[スポンサーリンク]

ケムステしごと

製薬会社5年後の行方

[スポンサーリンク]

5月に入り日本の製薬業界会社が2010年3月期の決算発表と同時に2010年?2015年の計画もしくは2013年までの中期計画を発表しています。ここからの5年間、いや3年間は主力製品の特許切れにより日本の製薬企業にとっても転換が迫られる時期であることは各所で話題になっていることと思います(図:Sankeibizより)。


しかし、特許切れって具体的にどのくらいやばいのか?あまり考えたことがないかもしれません。例えば例をあげてみますとファイザーの高脂血症治療薬「ノルバスク」。2006年度の売上では5500億円を超えていました(世界医薬品売上ランキング5位)が、米国で2007年の3月に特許が切れ、2007年度の売上は3800億円(同23位)、2008年度では2835億円(同36位)となっています。意外と売上保っているじゃん(それでも約50%減)と感じるかもしれませんが、それは国によって特許切れの時期が若干異なることと、様々な手段を講じて実質的な特許の延長を試みているためで、実は本国米国では97%も売上が落ちているそうです。そういうわけではじめの特許切れ後、5年もすれば売上は実質20~30%前後になってしまうと考えた方がよいかもしれません

武田薬品工業の場合

d8c68d00.jpg

 上記の表をみてわかるように既に特許切れを迎えたタケプロン(ランソプラゾール)を含む3つの主力製品が2012年までに特許切れ。これらは現在の売上のおよそ過半数を占めています。そういうわけで、中期計画では一言でいうと減収、そして

5年後に現在の水準に戻す。

とのこと。いやはや恐ろしい。

アステラス製薬、第一三共の場合

武田に比べると大きな痛手はないようにみえますが、すでに特許切れの影響を受けているといった方がよいかもしれません。アステラスは免疫抑制剤プログラフ(タクロリムス)、これは国内開発された唯一の免疫抑制剤であり、産学問わず非常に有名な医薬品薬です。ちなみに日本でも今年特許切れを迎えます。第一三共は数年前のメバロチンに加えて、旧第一製薬の主力製品クラビットが今年で特許切れ。これも売上以上の痛手がある医薬品です。

エーザイの場合

452051fc.jpg

武田に匹敵するほど深刻です。アルツハイマー治療薬アリセプト(ドネペジル)がもうすぐ特許切れ。名実共にエーザイの快進撃を支えてきた医薬品です。パリエットとアリセプト。この2つだけで売上の過半数を超えており、完全にこの数年間はたった2つの医薬品に依存し、牽引されてきた状態です。

もちろん新しい医薬品も控えており、大型医薬品の特許切れのせいで潰れることはほぼないと思います。しかしこの3~5年間は製薬業界にとって武田薬品工業が発表しているように「売上を現在の水準へ戻すための期間」となりそうです。

関連リンク

 関連書籍

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 夏本番なのに「冷たい炭酸」危機?液炭・ドライアイスの需給不安膨ら…
  2. EU、玩具へのフタル酸エステル類の使用禁止
  3. 最少の実験回数で高い予測精度を与える汎用的AI技術を開発 ~材料…
  4. 旭硝子が新中期計画、液晶・PDPガラス基板事業に注力
  5. 武田や第一三共など大手医薬、特許切れ主力薬を「延命」
  6. BASFとはどんな会社?-1
  7. 米メルク、業績低迷長期化へ
  8. 中外製薬が工場を集約へ 宇都宮など2カ所に

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジンチョウゲ科アオガンピ属植物からの抗HIV活性ジテルペノイドの発見
  2. 材料開発の変革をリードするスタートアップのプロダクト開発ポジションとは?
  3. 研究費総額100万円!2050年のミライをつくる若手研究者を募集します【academist】
  4. 核酸塩基は4つだけではない
  5. 大学院生のつぶやき:UCEEネット、ご存知ですか?
  6. ユーコミン酸 (eucomic acid)
  7. MIDAボロネートを活用した(-)-ペリジニンの全合成
  8. Happy Friday?
  9. 呉羽化学に課徴金2億6000万円・価格カルテルで公取委
  10. COVID-19状況下での化学教育について Journal of Chemical Education 特集号

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP