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化学書籍レビュー

誰も教えてくれなかった 実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)

概要

悪い例とよい例を比較しながら,実験ノートを具体的にどう書けばよいのかを懇切丁寧に説明する.書き方だけでなく,なぜ実験ノートが必要なのか,研究不正に関わらないために実験ノートが欠かせないこと,実験ノートを書くことが自分を成長させてくれることといった,実験ノートの意義と大切さについても力を込めて訴える.これから実験ノートを書こうとする人がまず最初に読みたい必読書である.

 (引用:書籍紹介のページより)

対象

  • 卒業研究を行うために研究室に配属になったばかりの大学生
  • 後輩の指導をする大学院生
  • 研究を指導する教員
  • 研究を成功させたいすべての人

はじめに

多くの場合、実験ノートの書き方については、学生実験の時間や研究室に配属された直後に、どんな形であれ教わるのではないかと思います。しかし、はじめのうちは丁寧にノートを取っていても、同じような実験を繰り返すような場合には、自己流の書き方を「開発」してしまったり、どんどん手を動かすうちに、ノートを書くのを後回しにしてしまったりします。そして、いざ後輩の指導をするときに、「これが実験ノートの書き方だ!」と自信を持って自分のノートを見せられないわけです。というわけで、自分自身の実験ノートの書き方が正しいかどうかを確認するために、「誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)」を読んだので、レビューします。

本書の構成

本書の、おおまかな構成は以下の通りです。

1 章 正しい実験ノートとはどんなノートか?

2 章 実験ノートは何のために書くのか?

3 章 実験ノートのお約束

4 章 実験を始める前に書いておくこと

5 章 実験を進めながら書くこと

6 章 実験が終わってから書けること

7 章 実験ノートを書くことであなたは成長する

各章には、そのタイトル通りのことが書かれています。そして、章、節、項という階層がはっきりとしているため、今読んでいるパートに何が書いてあるかが理解しやすく、大変読みやすい構成でした。本の大きさも A5 サイズで 100 ページ程度とコンパクトなこともあり、2 時間もかからずに読み切ることができました。

「実験ノートの書き方」の読み方を徹底解剖!

「大変読みやすい構成でした」と言われてもイメージが湧かないと思います。百聞は一見にしかず、ということで本書の中身を徹底的に解剖します。

図は本書から抜粋.

おおよそ 1 つの見開きで 1 つの節が完結しています。この例は「4 章 実験を始める前に書いておくこと」の中の 「4-4 節 チェックリストやデータ記入テーブルを作っておきましょう」から抜粋したものです。では、各構成要素についてそれぞれコメントします。

タイトルだけ読めば復習可能

ページの左上に書かれた節のタイトルを読んだだけで、何が書いてあるかを把握できます。例えば、この見開きの中には「実験を始める前に、チェックリストやデータ記入テーブルを作りましょう」ということが書かれていました (おや、タイトルを繰り返しただけだ)。一通り本書を読んだ後に、目次を読んで節のタイトルを眺めると、本書に紹介されているテクニックが総復習できるはずです。しかし、節のタイトルを見ただけで知っている情報と決めつけて、本文を読み飛ばしてはいけません。後に説明しますが、本文を読むことでそのノート術の意味を学ぶことができます。

記憶に残るイラスト要約

節のタイトルの下にはイラストが挿入されています。どのようなイラストかというと、実際のノートの良い例と悪い例の比較や、その節に関連した状況を切り取った一コマ漫画などです。ノートの実例は、具体的にどのように記入すれば良いかを丁寧にまとめてあり、実践するときのイメージを掴みやすくなります。また、一コマ漫画というのは、例えば下の図のようなものです。印象的なイラストで、本書を読み終わって時間が経った後でもその図が妙に頭に残ります。「あのイラストのところに、あんなことが書いていた」というように、本書の内容を思い出すのにうってつけです。

記憶に残るイラスト.(図は本書から引用)

「実験ノートに対する考え方」がよく分かる

各節にはおおよそ 5 から 10 行程度からなる項が 3 から 4 つ程度設けられています。そして、それぞれの項にもタイトルが割り振ってあり、具体的なテクニックを一言で要約されています。その後に本文が続きますが、その本文中には、そのテクニックにどんな意図があるのか、逆にそれを怠った場合にどういった事態を招くかなどが詳しく書かれています。ただし、「実験ノートの書き方」の解説というよりは、「実験ノートに対する考え方」についての説明に近いです。したがって、この本全体の論調は、「この通り書きなさい!」というような決して説教がましいものではありません。そのため、「そのように書くのが望ましいことは頭でわかっているけど、めんどくさい」と思っている人も、本書を読めば「これからはきちんとノートを書こう」と改心すること間違いなしです。

タメになる脚注

最後に、本書の脚注について紹介します。この本には、多くのページに脚注が添えられており、他の章とのリンク、著者の個人的なエピソード、あるいは実験ノートにまつわる小ネタなどが掲載されています。例えば著者のエピソードには、紹介しているノート術が予想外な場面で役立った実例が紹介されており、本文に劣らないくらいタメになる情報を学ぶことができます。一方、実験ノートにまつわる小ネタの一例を紹介すると、

ちなみに筆者にサーフィン経験はありません···

のような、一見研究とは関係の無いことも書かれています。これが何を意味するかを知りたいという方は、本書を読んでいただきたいと思います。

本書を読み終えて、自分自身の振り返り

本書を読み終えて、これまでの自分がどれくらい実践できていたかを振り返って見ました。この本に紹介されていたノート術を分類してみると、おおよそ次のようになりました。

知っていた 実践中 5 割くらい
サボっていた 3 割くらい
知らなかった 2 割くらい

つまり、ほとんどは知っているノート術でした。しかし、恥ずかしながら、いつも実践できているわけではないものもありました。そのような例は、「6 章 実験が終わってから書けること」に多かったです。一方、知らなかった情報は、電子データの扱い方などでした。特に画像データの正しい扱い方については、研究不正にまきこまれないためには必須の項目だと思いますが、私は学生実験の時間などに教わる機会がなかったので、勉強になりました。

結論: タイトル通りの書籍でした

ところで、本書に紹介されている「実験ノートの書き方」について、元々知っているものの割合が高かったということは、本書には、目からウロコな秘伝の裏技が収録されているわけではないことを意味しています。これを聞くと、

「誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方」という本書のタイトルは不適切では?

と思う人もいるかもしれません。しかし、私はそうは思いませんでした。なぜなら、この本は「実験ノートに対する考え方」がふんだんに解説されており、こんなふうに実験ノートについて教わる機会はなかったからです。私自身に起こった変化としては、本書を読んで以来ノートを頻繁に見返すようになりました。つまり、単なる「実験結果記録帳」ではなく「研究日誌」として、なにかをノートに記入する頻度が高まったので、ノートを見返す価値が上がりました。本書の副題として、「研究を成功させるための秘訣」とありますが、まさに実験ノートを正しく利用することが研究を成功させるために重要であることを再確認できる書籍でした。

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