021オンライン特別企画

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

ニキビ治療薬の成分が発がん性物質に変化?検査会社が注意喚起

2024年3月7日、ブルームバーグ・ニュース及び Yahoo! ニュースに以下の…

ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材として期待―

第603回のスポットライトリサーチは、ティエムファクトリ株式会社の上岡 良太(うえおか りょうた)さ…

有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年3月号がオンライン公開されています。…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。第一弾・第二弾につづいて…

ペロブスカイト太陽電池の学理と技術: カーボンニュートラルを担う国産グリーンテクノロジー (CSJカレントレビュー: 48)

(さらに&hellip;)…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回の第一弾に続いて第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業との…

CIPイノベーション共創プログラム「世界に躍進する創薬・バイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第104春季年会(2024)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界に躍進…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

今年も始まりました日本化学会春季年会。対面で復活して2年めですね。今年は…

マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

開催日:2024/03/21 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

分子のねじれの強さを調節して分子運動を制御する

第602回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科 塩谷研究室の中島 朋紀(なかじま …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP