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スポットライトリサーチ

液相における粒子間水素移動によって加速されるアルカンとベンゼンの脱水素カップリング反応

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第307回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 物質理工学院 応用化学系(本倉研究室)・高畠 萌さんにお願いしました。

変換の足がかりのない不活性分子であるアルカンの加工は、工業的に重要でありつつも実施に困難を極めています。このような高難度変換を実現しうる触媒開発研究は今なお最先端トピックです。今回の研究ではベンゼンとの直接カップリングが高効率で進行する新たな固体触媒の開発に成功しています。本成果は創刊されたばかりのオープンアクセスジャーナルJACS Au誌 原著論文およびプレスリリースに公開されています。

“Dehydrogenative Coupling of Alkanes and Benzene Enhanced by Slurry-Phase Interparticle Hydrogen Transfer”
Moe Takabatake, Ayako Hashimoto, Wang-Jae Chun, Masayuki Nambo, Yuichi Manaka, Ken Motokura* JACS Au 2021, 1, 124–129. doi:10.1021/jacsau.0c00070

研究室を主宰されている本倉 健 教授から、高畠さんについて以下の人物評を頂いています。それでは今回もインタビューをお楽しみください!

高畠さんは私が東京工業大学物質理工学院在職中に、研究室に4年生として配属されました。良くも悪くもとにかく大きな声が彼女の魅力です。私の研究室は東工大すずかけ台キャンパスにあり、4年生から配属される学生数は多くないのですが、思い切って当研究室を志望してくれたことを嬉しく思っています。その後、修士課程、さらには2021年4月より博士課程へと進学してくれて、引き続き一緒に研究できることに感謝しています。当研究室では、活性化の難しい安定な分子、例えばシンプルなアルカンや二酸化炭素を活性化するための固体触媒の開発を目指しており、テーマが難しく上手くいかないことが多々あります。高畠さんはアルカン活性化に果敢に挑戦し、ベンゼンとの直接反応を成功させるだけでなく、液相系では初と思われる触媒粒子間水素移動現象の提案に至りました。本研究成果は固体触媒による液相合成反応における新たな可能性を拓くものであり、今後の展開を楽しみにしています。引き続き緻密な触媒設計・構造解析のスキルに磨きをかけ、大胆な反応条件設定・常識破りの反応機構想定によって、さらにハイインパクトな成果が博士課程では得られると期待しています。本倉は2021年4月より研究室の拠点を横浜国大に移しておりますが、東工大での教育・研究も兼務させていただいて高畠さんの指導を引き続き行う予定です。ともに心機一転、良い成果を目指して頑張りますので、今後ともご指導をよろしくお願いいたします。

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

本研究では、アルカンとベンゼンの脱水素カップリング反応において、固体酸であるアルミニウム交換モンモリロナイト(Al-mont)に固体塩基であるハイドロタルサイト担持Pd (Pd/HT) を添加することで大幅に反応効率が向上することを見出しました。Pd/HTのみではアルキル化反応は進行しなかったことから(Table 1)、Al-montとPd/HTの粒子間の協奏効果によって反応が加速されていると言えます。反応前後の触媒構造解析や、重水素同位体置換実験、種々のコントロール実験の結果から、固体酸におけるアルキルベンゼン生成において副生した水素原子が粒子間水素移動によってHTへと移動し、Pd粒子上で再結合が促進される反応経路が示唆されます(Figure 1)。

Table 1

Figure 1

2つの触媒の組み合わせは、優れた活性を示し、n-ヘプタンとベンゼンの反応において最大でベンゼン転化率21%を達成、種々のアルカンへの適応や混合触媒の再利用も可能であることがわかりました(Figure 2)。

Figure 2

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

本研究のすべてに思い入れがあるといっても過言ではありません。この研究は、指導してくれる先輩や前任者がいない中、指導教員の本倉先生にご指導いただきながら立ち上げました。学部4年の初めての研究室配属の際に前任者や直属の先輩がいないことはとても不安でしたが、今回このように、自分で立ち上げて行ってきた研究の成果を、論文という形で発表できたことは、とても嬉しく思っています。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

この研究の難しかったところは、反応機構の推定および証明です。複数種類の固体触媒の混合系による触媒反応の報告は少なく、本研究で提案する反応機構を着想するまでに長い時間がかかりました。指導教員の本倉先生から、多くのアドバイスをいただき、ディスカッションする中で、上述した反応機構を着想しました。さらに、この反応機構の証明には同等に長い時間を費やしました。様々な実験を行い、完全ではないものの、粒子間の水素移動を実証し反応機構の提案に至りました。今後さらなる検討を行い、より詳細な反応機構の証明を行いたいと考えています。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

将来の具体的なビジョンはまだありませんが、化学と密接に関わり、技術の発展に貢献できるようになりたいです。そのためにも様々なことにチャレンジしていければと思います。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

最後まで御覧いただきありがとうございます。少しでも固体触媒に興味を持っていただければ幸いです。
最後に、指導教員の本倉健先生、眞中雄一先生および研究室の皆様、共同研究にてお世話になりました田旺帝先生、橋本綾子様にこの場をお借りして感謝申し上げます。また、この度スポットライトリサーチにて研究紹介の機会を下さったChem-Stationスタッフの皆様にも深く御礼申し上げます。

研究者の略歴

名前:高畠 萌
所属:東京工業大学 物質理工学院 応用化学系

略歴:
2019年3月 東京工業大学 工学部 化学工学科 卒業
2021年3月 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 修士課程 修了
2021年4月 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程
2021年4月 日本学術振興会特別研究員 DC1

受賞歴:
2019年 「第24回 JPIJS若手研究者のためのポスターセッション」最優秀ポスター賞
2020年「第10回CSJ化学フェスタ 2020」優秀ポスター賞
2021年「第127回触媒討論会」優秀ポスター賞

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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