[スポンサーリンク]

一般的な話題

アンモニアの安全性あれこれ

[スポンサーリンク]

アンモニア利用で管理は重要な事項ですが、「臭いし、たくさん吸い込んだらやばそう」ってイメージくらいしか筆者にもなかったので、一緒にちょこっと詳しく見てみましょう。

吸ったらどうなるのっていう健康への有害性、それから安定性すなわち可燃性はどんなものなのでしょうか。

健康への影響について 社会的受容度

アンモニア水そのまんまで普通に購入することができるレベルのものは

こちら より

 

ですね。10w/v%程度です。虫刺されや気付け薬などの用途があります。この濃度なら、すでに社会的な赦しと同意を得られているという言い方もできるでしょう。

米国内にはアンモニアのパイプラインが整備されており、全長は3000㍄以上にもなるそうです。このパイプラインは安全かつ低コストだと言われていますが、

このブログ より こちらオクラホマ州の都市タルサ(Tulsa)の化学情報を批判的に発信するサイトのようです

 

この図の赤い方のパイプラインを持つMagellan Midstream Co が今年の一月末に、「2019年末には1100㍄に及ぶパイプラインの商用運用をやめる」と発表しています。ソース。profitabilityの問題だとしていますが、何十年も前につくったものなので維持管理の問題や、需要の問題ということですね。もしかしたらアンモニアパイプラインの安全性に懐疑的な国民たちからのアレもあるのかもしれませんが、筆者がむしろこの辺のことをご教授いただきたいところです。

さて、アンモニアの許容濃度は25ppm(厚生労働省より)とされております。二酸化炭素は大気中に400ppmくらいありますから、そういうスケールです。徹底した管理が必要です。

 

燃料として

燃料としての観点から見てみましょう。

環境に対する安全性は想像の通り、ばっちりです。というのも分解しても窒素と水素しか出さないですからね。(なんてったって炭素もってないわけですから)

引火点は132℃と高めです。メタンで-188℃、プロパンで-104℃、ガソリンで-40℃とかです。

発火点も651℃と高めで、メタン、プロパン、ガソリンの順で537℃、450℃、300℃となっていて同じような傾向ですね。

爆発事故を気にする人にとっては嬉しいデータですね、この中では最も安全です。

なお、

引火点=物質が揮発して空気と可燃性の混合物を作ることができる最低温度

発火点=発火する限界温度のこと (点火元がなくても自然発火する温度のこと)

です。

また、アンモニアは室温で1MPa以下で容易に液化させることができます。水素ステーションでは水素を70MPaとかいうオーダーで圧縮してますからね。1MPaなんて容易、楽々です。

 

参考文献

[1] アンモニアを利用した水素貯蔵・輸送

[2]小島由継監修,アンモニアを用いた水素エネルギーシステム,初版,CMC出版(2015).

関連書籍

[amazonjs asin=”4797399953″ locale=”JP” title=”2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望”] [amazonjs asin=”B06XW3D5BV” locale=”JP” title=”水素エネルギーで甦る技術大国・日本 (祥伝社新書)”]

関連リンク

SASAKI

投稿者の記事一覧

我輩は応用化学科の学部生である。専門はまだない。(とか言ってたらラボは化学工学系に決まりました。)将来の夢が陶芸家なのか研究者なのかわかんなくなっている迷い猫です。

関連記事

  1. 化学者のためのエレクトロニクス講座~代表的な半導体素子編
  2. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無電解めっきの原理編~
  3. 有機合成化学協会誌2018年8月号:触媒的不斉全合成・分子ロータ…
  4. ヒドロアシル化界のドンによる巧妙なジアステレオ選択性制御
  5. 青色LEDで駆動する銅触媒クロスカップリング反応
  6. 細胞の中を旅する小分子|第二回
  7. 光レドックス触媒反応 フォトリアクター Penn PhD Pho…
  8. 材料開発を効率化する、マテリアルズ・インフォマティクス人材活用の…

注目情報

ピックアップ記事

  1. トム・メイヤー Thomas J. Meyer
  2. 有機合成化学協会誌2024年8月号:連続フロー合成・AI創薬・環状有機ケイ素化合物・カルボン酸α位修飾・触媒的還元的アミノ化
  3. ダウ・ケミカル化学プラントで爆発死亡事故(米・マサチューセッツ)
  4. マクコーマック反応 McCormack Reaction
  5. BASFとはどんな会社?-2
  6. 第五回 超分子デバイスの開発 – J. Fraser Stoddart教授
  7. 有機機能性色素におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?
  8. 独自の有機不斉触媒反応を用いた (—)-himalensine Aの全合成
  9. 日本科学未来館
  10. 有機合成化学協会誌2018年11月号:オープンアクセス・英文号!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP