[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

第24回ACSグリーンケミストリー&エンジニアリング会議 (GC&EC2020)に参加しました

[スポンサーリンク]

皆さんはこの3月以降,学会に参加発表されましたか?Covid-19パンデミックの影響で国内学会の年会も中止となって,発表できずに悔しい思いをした方も多いのではないでしょうか.この数ヶ月の間に色々な形でバーチャルシンポジウムが開かれ始めていますが,今回,先週バーチャルシンポジウム形式で開かれたアメリカ化学会のグリーンケミストリー&エンジニアリング年次シンポジウム(GC&EC)に参加してみました.

結論から言うと,化学の内容も満足,webプラットフォームも想像以上に良かったシンポジウムでした.バーチャルシンポジウムに参加発表したり,主催される方への参考になればと思いますので, 紹介します.

GC&EC ってどんなシンポジウム?

GC&ECはアメリカ化学会のグリーンケミストリー機構(ACS GCI)が主催している年次シンポジウムで,グリーンケミストリーの重要性が叫ばれ始めた1997年から毎年開かれています.持続可能な社会をつくるための科学や技術を中心に,幅広い化学についての議論がなされています.またグリーンケミストリーの普及にむけた学生の啓蒙活動や教育を行なっているところも大きな特徴です.例年アメリカ国内で開かれており,今年はシアトルで開かれる予定でしたが,6月16〜20日にバーチャル開催されることになりました.しかもACS会員でなくても誰でも無料で参加できる形式での開催です.

基調講演された先生方は,Bruce Lipshutz先生,Feng Wang先生,Jeannette Garcia先生,Jillian Goldfarb先生,Jonas Baltrusaitis先生,Katalin Barta先生,Tomas Jaramillo先生でした.

基調講演された先生方 (ACSのサイトから改変して転載)

それぞれ水中有機合成化学,光触媒によるバイオマス変換,プラスチックの化学リサイクルや量子コンピューティング,多孔性材料の設計と環境応用,窒素循環,均一系触媒による再生利用可能資源の変換,風や太陽光を利用した燃料生産や化学合成…,など,グリーンケミストリーを接点とした幅広いトピックについて講演がありました.基調講演はリアルタイムでの講演+Q&Aでした.そのうちの半分以上は後で講演とQ&Aを録画でみることができます.

基調講演が終わるとeポスターと企業展示の時間があり,その後に口頭発表のセッションが毎日7~8セッション並行で開かれます(各セッション7~10件の発表).その後 ZoomやTwitter を使った参加者同士の交流時間が設けられていました.参加者は100カ国から5000人以上という盛況です,

どうやってGC&EC2020に参加したの?

バーチャルシンポジウムのウェブサイトから無料で参加登録できました.登録フォームに従って ACS ID (アメリカ化学会の提供するwebサービスのID, 登録無料)を取得して,入力を進めていくと 2分で登録が終わります.本来であれば会議が始まる前に登録を済ませて,会議開始前に,一斉に「シンポジウム会場」への ID とパスワードがe-mailで配られます.今回筆者がオンライン開催に気づいたのはシンポジウムが始まってからだったので,申し込みから1日くらい経ってから会議のプラットフォームに入るための e-mail が届き,リンクをクリックすると「シンポジウム会場」に入ることができました.

「シンポジウム会場」の入り口.左のメニューから会場をめぐることができます(ACS GC&EC サイトより転載).

左のメニューから口頭発表やeポスター,懇親会場などへ飛ぶことができます.キーワードで検索をかけて,自分のみたい発表をさらっていくこともできるのは便利でした.口頭発表は録画かライブでスライドを見せながら発表,その後時間を決めて4~5発表分まとめてディスカッションの時間が設けられます.質問は文章で発表ごとに Q&A からテキストで送る形式です.

ポスターはA0ポスターのものに加えてスライド形式で数枚に分けて示している発表もありました.それぞれ,説明のムービーがついており,こちらもテキストで質問ができます. また企業展示はPRのほかにZoomを通して出展企業の方と直接話せる機会が作られていました.

参加してみてどうだった?

基調講演をはじめ質が高い国際シンポジウムに,旅費や参加費を払わず自宅から参加できる,というのは大きなメリットでした.日程確保や移動時間も必要ありません.オンラインプラットフォームも予想していたよりも使いやすく,こちらの顔を写さずに自分のペースで学会会場を回れるのは気軽でよかったです.リアルのシンポジウムと違って講演者の顔もスライドもよく見えます.発表者の大半は発表をストリーム動画としてアップしてあるため,理解が追いつかなかったところは何回でも好きな時に見直すことができます(今年9月まで発表の動画などはアップしたままにされるようです).Q&Aもテキスト形式なので,質問時間に縛られずに気軽に質問できるのはよかったです.また口頭発表する立場としても満足いくまで練習した動画をアップできるので,ライブ講演でのトラブルの不安も避けることができたのではないでしょうか.

一方で時差の問題は難しく,現地は昼頃から夕方のイメージですが,日本時間の午前0時から始まって朝の6時に終わるスケジュールでした.ストリーム動画をアップしていない発表は見逃してしまうと観ることができないため,子供を寝かしつけたときにそのまま寝落ちして見逃した発表もありました.日本国内の参加者が日中に通常業務を回しながら深夜の時間帯にライブディスカッションやネットワーキング(懇親会)に参加するのはかなり困難だったのではないでしょうか.招待講演を受けたり,発表を申し込むときも,時差がある場合の日程確保には気をつける必要がありますね.

どうやって会議を開いていたの?

今回シンポジウムのプラットフォームはPSAV という運営会社によって運営されていました.リアルなシンポジウムと違って会場費や懇親会費,基調講演者への旅費支払いが必要ないのは参加費無料にできた大きな要因でしょう(会場キャンセル料などはかかっているかもしれませんが).

また収入面では,一般の参加者からは一切参加費をとっていないため,スポンサーと企業展示から運営資金を得ているはずです,スポンサーはACS GCI をはじめ12団体.日本からは武田薬品工業が参加していました.支払った金額に応じてゴールドスポンサー,シルバースポンサー,などランクづけがされています.基調講演の直前にはスポンサーへの謝辞が毎回強調されていました.企業展示は12団体で,出展費用は$500,特典内容は,ポスターセッションでのEXPO展示,EXPO room の設置,ロゴの表示,Exhibitor profile の表示,Live discussion のホストもしくはプロモ動画のポスト,学会twitter による宣伝,参加者とのコンタクトを許可などでした.

スポンサーの表示(ACS GC&EC サイトより転載).

参加者は ACS ID を取得した人物に限られるので,荒らしなどの被害に対する予防もされていたように見えます.同時に,参加費無料のオンライン開催としたために,もともと参加する予定のなかった参加者も広く呼び込み,結果的には今後のリアルなシンポジウムへの参加者獲得や ACS 会員への獲得にもつながったのではないでしょうか.

いかがでしたか?

今回の ACS GC&EC はバーチャルの良さをうまく活かしたシンポジウムだったと思います.秋には国内学会もバーチャルシンポのラッシュが始まりますが,国際シンポジウムもバーチャルだと発表申込や参加申込のハードルもかなり下がるのではないでしょうか.是非とも積極的に参加してみてはいかがでしょう.

関連リンク

関連書籍

[amazonjs asin=”4320044088″ locale=”JP” title=”グリーンケミストリー -社会と化学の良い関係のために- (化学の要点シリーズ 3)”] [amazonjs asin=”4807909339″ locale=”JP” title=”環境と化学 -グリーンケミストリー入門(第3版)”] [amazonjs asin=”4061543717″ locale=”JP” title=”最新グリーンケミストリー (KS化学専門書)”]
Avatar photo

Naka Research Group

投稿者の記事一覧

研究グループで話題となった内容を紹介します

関連記事

  1. 【python版】新規化合物データチェックリストとWord整形プ…
  2. 元素川柳コンテスト募集中!
  3. シュプリンガー・ネイチャーより 化学会・薬学会年会が中止になりガ…
  4. (+)-11,11′-Dideoxyverticil…
  5. JSRとはどんな会社?-2
  6. クリック反応に有用なジベンゾアザシクロオクチンの高効率合成法を開…
  7. 食品衛生関係 ーChemical Times特集より
  8. 二段励起型可視光レドックス触媒を用いる還元反応

注目情報

ピックアップ記事

  1. L・スターンバック氏死去 精神安定剤開発者
  2. キノコから見いだされた新規生物活性物質「ヒトヨポディンA」
  3. 実験と機械学習の融合!ホウ素触媒反応の新展開と新理解
  4. 小林製薬、「神薬」2種類を今春刷新
  5. 傷んだ髪にタウリン…東工大などの研究で修復作用判明
  6. 有機ナノチューブの新規合成法の開発
  7. サリドマイドが骨髄腫治療薬として米国で承認
  8. 第130回―「無機薄膜成長法を指向した有機金属化学」Lisa McElwee-White教授
  9. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5
  10. アジドの3つの窒素原子をすべて入れる

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP