[スポンサーリンク]

ケムステニュース

武田薬、糖尿病治療剤「アクトス」の効能を追加申請

[スポンサーリンク]

武田薬品工業<4502.T>は27日、糖尿病治療剤「アクトス」について、「インスリン製剤との併用」の効能の追加申請を行ったと発表した。

アクトスは、インスリン抵抗性を改善する薬剤。武田薬では「インスリンと併用することで、2型糖尿病患者の血糖コントロールだけでなく、インスリン使用量の低減も期待できる」としている(引用:朝日新聞)。

 

糖尿病の薬といえば、皮下注射によって血糖値を下げるものがよくみられますが、アクトスは経口血糖降下薬、つまり飲み薬です。この経口血糖降下薬にも構造や効能によって様々なものがあります。

 

1. スルホニル尿素剤

glibenclamide.gif

?名前のとおりスルホニル基と尿素(ウレア)部位を含む薬です。代表的なものは比較的効き目が強いグリベンクラミド。オイグルコン、ダオニールなどという医薬品名で発売されています。青い部分がスルホニル基、赤い部分がウレアです。膵臓からのインスリンの分泌を促し、血糖値を下げます。

 

2. ビグアナイド剤

Buformin_hydrochloride.gif

これもビグアナイドという名前のとおり、ビグアニド部位(赤い部分)を有する薬です。ここに示しているのはブホルミンという薬で、他にはメトホルミンという薬があります。基本的にスルホニル尿素剤と一緒に処方されるときが多いですが、単独でも使用します。肝臓でのブドウ糖合成抑制効果があります。

 

3. αーグルコシダーゼ阻害薬

Voglibose.gif

上記の二つとも全く作用機序が異なり、食事中の糖質の消化や分解を遅らせる(つまりαーグルコシダーゼという酵素を阻害する)ことによって、食後血糖の上昇を抑制する薬です。図のボグリボースのほかにアカルボースが知られています。

 

4.インスリン抵抗性改善剤

 

?これが、今回のアクトスです。アクトスは年間3000億円以上の売り上げがある武田薬品工業の主力商品です。

と、以上4種類の糖尿病治療薬をあげましたが、現在、GLP-lアナログ製剤、DPP-IV阻害薬という新たな作用機序の糖尿病薬の開発に製薬会社はしのぎをけずっています。しかし、これらの薬剤、少しでもインスリンを分泌する力が残っている2型と呼ばれる糖尿病にしか効かず、残念ながら全くインスリンを分泌しない人には効果がないのです。1型糖尿病に利く薬は今のところ日本ではインスリンしかありません。しかし、現在米国ではインスリン以来およそ80年ぶりとなるSymlin (成分名: pramlintide) が承認されています。これが1型糖尿病の新しい治療薬となるのでしょうか?

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4521733786″ locale=”JP” title=”糖尿病治療薬の最前線 (ヴィジュアル糖尿病臨床のすべて)”]

 

関連リンク

糖尿病ホームページへようこそ 糖尿病を簡単に解説

Symlin, a diabetes treatment to help control blood sugar highs and lowsSymlinに関する情報

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 化学系プレプリントサーバ「ChemRxiv」の設立が決定
  2. 吉岡里帆さんが出演する企業ブランド広告の特設サイト「DIC岡里帆…
  3. 武田薬品工業、米バイオベンチャー買収へ 280億円で
  4. 化学五輪、「金」の高3連続出場 7月に東京開催
  5. 一家に1枚周期表を 理科離れ防止狙い文科省
  6. 酸素ボンベ爆発、男性死亡 
  7. 『分子標的』に期待
  8. DIC岡里帆の新作CMが公開

注目情報

ピックアップ記事

  1. 大阪・池田 リチウム電池の実験中に爆発事故
  2. 未来の車は燃料電池車でも電気自動車でもなくアンモニア車に?
  3. エチオ・リザード Ezio Rizzardo
  4. 【十全化学】新卒採用情報
  5. 松村 保広 Yasuhiro Matsumura
  6. 若手研究者vsノーベル賞受賞者 【基礎編】
  7. カルベン転移反応 ~フラスコ内での反応を生体内へ~
  8. ヘンリー反応 (ニトロアルドール反応) Henry Reaction (Nitroaldol Reaction)
  9. ラリー・オーヴァーマン Larry E. Overman
  10. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授

第XX回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授

第69回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授

第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成

シクロプロパン環をもつインドールアルカロイド(–)-rauvomine Bの初の全合成が達成された。…

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」を開催します!

続けてのケムステVシンポの会告です! 本記事は、第52回ケムステVシンポジウムの開催告知です!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP