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国際化学オリンピック、日本の高校生4名「銀」獲得

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文部科学省は2020年7月31日、オンラインで開催された「第52回国際化学オリンピック」に参加した高校生4名が、全員銀メダルを獲得したことを「夢・化学-21」委員会、日本化学会と共同で発表した。この成績を踏まえ、4名に文部科学大臣表彰を授与した。 (引用:リセマム7月31日) ベトナム代表として出場した高校生4人全員が金メダルを獲得した。国別では参加60か国・地域のうち米国に次ぐ2位という、ベトナムとして過去最高位の好成績を収めた。(引用:VIETJO8月4日)

スポーツのオリンピックは一年延期となりましたが、化学オリンピックオンラインで実施されました。

世界の高校生が一堂に会し、化学の実力を競うと同時に親交を深めるのが目的として1968年から始まった化学オリンピックは今年で52回目となります。当初、トルコのイスタンブールで開かれる予定でしたが新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインにより開催され、60か国・地域から235名の生徒が参加しました。2019年大会では、80か国・地域から309名の生徒が参加していましたので、コロナウィルスの影響とオンライン開催への対応によって参加人数が減少したと考えられます。通常は、実験課題と理論問題に取り組みますが、オンラインでの実施ということで理論問題のみで行われたようです。日本からは、麻布高等学校3年の相哲人さんと久留米大学附設高等学校3年の柴山礼寛さん、南山高等・中学校女子部2年の林璃菜子さん、灘高等学校2年の吉田悠真さんが参加し、4名全員が銀メダルを獲得しました。おめでとうございます!

高校生が取り組んだ試験は、下記のような9つの問題で構成されています。

  1. Nepetalactoneの合成と反応の構造式の穴埋め
  2. 有機合成の反応物推定
  3. クライゼン転位を含む全合成の穴埋め
  4. ウッドワード・ホフマン則による構造推定
  5. β-caroteneを題材にした量子化学
  6. 反応熱の計算
  7. Phthalocyaninesの構造
  8. ホウ素化合物の反応と構造
  9. 電気化学

ざっと問題を眺めてみましたが、有機化学、無機化学、物理化学からまんべんなく出題されていて、問題の中身は、まさに大学院の入試かと思ったほどでした。構造式の推定については、学部4年生にとっては典型的な反応が多く、反応について知っていれば反応物を推定するのは難しくないと思いますが、高校生にとっては、電子の移動についても学習していないわけでありかなりチャレンジな問題だと言えます。大会に参加した高校生の方々は、準備問題を解く中で反応の知識を身についていったと想像できます。

主題された問題

出題されている問題の中には開催国トルコに関する問題が所々にあり、例えば、8番のホウ素化合物については、問題の冒頭でトルコがホウ砂の算出において世界の73%を占めていることが書かれています。単純に問題を解くだけでなく、問題を通して開催国について知ることができるのが、この化学オリンピックのユニークな点かもしれません。

この大会において活躍した国の一つにベトナムが挙げられ、参加した4人全員が金メダルを獲得し、国の成績としては米国に次ぐ2位という、ベトナムとして過去最高位の好成績を収めたそうです。アジアからの参加国では、ベトナムに加えて韓国、中国、台湾、シンガポールの参加者が多く金メダルを獲得しているだけでなく、フィリピン、インドネシア、タイの参加者も銀メダルや銅メダルを獲得していて、アジアの参加者全体で上位に食い込んでいます。参加者された高校生の方々は、大学やその先のキャリアにおいて活躍が期待され、世界の科学技術の発展に貢献してほしいと思います。

各国のメダル取得数

来年の化学オリンピックに関して、日本での予選に当たる化学グランプリ2020は、9月中受付、10月25日にWEBでのリモート試験を行うと発表されています。来年の化学オリンピックは、日本開催ということでスポーツのオリンピックと同国開催となりました。コロナウィルスの影響で開催の見通しは立っていませんが、オンラインではなく、日本に各国の参加者が集まって実施できることを願います。

 関連書籍

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関連リンクと化学オリンピックに関するケムステ過去記事

 

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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