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スポットライトリサーチ

高電気伝導性を有する有機金属ポリイン単分子ワイヤーの開発

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第181回目のスポットライトリサーチは、田中裕也 (たなか ゆうや)助教にお願いしました。

田中さんは2013年より東京工業大学 穐田・吉沢研究室の助教として、有機金属化学や分子エレクトロニクスの研究に従事されています。

分子ワイヤーは、分子エレクトロニクスの重要な構成要素の1つであり、様々なπ共役分子を用いた研究がなされています。一般的に分子ワイヤーの電気伝導度は、その距離(長さ)に対して累乗で減衰するため、優れた伝導度を示す分子ワイヤーの開発は重要な課題となっています。今回取りあげる成果は、単分子レベルで高い伝導度を示す有機金属ポリイン分子ワイヤーの開発についてです。昨年Journal of the American Chemical Society速報版に掲載され、また表紙(Supplementary Journal Cover)にも採用されております(プレスリリースはこちら)。

“”Doping” of Polyyne with An Organometallic Fragment Leads to Highly Conductive Metallapolyyne Molecular Wire”

Y. Tanaka, Y. Kato, T. Tada, S. Fujii, M. Kiguchi, M. Akita, J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 10080–10084.

DOI: 10.1021/jacs.8b04484

プロジェクトを現場で指揮されております穐田 宗隆教授から、田中助教について以下の様な人物評を頂いています。今後いっそうの発展が期待される人物です。それでは今回も現場からのコメントをお楽しみ下さい!

 この研究テーマは、田中助教の博士論文のテーマもふくめて、私の研究室の「炭素集合体の有機金属化学」に関する研究の流れをくむものです。田中助教が外部での博士研究員を経て助教として研究室に参加した2013年は単分子伝導度測定を始めた直後で、そこでバトンタッチし、その後は合成と測定を含めて学生さんをリードしながら今回の系も含めて構造と機能について新しい境地を開き、興味深い成果をあげています。均化定数などの錯体化学的パラメータによる評価には行き詰まりを感じていたので、リフレッシュした気分で研究にのぞむことができています。今後スイッチやダイオードなどの機能性分子デバイスへの展開に期待しています。

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

一般に有機分子ワイヤーは電極間での単分子電気伝導度が低いことが課題としてあげられます。一方、アセチレンが連結した有機ポリインワイヤー(図a)は高い電気伝導性が理論的に予測されていますが、その前駆体は爆発性があるために実験的な報告例はありません。本研究ではルテニウムテトラホスフィンフラグメント(Ru(dppe)2)を有機ポリインワイヤーへ導入することで(図b)安定かつ高い伝導性を示す有機金属ポリイン単分子ワイヤーの開発に成功しました(図c)。

図. (a)ポリイン分子ワイヤーと有機金属ポリイン分子ワイヤー. (b) 有機金属ポリインワイヤーのイメージ図、(c)単分子電気伝導度計測結果

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

メタロポリイン骨格を利用した分子ワイヤーはシンプルかつ高い伝導性が予測されますが、そのほとんどが末端に芳香環を含むアンカー基を有するものでした。本研究では主鎖にアセチレンとルテニウムのみを含む分子ワイヤーに焦点を絞り単分子電気伝導度特性を明らかにしました。

 

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

単分子電気伝導度計測時に金属―炭素接合をどのように構築するかが難しかった点です。いくつかの手法があるのですが、一長一短で、最終的には末端に金錯体を修飾し、系中でトランスメタル化反応を行う手法を用いました。金錯体上の配位子により錯体の安定性が変わるのですが、安定化しすぎても測定中に上手く分子ジャンクションを形成してくれないなどの問題がありました。このような問題は、本研究を担当した加藤佑弥君(現化学メーカー勤務)の粘り強い実験により解決することができました。

 

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

最近では、本研究のように様々な分野の研究者と共同研究をする機会に恵まれ、ディスカッションを通して多くの刺激を受けています。今後は自分の持ち味を活かしつつ、自分の分野に囚われないように化学と関わっていけたらと考えています。

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

実験を担当した加藤君(右)と田中助教(左)

研究に限らないことですが、成功体験だけでなく、失敗も人生の財産だと思います。学生の時に某先生から、若い内は失敗できるけど年を取ってくるとだんだん(立場上)失敗できなくなる、と頂いた言葉が心に残っています。学生さんは是非、学生のうちにたくさんのオリジナリティーのある失敗を経験してください。

研究者の略歴

田中 裕也(たなか ゆうや)
日本学術振興会 海外特別研究員

所属:東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教

研究テーマ 有機金属化学、錯体化学、分子エレクトロニクス

経歴
2010年     東京工業大学大学院総合合理工学研究科化学環境学専攻博士課程修了(工学博士)
(2007年9月-2008年3月 フランス・レンヌ第一大学(Lapinte研究室)留学)
2010年-12年  香港大学化学科博士研究員(Yam研究室)
2012年      東京工業大学生命理工学研究科博士研究員(上野研究室)
2013年1月から 現在東京工業大学資源化学研究所助教

Kyoten

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高専卒業後、修士課程へ。高分子化学、超分子化学、有機光化学などの記事を書きます。やるときはやるし、やらないときはやらない。分かりやすく化学を伝えていきたいと思っています。

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