[スポンサーリンク]

ケムステニュース

メスゴキブリのフェロモン合成、駆除に活用・日米チーム

[スポンサーリンク]

オスのゴキブリを引き付けるメスの性フェロモンを合成することに日米の共同チームが成功した。天然のものと同じようにオスが群がることを確認。メスの「魅力」を利用した効果的な駆除法の開発に役立つという。

成功したのは元コーネル大学博士研究員の野島聡氏(現在は信越化学工業主任技術員)らのチーム。分析方法などを工夫し、チャバネゴキブリのメス1万5000匹から約5マイクロ(マイクロは100万分の1)グラムの性フェロモンを採取。これを基にフェロモンの構造を解明、人工的に合成した。(引用:日本経済新聞)

 

ブラテラキノンと命名したそうです。サイエンスに論文が報告されていました。(S. Nojima et al, Science, 2005, 307, 1104.)非常に単純な構造ですね。といっても最近の生物活性を有する天然物の単離、構造決定もそうですが5μgで構造を決定できるようになったのはすばらしいことです。GC-EAD、EI-MSと600HzのNMRで決定したそうです。

 

合成は簡単。 2,5ジメトキシベンジルアルコールとイソバレルクロリドを縮合し、CANで酸化するだけです。こんな簡単に作れるなんて。脅威です<emoji:feel_down> しばらくキノン系の化合物を見るとゴキブリを思い出しそうです。(苦笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなフェロモン見つけてもしょうがないじゃないか!という人もいるかもしれませんが、結構役に立つんです。ゴキブリが寄ってくるということはそこに集めることができるんですね。ですから集めて一斉に駆除することができる。優れものですね。しかし、今までいなかったのにゴキブリが集まってきてしまうという難点もあるのだろうか・・・?

 

関連書籍

 


生物活性物質の化学―有機合成の考え方を学ぶ

 

低分子量の生物活性物質、とくにホルモンとフェロモンについて、合成を中心に平易に解説。実験的な事柄を含めて生物活性物質の合成化学を解説するとともに、化学者の生き方についてもふれた、化学系の大学生のための副読本。

「高速道路を一路西に向かって走る。もうこの道を通ることもないだろう。お気に入りのCDからはサザンの曲が流れている。突然、感極まり涙がとめどなく流れてきた。3年にわたる辛くも楽しかったアメリカでの研究生活を終えて、明日ついに帰国する。最後の最後で、長年研究者の挑戦を退けつづけていた研究をやり遂げた達成感、複雑な思いが心の中で絡み合い交錯していた。私はかまわず涙を流し続けた。」(野島聡、化学2005年8月号P30 [チャバネゴキブリ雌性フェロモンの解明]から引用)

化学に載っていた、ブラッテラキノンを単離した野島さんの記事です。非常に感極まるものがありましたので引用させていただきました。このとき著者は次の研究ポストがなく、最後の研究であったということです。(現在はこの研究がもとで研究者の道を続けています。)研究の厳しさ、それ以上に達成するまで達成したときの臨場感が伝わってくる記事でした。ぜひみなさんも読んでみて下さい。特に研究者を目指す方にはおすすめです。(2005年7月20日追記)

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 化学 2005年7月号
  2. 2009アジアサイエンスキャンプ・参加者募集中!
  3. 米ファイザー、感染予防薬のバイキュロンを買収
  4. 2008年10大化学ニュース
  5. カチオン中間体の反応に新展開をもたらす新規フロー反応装置の開発
  6. ニセクロハツの強毒原因物質を解明 “謎の毒キノコ&#…
  7. 小学2年生が危険物取扱者甲種に合格!
  8. 化学企業のグローバル・トップ50

注目情報

ピックアップ記事

  1. 丸岡 啓二 Keiji Maruoka
  2. 海外で働いている僕の体験談
  3. 開催間近!ケムステも出るサイエンスアゴラ2013
  4. バイオ触媒によるトリフルオロメチルシクロプロパンの不斉合成
  5. フロー法で医薬品を精密合成
  6. ゲノム編集CRISPRに新たな進歩!トランスポゾンを用いた遺伝子導入
  7. 手術中にガン組織を見分ける標識試薬
  8. 高専シンポジウム in KOBE に参加しました –その 2: 牛の尿で発電!? 卵殻膜を用いた燃料電池–
  9. 槌田龍太郎 Ryutaro Tsuchida
  10. 量子アルゴリズム国際ハッカソンQPARC Challengeで、で京都大学の学生チームが優勝!!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2005年2月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  

注目情報

最新記事

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

細谷 昌弘 Masahiro HOSOYA

細谷 昌弘(ほそや まさひろ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の創薬科学者である。塩野義製薬株式…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP