[スポンサーリンク]

一般的な話題

論文執筆で気をつけたいこと20(2)

[スポンサーリンク]

さて、前記事「論文執筆で気をつけたいこと20(1)」の続きです。後半は日本人がよく間違える動詞の使い方と、その他文章でよく使われる「癖」についてです。

11. 時制の不正確さ

論文を書いている「今」という視点からみた過去と未来。そして、説明している「実験」から見た過去と未来。

日本人が書く論文の時制には、これらの視点がフラフラと変わってしまうために起こる間違いがよく見られます

たとえば、Introduction(はじめに)で、すでに知られていることを書くときには現在形を、その問題に対して行われてきた研究について書くときには現在完了形を、自分がこの論文で行うことについて書くときには現在形を使うのが普通です

こうしたことは、英語を母国語とする人に英文校正してもらえばすぐに直ることですので、時間を惜しまず、必ず見てもらいましょう。

12. be動詞の誤用

「AはBである」の直訳なのでしょうか、下のようなbe動詞の誤用が多く見られます。

日本語からの直訳にならないように気をつけ、最後に、be動詞を使っている文が、それを使わなくても文として成り立つかどうかを確認してください

誤: Oxidation is rapid to occur.
正: Oxidation occurs rapidly.

(Orr & Yamazaki 2004:28)

13. “can” “may” “might” “must”など助動詞の乱用

語調を強めるために使われる“can”や“may”などの助動詞のそれぞれの意味は、皆さんもよくご存知かと思いますが、実際に使うのは案外と難しいものです。

とくに日本人の場合、下の例のような“must”の誤用のほか、“could”の乱用が目立ちます。先ほども述べましたが、動詞は論文の語調を決める大切な部分です。不必要な助動詞の使用は避けてください。

誤: Understanding these process must be important for…
正: Understanding these process is important for…
(Orr & Yamazaki 2004:27)

14. 他動詞における目的語の欠如

他動詞を使う文章には、“We implemented the plan”のように必ず目的語となる名詞が必要となりますが、日本人には、文脈からわかる場合に目的語を省略する傾向があります。

残念ながら、「文脈から察する」のは日本人の十八番ではありますが、目的語のない他動詞は文法的に間違っているだけでなく、他国の読者には理解してもらえないことが多々あります。必ず明記するようにしてください。

15. 受動態の乱用

日本人が英語の論文を書き始めて最初に習うのが、“I”を使わないことと受動態を使うことです。

そのためか、少し英語の論文を書き慣れてくると、逆に、下の例のような受動態の乱用が目につきます。この間違いが増えてきたら、「私も英語で論文を書くのに慣れてきたな」と自分を褒めてあげるとともに、最後に受動態を使っている文章すべてについて、受動態を使うことが適切かどうか、チェックを怠らないようにしてください。

誤: No carbonization was occurred.
正: No carbonization occurred. / No carbonization was observed.

(Orr & Yamazaki 2004:30-31)

16. 長すぎる文

日本人の書く日本語は、英語ネイティブの書く英語と比べると1文の長さが長いことが特徴です。

このため、日本人の書く英文も長くなる傾向にあり、通常短い文を読み慣れた英語ネイティブには、内容の難易度にかかわらず読みにくいものとなっていきます。それに加え、情報が必要以上に満載され、受動態や間接代名詞などが多用され、文の構造が複雑になってくると、文法的には正しくても、普通の読者にはまったく解読不可能となってしまうことがあります。

「1文に1情報」を基本と考え、文が3行以上に及んだら書き直しを考慮しましょう。

17. 取ってつけたような引用文

英語で出版された論文にもっと新しくて関連深いものがあるにもかかわらず、日本語で出版された古い論文を引用する人が目立ちます。

参照論文は、引用したり比較したりすることによって、論文の信憑性を高めるために使うものなので、限られた読者にしか裏付けができない日本語論文の使用は、あまり意味のないことです。

また、世界の研究の流れを把握していないと疑われることもありますので、日本語の論文を参照することはできるだけ避けるようにしましょう。

また引用をする場所が強引で、本文の流れがブツブツ途切れたようになるのも日本人の書く論文の特徴です。ほかの論文がどのようにして先行研究などを引用しているか、いつも気をつけておくことで、引用の仕方を少しずつ身につけてください。

18. 統一感の欠如

引用元の英語の影響かと思われますが、イギリス英語とアメリカ英語が入り交じったり、emailがEmailになったりe-mailになったりするなど、論文全体を通して統一感が欠けてしまうことが多いようです。

括弧の使い方や略語の使用不使用など、最後に検索機能を使って機械的にチェックする癖をつけましょう。

19. 句動詞の誤用

“look up”などのように動詞のあとに前置詞や副詞がつく句動詞の使い方は、案外と難しいものです。

とくに、下の例を見るとわかるように、句動詞の間に名詞が入るもの、入らないものなど、形式がいろいろあるので混乱しがちです。多くの場合、辞書に例文がありますので、慣れるまでは確認しながら使うように心がけてください

誤:look up it; look it into
正:look it up; look into it
(Orr & Yamazaki 2004:30)

20. 連語の誤用

下の例に見られるような連語(決まり文句)は、辞書には載っていないことも多く、論文を書き慣れない人には、なかなか修得しにくい英語の1つです。

他の人の論文を読むときに気をつけておくほか、少しおかしいなと思ったら、インターネットの検索エンジンで、ほかの人がどのような使い方をしているかを、まめに調べる癖をつけましょう。

誤:did an experiment
正:conduct an experiment

出典元:エナゴ学術英語アカデミー

ケムステ内関連記事

関連書籍

[amazonjs asin=”4422810863″ locale=”JP” title=”最新 英語論文によく使う表現 基本編”][amazonjs asin=”4061531530″ locale=”JP” title=”できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)”]%e8%8b%b1%e6%96%87%e6%a0%a1%e6%ad%a3%e3%82%a8%e3%83%8a%e3%82%b4

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 化学でもフェルミ推定
  2. 活性が大幅に向上したアンモニア合成触媒について
  3. 理研の一般公開に参加してみた
  4. 学部4年間の教育を振り返る
  5. ChatGPTが作った記事を添削してみた
  6. 創薬におけるPAINSとしての三環性テトラヒドロキノリン類
  7. マイルの寄付:東北地方太平洋沖地震
  8. IR情報から読み解く大手化学メーカーの比較

注目情報

ピックアップ記事

  1. 蒸発面の傾きで固体膜のできかたが変わる-分散液乾燥による固体膜成長プロセスの新たな法則を発見-
  2. ジムロート転位 (共役 1,3-双極子開環体経由) Dimroth Rearrangement via A Conjugated 1,3-Dipole
  3. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  4. 凸版印刷、有機ELパネル開発
  5. サリドマイドが骨髄腫治療薬として米国で承認
  6. ジェイ・キースリング Jay Keasling
  7. 第七回ケムステVプレミアレクチャー「触媒との『掛け算』で研究者を育て、組織を面白く、強くする」
  8. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartII
  9. 昆虫細胞はなぜ室温で接着するのだろう?
  10. 「オプトジェネティクス」はいかにして開発されたか

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

miHub®で叶える、研究開発現場でのデータ活用と人材育成のヒント

参加申し込みする開催概要多くの化学・素材メーカー様でMI導入が進む一…

医薬品容器・包装材市場について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、医…

X 線回折の基礎知識【原理 · 基礎知識編】

X 線回折 (X-ray diffraction) は、原子の配列に関する情報を得るために使われる分…

有機合成化学協会誌2026年1月号:エナミンの極性転換・2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(MNBA)・細胞内有機化学反応・データ駆動型マルチパラメータスクリーニング・位置選択的重水素化法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年1月号がオンラインで公開されています。…

偶然と観察と探求の成果:中毒解毒剤から窒素酸化物を窒素分子へ変換する分子へ!

第692回のスポットライトリサーチは、同志社大学大学院理工学研究科(小寺・北岸研究室)博士後期課程3…

嬉野温泉で論文執筆缶詰め旅行をしてみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

論文を書かなきゃ!でもせっかくの休暇なのでお出かけしたい! そうだ!人里離れた温泉地で缶詰めして一気…

光の強さで分子集合を巧みに制御!様々な形を持つ非平衡超分子集合体の作り分けを実現

第691回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院 融合理工学府 分子集合体化学研究室(矢貝研究室…

化学系研究職の転職は難しいのか?求人動向と転職を成功させる考え方

化学系研究職の転職の難点は「専門性のニッチさ」と考えられることが多いですが、企業が求めるのは研究プロ…

\課題に対してマイクロ波を試してみたい方へ/オンライン個別相談会

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波”について、今回は、適用を検討してみ…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP