今年の10月はノーベル化学賞が有機化学分野から出て、物理学賞を真鍋淑郎先生が受賞して、非常に盛り上がりを見せましたね。そんなタイミングに合わせてか、日経新聞でもノーベル賞に縁のある方の10月度連載が始まりました。
著名人の半生を辿る日経新聞記事、「私の履歴書」。今月は2019年にノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローである吉野彰氏の連載となっています。
私の履歴書とは??
日経新聞裏面に月毎に連載される1300文字程度の記事です。著名人の半生を1ヶ月かけて紐解いていきます。著名人は企業人、芸能人、アスリート、研究者など非常にバリエーション豊かです。
出生から現在まで詳細に描くため、普段知れない意外な一面も見受けることができます。中には戦争や学生運動など壮絶な体験をした方もおり、近代史を知る上でも興味深い連載です。
研究者の連載は少ないですが、化学企業出身の方の連載は年1~2回あります。かつて根岸英一教授も2012年10月(!)に連載しました。本連載はwebでも見れますが有料になります。
吉野彰氏の「私の履歴書」
吉野彰氏は2019年に「リチウムイオン電池の発明」でノーベル化学賞を受賞しております。リチウムイオン電池はパワフルかつ小型の蓄電池であり、今日の生活を支えている発明です。スマホのバッテリーはリチウムイオン電池なので、この発明がなければスマホで手軽にケムステも見れなかったということですね。
本連載にはこの発明をするに至った経緯は勿論のこと、学生時代や就職先の決め方も書かれていました。もう半分程度連載は進み、いよいよリチウムイオン電池の研究に着手へ…という場面になっています。
全体的に興味深い内容ですが、特にポリアセチレンとの出会い、コバルト酸リチウムの論文を発見した場面がお勧めです。その時の衝撃が読んでいて伝わってきました。リチウムイオン電池の完成、グッドイナフ博士との交流など話のスケールが大きく、小説を読んでいるようです。一方で気分転換には同僚とカラオケなど、我々と変わらない一面もあり親近感が湧きます。詳細は是非連載記事をご覧ください。半生を書くというテーマの連載のため、現在の仕事も書かれていくと思います。
まとめ
人の半生を読むことは偉人の伝記以外にあまりないと思います。しかし研究者の半生を知ることは今後のキャリアプランの参考にもなります。日経新聞をとっていない方も図書館などでバックナンバーを見てみてはいかがでしょうか。
研究室の教授に半生を聞いてみるのも面白いですよ。
関連リンク
- 2019年ノーベル化学賞は「リチウムイオン電池」に!(ケムステ記事)
- リチウムイオン電池の話~1~(ケムステ記事)
- 旭化成の吉野彰氏 リチウムイオン電池技術の発明・改良で 2019 年欧州発明家賞を受賞(ケムステ記事)|
- 私の履歴書(日本経済新聞 )
- リチウムイオン電池ってなに?(NHK)