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花王の多彩な研究成果・研究支援が発表

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花王株式会社が開発した、廃PET(廃棄処分されるポリエチレンテレフタレート素材)を原料とするアスファルト改質剤「ニュートラック 5000」が、静岡県磐田市に採用され、2021年3月に市内の道路の改修に使用されました。「ニュートラック 5000」の自治体公道での採用は今回が初めてとなります。(花王ニュースリリース3月22日)

花王株式会社は、「マイクロ化学に基づく動的界面制御による革新的微細乳化技術と実用化」に関し、公益社団法人日本化学会第69回(2020年度)「化学技術賞」を受賞しました。この賞は、日本の化学工業の技術に関して特に顕著な業績が表彰されるもので、今回、花王は3回目の受賞となります。(花王ニュースリリース3月22日)

公益財団法人 花王芸術・科学財団は、2021年度の助成先として、芸術文化活動83件と、花王科学奨励賞10件を決定いたしました。(花王ニュースリリース3月9日)

洗剤やトイレタリー、化粧品で有名な花王からいくつかのプレスリリースが発表されましたので紹介します。

まず廃PETを用いたアスファルト改質剤について、そもそも道路の舗装に使われているアスファルトは石油の残渣であり、原油を常圧蒸留し、その残渣をさらに減圧蒸留して残った残渣です。そのためアスファルトには構造が複雑な炭化水素および、その誘導体が含まれています。アスファルト自体は高温時に流動性を持つ粘性液体であり、道路の舗装では砕石と混合して使用され、車が通っても砕石が飛散しないように砕石の間を埋めて固める役割があります。

このアスファルトにさらに耐久性を上げるために添加剤を加えたものが改質アスファルトであり、SBS(スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマー)などのポリマーを入れたポリマー改質アスファルトが、舗装する道路の特性によっては使われているそうです。このアスファルト改質剤について花王では、廃PETを利用した新しい製品「ニュートラック5000」を開発し、この3月に自治体として初めて静岡県磐田市に採用されました。

ニュートラック 5000を1%添加したアスファルトは、添加なしと比べて舗装の耐久性が約5倍向上し、舗装からの粉塵の発生を80%抑えることが確認されています。また、黒さがより長持ちすることも特長で、白線の視認性が長く続き安全走行へ大きな寄与があるとしています。

PETだけをアスファルトに配合しただけでは、耐久性の向上には寄与せず、PETに花王が配合を新たに開発した添加剤を加えることで融点を下げ、アスファルトに容易に溶解するようになったそうです。廃ペットボトルの含有量ですが、100m2あたり500mlペットボトル1430本相当を再利用するということで、広めの片側一車線の道路であれば10mに対して1430本のペットボトルが使われることになります。花王と磐田市は、改修した道路の経年変化を確認しつつ、市内の道路への「ニュートラック 5000」採用を継続的に進めていく予定だそうです。そしてこの商品を競合のない戦略製品と位置付け、日本だけでなく海外に販路を広げていく予定です。

ペットボトルのリサイクルは、100%廃ペットボトルから新しいペットボトルを作れるようになることが理想ですが、開発途中です。そのため廃ペットボトルを燃やさない活用技術として興味深いと思いました。現在のアスファルトの需要と供給のバランスは不明ですが、将来燃料の需要が減り、原油の精製量が減ると得られるアスファルトも少なくなります。一方道路は自動車の動力の変化と関係なしに経年変化が悪くなるので、メンテナンスの必要性は変わりません。この技術によってより耐久性が高いアスファルトが広く使われるようになれば、アスファルトの使用量も減り、脱石油の方向に沿うことができるかもしれません。

次に、マイクロ化学に基づく動的界面制御による革新的微細乳化技術と実用化という内容で日本化学会の化学技術賞を受賞したニュースに移りますが、化粧品の製造において機能性成分を含む油を水中に微細な粒子として乳化させることが重要です。一般的には、ミセル構造を作るために大量の界面活性剤を入れるか粒子を細かくするために過酷な条件で攪拌して安定的に乳化させる必要があります。そこで花王では、マイクロ化学プロセスを用いることによって、機能性成分を含む油と水の高速混合を可能にし、微細乳化を実現しました。この方法では50%の界面活性剤でかつ従来の10%のエネルギー量で高い機能性を実現できるそうです。

この技術を使って結晶性が非常に高いセラミド機能成分を含む油を微細に乳化し、これまで実現不可能であったスプレー剤型の化粧水にセラミド機能成分を配合することに成功し2020年4月にキュレル ディープモイスチャースプレーを発売しました。これにより保湿成分をスプレーで簡単に全身に塗布することができるようになりました。

本開発では、マイクロ化学プロセスによって水と油の混合時間を短くすることに成功し、数ミリ秒オーダーの間、界面張力が低下する現象を利用しせん断を与えて微細乳化を達成したそうです。また、マイクロ化学プロセスを使っても混合速度が落ちないようにマイクロ化学プロセスを改良し、1時間に2トンの混合で100nmの乳化物が作られるようなプロセスを確立したそうです。

その名の通りスケールを小さくしてメリットが得られるのがマイクロ化学プロセスですので生産効率を上げることは難しく感じられ、マイクロ化学プロセスを新たな工業的プロセスとして実用化できたことは、インパクトが大きいと思います。研究開始から7年、1000回以上の試作を繰り返して製品化にこぎつけることができたということで諦めずに研究を続けた成果の賜物ではないでしょうか。この技術を生かした更なる新製品の開発に期待します。

最後は、花王芸術・科学財団が2021年度の助成先を決定したというニュースです。花王芸術・科学財団は、平成2年10月に花王の100周年を記念して、財団法人 花王芸術文化財団として設立され、平成22年10月に公益認定を受け、公益財団法人となりました。主な活動内容は、美術展覧会や音楽公演といった芸術文化の助成と表面の科学に関する若手研究者・大学院生の支援、花王科学賞の授与で、今回、花王科学奨励賞として化学・物理学分野と医学・生物学分野からそれぞれ5名の研究者が助成を受けることが発表されました。

化学・物理学分野では下記の研究者の方が選ばれました。

対象が表面の科学ということですが、狭義の表面科学だけでなく、分子集合体、ナノマテリアルなどにおける新規な作成法、計測法、新規物性発現、機能創出、デバイス展開など界面と表面の科学に関する研究も対象とされており、今年度の対象研究もいろいろな分野が選ばれているようです。日本では、企業の研究支援が少ないと言われているものの大企業の名前を冠した財団は数多くあり、寄付金や投資有価証券の利益を元に研究活動を助成しています。これは共同研究とは異なり製品開発に直接結びつきませんが、日本での研究の下支えのため、このような助成事業は続けてほしいと思います。

花王のプレスリリースを3件紹介しましたが、一般消費者として見える部分はごく一部で、様々な製品開発やと幅広い活動が行われていることを再認識させられました。環境意識が高まり、化学企業としてもマテリアルのリサイクルや再利用、使用エネルギーの削減をビジネスとして行わなくてはならなくなっています。そんな中でも企業としてできることは、培った固有の技術を生かした応用が主だと思います。そのため、広い視野を持ちながら、自社の技術を生かせる場を探すことが求められているのではないでしょうか。

関連書籍

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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