[スポンサーリンク]

D

脱酸素的フッ素化 Deoxofluorination

[スポンサーリンク]

概要

各種アルコールやカルボニル化合物から脱酸素的にフッ素置換を行える試薬が開発されている。 市販もされている、代表的なものを以下に挙げる。

DAST_2

三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST, ダスト)はこの試薬群のプロトタイプに当たり、現在でも多用されている。液体で市販されている。90℃以上に加熱すると爆発が起きる可能性があるため、取り扱いに注意を要する。水に不安定。

Deoxo-Fluor(デオキソフルオル)はDASTの改良版にあたる液体。より熱的に安定であり、取り扱いが安全で容易となっている。水に不安定。

1,1,2,2-tetrafluoro-N,N-dimethylethylamine(TFEDMA)は液体の市販品。副生物のアミドが水溶性であり、分液操作によって容易に除去できる。ポリエチレン、テフロン、金属製の容器に長期間保存可能。熱的に安定だが、水に不安定。

XtalFluor(クリスタルフルオル)は、市販されている固体試薬。DASTやDeoxoFluorに比べて競合する脱離反応が抑えられている。DBUやEt3N-3HFなどの試薬と共に用いる。

FluoLead(フルオリード)は、市販されている固体試薬。加熱と吸湿分解に強く、脱離反応が抑制されている。カルボン酸をトリフルオロメチル基に変換するなど、より多彩な反応に用いることが可能。

PhenoFluor(フェノフルオル)は市販されている固体試薬。CsFと共用することでsp2炭素(フェノール)での脱酸素的フッ素化や、複雑な基質におけるLate-Stageフッ素化が行える最新鋭の試薬。

基本文献

<DAST>

  • Middleton, W. J. J. Org. Chem. 1975, 40, 574. DOI: 10.1021/jo00893a007
  • Hudicky, M. Org. React. 1988, 35, 513.

<DeoxoFluor>

  • Lal, G. S.; Pez, G. P.; Pesaresi, R. J.; Prozonic, F. M. Cheng, H. J. Org. Chem. 1999, 64, 7048. DOI: 10.1021/jo990566+
  • Lal, G. S.; Pez, G. P.; Pesaresi, R. J.; Prozonic, F. M. Chem. Commun. 1999, 215. DOI: 10.1039/A808517J
  • Lal, G. S.; Lobach, E.; Evans, A. J. Org. Chem. 2000, 65, 4830. DOI: 10.1021/jo000020j
  • Singh, R. P.; Twamley, B.; Shreeve, J. M. J. Org. Chem. 2002, 67, 1918. DOI: 10.1021/jo016245r
  • White, J. M.; Tunoori, A. R.; Turunen, B. J.; Georg, G. I. J. Org. Chem. 2004, 69, 2573. DOI: 10.1021/jo035658k
  • Bi, X. Synlett 2006, 2515. DOI: 10.1055/s-2006-950419

<TFEDMA>

<XtalFluor>

<FluoLead>

  • Umemoto, T.; Singh, R. P.; Xy, Y.; Saito, N. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 18199. DOI: 10.1021/ja106343h

<Phenofluor>

  • Hayashi, H.; Sonoda, H. Fukumura, K.; Nagata, T. Chem. Commun. 2002, 1618. DOI: 10.1039/B204471D
  • Tang, P.; Wang, W.; Ritter, T. J. Am. Chem. Soc. 2011133, 11482. doi:10.1021/ja2048072
  • Sladojevich, F.; Arlow, S.; Tang, P.; Ritter, T. J. Am. Chem.
    Soc.
    2013, 135, 2470. doi:10.1021/ja3125405
  • Fujimoto, T.; Becker, F.; Ritter, T. Org. Process Res. Dev. 2014, 18, 1041. DOI: 10.1021/op500121w

Review for Deoxyfluorination:

 

反応機構

DASTフッ素化の機構:立体化学の反転を伴う。


DAST_3.gif

反応例

カルボニル基とも反応してgem-二フッ化物を与える。


DAST_4.gif

Ciguatoxin合成におけるフラグメント連結過程での使用[1]


DAST_5.gif

PhenoFluorによるフェノールの脱酸素フッ素化とLate-Stage脱酸素フッ素化

DAST_6.gif

deoxofluorination_8

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

水と反応して猛毒かつガラス腐食性のフッ化水素(HF)が発生するので、反応の仕込み・後処理には注意が必要。

 

参考文献

[1] Inoue, M.; Yamashita, S.; Hirama, M. Tetrahedron Lett. 2004, 45, 2053. doi:10.1016/j.tetlet.2004.01.077

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”0471543705″ locale=”JP” title=”Synthetic Fluorine Chemistry”][amazonjs asin=”0470021772″ locale=”JP” title=”Fluorine-Containing Reagents (Hdbk of Reagents for Organic Synthesis)”][amazonjs asin=”0849378672″ locale=”JP” title=”Aromatic Fluorination (New Directions in Organic and Biological Chemistry)”]

 

外部リンク

 

関連記事

  1. 有機トリフルオロボレート塩 Organotrifluorobor…
  2. ジアゾカップリング diazocoupling
  3. エッシェンモーザーカップリング Eschenmoser Coup…
  4. バートン ヨウ化ビニル合成 Barton Vinyl Iodid…
  5. サレット・コリンズ酸化 Sarett-Collins Oxida…
  6. ハンスディーカー反応 Hunsdiecker Reaction
  7. ランバーグ・バックランド転位 Ramberg-Backlund …
  8. ブーボー/ボドロー・チチバビン アルデヒド合成 Bouveaul…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル化学賞を担った若き開拓者達
  2. 米メルク、「バイオックス」回収で第2・四半期は減収減益
  3. カーン グリコシド化反応 Kahne Glycosidation
  4. 工程フローからみた「どんな会社が?」~OLED関連
  5. 有機反応を俯瞰する ー縮合反応
  6. 農薬メーカの事業動向・戦略について調査結果を発表
  7. ノーベル化学賞、米仏の3氏に・「メタセシス反応」研究を評価
  8. 可視光増感型電子移動機構に基づく強還元触媒系の構築
  9. コープ脱離 Cope Elimination
  10. 第二回ケムステVシンポ「光化学へようこそ!」開催報告

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年9月号:ホウ素媒介アグリコン転移反応・有機電解合成・ヘキサヒドロインダン骨格・MHAT/RPC機構・CDC反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年9月号がオンライン公開されています。…

初歩から学ぶ無機化学

概要本書は,高等学校で学ぶ化学の一歩先を扱っています。読者の皆様には,工学部や理学部,医学部…

理研の研究者が考える“実験ロボット”の未来とは?

bergです。昨今、人工知能(AI)が社会を賑わせており、関連のトピックスを耳にしない日はないといっ…

【9月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ①

セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチック…

2024年度 第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブル ケミストリー ネットワーク会議(略称: …

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

開催日時 2024.09.11 15:00-16:00 申込みはこちら開催概要持続可能な…

第18回 Student Grant Award 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク会議(略称:JAC…

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分…

化学コミュニケーション賞2024、候補者募集中!

化学コミュニケーション賞は、日本化学連合が2011年に設立した賞です。「化学・化学技術」に対する社会…

相良剛光 SAGARA Yoshimitsu

相良剛光(Yoshimitsu Sagara, 1981年-)は、光機能性超分子…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP