[スポンサーリンク]

分析化学

【書籍】電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759819916″ locale=”JP” title=”電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論”]

(↓kindle版)

[amazonjs asin=”B07ZV47C9R” locale=”JP” title=”電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論”]

概要

インピーダンス測定の結果をいかに解釈すべきか.その理論をフーリエ変換やラプラス変換などの難しい数学を避け,数式で丁寧に説明した.式のもつ意味が,手に取るようにわかる好著.本書を読めば,電気化学現象とインピーダンス測定を結びつけることができる.

(引用;化学同人書籍紹介より)

題目の通り、電気化学・表面化学・分析化学分野で頻出する電気化学インピーダンス測定の原理にフォーカスした教科書です。

対象者

これから電気化学インピーダンス測定を取り入れた研究を行う初学者向けに書かれていますが、高度な内容も含むことから熟練の研究者も手に取るであろう一冊に仕上がっています。

目次

記号の説明

0.測定・解析の全体像

1.基礎となる数学・物理

2.電気化学インピーダンスの概要

3.ファラデーインピーダンス

4.電気化学反応

5.拡散方程式

6.被覆率が変化する吸着種がある場合のファラデーインピーダンス

7.電気二重層容量

8.「平滑な平板電極」でない場合の取扱い

9.溶液抵抗

10. 伝送線モデル(その1)

11.伝送線モデル(その2)

内容

実際の測定がどのようにして行われ、どのような測定が得られ、それをいかに解釈するかから初心者にもわかりやすいように説明されています。物理や数学のバックグラウンドを持たない読者でも混乱しないよう、交流回路におけるインピーダンスの定義からオイラーの公式を用いた三角関数の複素指数関数への拡張、さらには回路図の簡略化に欠かせないΔ-Y変換についても1から説明がなされています。

本論においては、インピーダンスの要となるファラデーインピーダンスの内訳、Butler-Volmer式の線形領域とTafel領域における詳細な考察、拡散や吸着の考え方とその寄与など、極めて実践的な内容となっています。

感想

この手の分野はどうしても難解な数式のオンパレードとなり、筆者のような初学者は面食らってしまいがちです。しかし、本書は数学的・物理的な厳密性を担保しながらもなるべく難解さを排し、式変形や論理を省略することなく淡々と議論しているため大変読みやすかったです。特に、各章の末尾にAppendixと題して関連する公式等の導出が掲載されており、非常に役立ちました。

高校卒業以来物理に深く触れていないであろう多くの化学者にとって難解な分野であることに異論の余地はないと思われますが、極力平易にかみ砕き、懇切丁寧な説明を心がけようとした著者の方々の熱意が伝わってくる良書でした。

最後に

書籍の読み方は十人十色かと思いますが、専門分野によっては、無理に全項目を通しで理解するよりも、要点だけかいつまんで押さえておき、あとは論文等で不明点に差し掛かった時に辞書的に読むような使い方でもいいのではないかと感じました。

修正

化学同人HPに正誤表があります

関連書籍

[amazonjs asin=”4621080008″ locale=”JP” title=”電気化学インピーダンス法 原理・測定・解析”] [amazonjs asin=”4621083635″ locale=”JP” title=”電気化学インピーダンス法 第二版 原理・測定・解析”]
gaming voltammetry

berg

投稿者の記事一覧

化学メーカー勤務。学生時代は有機をかじってました⌬
電気化学、表面処理、エレクトロニクスなど、勉強しながら執筆していく予定です

関連記事

  1. 天然物の全合成―2000~2008
  2. 初歩から学ぶ無機化学
  3. フタロシアニン-化学と機能-
  4. 【書籍】文系でも3時間でわかる 超有機化学入門: 研究者120年…
  5. 【書籍】機器分析ハンドブック3 固体・表面分析編
  6. 【書評】スキルアップ有機化学 しっかり身につく基礎の基礎
  7. 先制医療 -実現のための医学研究-
  8. 理系のためのフリーソフト Ver2.0

注目情報

ピックアップ記事

  1. この輪っか状の分子パないの!
  2. Zachary Hudson教授の講演を聴講してみた
  3. 第15回 有機合成化学者からNature誌編集者へ − Andrew Mitchinson博士
  4. ナノ孔に吸い込まれていく分子の様子をスナップショット撮影!
  5. 硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築
  6. 還元された酸化グラフェン(その1)
  7. 世界で初めて一重項分裂光反応の静水圧制御を達成
  8. 特許取得のための手続き
  9. ピーターソンオレフィン化 Peterson Olefination
  10. 日本薬学会第138年会 付設展示会ケムステキャンペーン

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー