[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ゴム状硫黄は何色?

[スポンサーリンク]

高校化学の教科書に掲載されていた「ゴム状硫黄」の色が間違っていた。山形県の鶴岡高専物質工学科3年の高橋研一さん(17)が気づき、実験で確かめた。指導教員が訂正を申し入れ、出版社側も間違いを確認。教科書の修正につながった。高橋さんは「自分の実験で教科書の記述が変わるなんて予想外。びっくりしている」と話す。(引用,写真出典:朝日新聞)

実際は「黄色」であるとのこと。純度の低さが間違った答えを導きだしていたという事実を高校生が明らかにしました。


高校化学で習う、3種類の硫黄同素体である斜方硫黄 、単斜硫黄 、ゴム状硫黄。その色は下の図のようであるとされていました。つまりゴム状硫黄はいままで、見ての通り黒褐色、褐色、濃褐色などとされてきたわけです。

 

image002.gifimage004.jpgimage006.jpg
斜方硫黄          単斜硫黄        ゴム状硫黄
(写真出典:愛知エースネット

 

ところが高橋君は指導教員の金綱教授より、昔、ゴム状硫黄が黄色で得られたことがあったということを聞き、黄色のゴム状硫黄を得てみたくなり、実験を試みました。

実際行ってみると市販の純度99%の硫黄華では教科書通り褐色のゴム状硫黄が得られたわけですが、純度が99.5%のものを使うとトップの図のようなきれいな黄色のゴム状硫黄が得られたのです。

大学入試でも”褐色”が正解とされていたようで、びっくりしますね。こんなことも意外にあるものです。わかってみると一見単純な真実であることにいつも驚かされます。元々そうであるということを覆すことが研究であると思いますが、当然のごとく紹介されていると信じ込んでしまうときが往々にしてあります。

どこかで書いたかもしれないですが、昔、ある化合物の旋光度測定をしていたときに、ー20と得られたわけですが、日本の超有名教授が逆の符号で+10、海外のノーベル化学賞級教授がー10と報告されていました。どちらかが間違っていることは明らかですが、符号、値ともに異なるので、化合物を様々な角度から同定、完全な純度での再測定を余儀なくされました。最終的に、得られた値は同じようにー20であったので、そのまま一言加えて報告したものの、間違っていたら業界から消される(笑)!と少しドキドキものでした。

化学が面白いと感じさせるほのぼのとしたニュースでした。

 

外部リンク

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 三井化学、触媒科学賞の受賞者を決定
  2. 水素水業界、国民生活センターと全面対決 「断じて納得できません」…
  3. 国際化学オリンピック2023が開催:代表チームへの特別インタビュ…
  4. タンチョウ:殺虫剤フェンチオンで中毒死増加
  5. 製薬各社 2010年度決算
  6. ノーベル化学賞受賞者が講演 3月1日、徳島文理大学
  7. 論文のチラ見ができる!DeepDyve新サービス開始
  8. 日本化学界の英文誌 科学分野 ウェッブ公開の世界最速実現

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン:N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine
  2. 医薬品天然物化学 (Medicinal Natural Products: A Biosynthetic Approach)
  3. 機械学習は、論文の流行をとらえているだけかもしれない:鈴木ー宮浦カップリングでのケーススタディ
  4. イライアス・コーリー E. J. Corey
  5. 「進化分子工学によってウイルス起源を再現する」ETH Zurichより
  6. スーパーなパーティクル ースーパーパーティクルー
  7. ルーブ・ゴールドバーグ反応 その2
  8. 【追悼企画】不斉酸化反応のフロンティアー香月 勗
  9. (S,S)-DACH-phenyl Trost ligand
  10. シロアリに強い基礎用断熱材が登場

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP