[スポンサーリンク]

分析化学

【書籍】電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論

[スポンサーリンク]

(↓kindle版)

概要

インピーダンス測定の結果をいかに解釈すべきか.その理論をフーリエ変換やラプラス変換などの難しい数学を避け,数式で丁寧に説明した.式のもつ意味が,手に取るようにわかる好著.本書を読めば,電気化学現象とインピーダンス測定を結びつけることができる.

(引用;化学同人書籍紹介より)

題目の通り、電気化学・表面化学・分析化学分野で頻出する電気化学インピーダンス測定の原理にフォーカスした教科書です。

対象者

これから電気化学インピーダンス測定を取り入れた研究を行う初学者向けに書かれていますが、高度な内容も含むことから熟練の研究者も手に取るであろう一冊に仕上がっています。

目次

記号の説明

0.測定・解析の全体像

1.基礎となる数学・物理

2.電気化学インピーダンスの概要

3.ファラデーインピーダンス

4.電気化学反応

5.拡散方程式

6.被覆率が変化する吸着種がある場合のファラデーインピーダンス

7.電気二重層容量

8.「平滑な平板電極」でない場合の取扱い

9.溶液抵抗

10. 伝送線モデル(その1)

11.伝送線モデル(その2)

内容

実際の測定がどのようにして行われ、どのような測定が得られ、それをいかに解釈するかから初心者にもわかりやすいように説明されています。物理や数学のバックグラウンドを持たない読者でも混乱しないよう、交流回路におけるインピーダンスの定義からオイラーの公式を用いた三角関数の複素指数関数への拡張、さらには回路図の簡略化に欠かせないΔ-Y変換についても1から説明がなされています。

本論においては、インピーダンスの要となるファラデーインピーダンスの内訳、Butler-Volmer式の線形領域とTafel領域における詳細な考察、拡散や吸着の考え方とその寄与など、極めて実践的な内容となっています。

感想

この手の分野はどうしても難解な数式のオンパレードとなり、筆者のような初学者は面食らってしまいがちです。しかし、本書は数学的・物理的な厳密性を担保しながらもなるべく難解さを排し、式変形や論理を省略することなく淡々と議論しているため大変読みやすかったです。特に、各章の末尾にAppendixと題して関連する公式等の導出が掲載されており、非常に役立ちました。

高校卒業以来物理に深く触れていないであろう多くの化学者にとって難解な分野であることに異論の余地はないと思われますが、極力平易にかみ砕き、懇切丁寧な説明を心がけようとした著者の方々の熱意が伝わってくる良書でした。

最後に

書籍の読み方は十人十色かと思いますが、専門分野によっては、無理に全項目を通しで理解するよりも、要点だけかいつまんで押さえておき、あとは論文等で不明点に差し掛かった時に辞書的に読むような使い方でもいいのではないかと感じました。

修正

化学同人HPに正誤表があります

関連書籍

gaming voltammetry

berg

投稿者の記事一覧

化学メーカー勤務。学生時代は有機をかじってました⌬
電気化学、表面処理、エレクトロニクスなど、勉強しながら執筆していく予定です

関連記事

  1. 【著者インタビュー動画あり!】有機化学1000本ノック スペクト…
  2. 最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~
  3. Semiconductor Photocatalysis: Pr…
  4. 活性酸素・フリーラジカルの科学: 計測技術の新展開と広がる応用
  5. ベーシック反応工学
  6. 【書籍】理系のための口頭発表術
  7. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ
  8. 【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. Lindau Nobel Laureate Meeting 動画集のご紹介
  2. なぜあの研究室の成果は一流誌ばかりに掲載されるのか【考察】
  3. 原子状炭素等価体を利用してα,β-不飽和アミドに一炭素挿入する新反応
  4. 第27回 「有機化学と光化学で人工光合成に挑戦」今堀 博 教授
  5. エーテル分子はすみっこがお好き?-電場・磁場・光でナノ空間における二元系溶媒の不均一化を知る-
  6. 浅野・県立大教授が化学技術賞
  7. edXで京都大学の無料講義配信が始まる!
  8. ヤクルト、大腸の抗がん剤「エルブラット」発売
  9. ハロゲン原子の受け渡しを加速!!新規ホウ素触媒による触媒的ハロゲンダンス
  10. シュライバー・アトキンス 無機化学 (上)・(下) 第 6 版

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP