[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第53回「すべての化学・工学データを知識に変える」金子弘昌准教授

[スポンサーリンク]

第53回の研究者のインタビューは、明治大学の金子弘昌 准教授にお願いしました!

ご専門はケモインフォマティクス, マテリアルズインフォマティクス, プロセスインフォマティクスなどということで、化学構造から材料情報、産業プラントの設計・管理といった幅広い化学・化学工学のデータを機械学習を用いて研究されています。

また、ケモインフォマティクス, マテリアルズインフォマティクス, プロセスインフォマティクスに関するブログ(リンク)も多数執筆されており、筆者も拝読して勉強しております。

金子先生には第25回のケムステVシンポにご登壇いただけることになり、またとない機会ですのでインタビューもお願いしました。では、今回の金子先生のインタビューをお楽しみください。

Q1. あなたが化学者になった理由は?

特に誇れるような明確な理由があったわけではなく、好きかつ得意なことをしていたら、なりゆきで今の立場になった感じです。もともと高校生の頃は、化学よりも数学の方が得意でして、将来は数学関係の仕事をしたい、また教師に憧れがあったことから高校教師になりたいと考えていました。でも、大学に入ってから、数学で到底敵わない人がたくさんいまして、数学の世界で勝負するのは得策ではないと思いました。そこで、次に興味のあった化学、その中でも数学をより活かせそうな化学工学の方に進みました。それがよかったのか、化学・化学工学の勉強や実験・実習が楽しくなってきまして、そのまま研究も楽しく続けられて、気づいたら博士を取得し、助教になっていた、という感じです。もともと人に教えるのは好きだったこともあり、今も大学教員を続けています。

Q2. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

そもそも、化学者でありながらでも、多くのことは並行してできると思っていますし、私の知り合いにも化学者にもかかわらず他の色々な仕事をされている方がいらっしゃいます。私の例で恐縮ですが、最初の夢だった高校教師のように高校で授業することもありますし、セミナー講師や企業の方々を相手にしたコンサルティングもしています。また自分で会社を設立したり、それとは別の会社で最高技術責任者/CTO をしたりしています。このように、化学者という一つの枠にとらわれる必要はないと思います。特に会社なんて書類上の話ですしね。

このように、なりたいものには今からでもなる!、くらいの気持ちでいるので、「もし化学者でなかったら、・・・」の回答はあまり思い浮かびませんが、あえていえば、逆立ちしてもなれないような、例えば女性や他の動物になったらどう振る舞うかは興味があるかもしれません。

Q3. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

高機能性材料としての分子、合成条件や製造条件、そして材料を作るプロセスをコンピュータで予測・設計する研究をしています。詳しくは研究室のウェブサイト(リンク)をご覧ください。この研究を展開して、バーチャルな空間のみで分子・材料・プロセスのすべてを設計できるようにしていきたいです。

Q4.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

渋沢栄一さんです。子供が何人もいたり、多種多様な数多くの大学、研究所、会社の設立に関わったりした方です。一人の人生で成し遂げたとは到底信じられない量の活動・活躍をされました。渋沢栄一さんのモチベーションや時間の作り方などお伺いしてみたいです。

Q5. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

パソコンを使ったシミュレーション実験も含めてよいのであれば、今まさに行っています。仮説と検証を繰り返したり、コードを書いたりするのが好きなので (趣味の領域?)、今でも時間を作って “実験” しています。

いわゆる実験室で行う実験でしたら、応用化学科の学部3年生向けにプロセス制御の学生実験を担当していまして、学生たちの良い学びに繋がるように、毎年自分で予備実験しながら内容の工夫をしています。

Q6.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

砂漠ですか・・・。暑いところがとても苦手なので、本を読んだり音楽を聴いたりするのは、やっぱり涼しいところが嬉しいです。ただ、仕方なく暑い砂漠に取り残されるとなると、やはり「オアシスを早く見つける方法」、みたいな本が欲しいです。そのような本があるかわかりませんが (「冒険図鑑―野外で生活するために」が近い?)、なければ砂漠の本でも持っていって砂漠の研究でも始めたいと思います。

冒険図鑑―野外で生活するために (Do!図鑑シリーズ)

冒険図鑑―野外で生活するために (Do!図鑑シリーズ)

さとうち 藍
¥1,760(as of 01/19 12:00)
Amazon product information

音楽は、NHK の「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組が好きなので、その主題歌であるスガシカオさんの「Progress」です。これを聴いて、砂漠のプロフェッショナルになるべくモチベーションを上げていきたいです。

Progress

Progress

kokua
¥967(as of 01/19 12:00)
Amazon product information

Q7. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

私の所属している明治大学応用化学科 (リンク)にも、面白い先生はたくさんいます。例えば、若い先生で言うと我田元先生、小川熟人先生、岩瀬顕秀先生でしょうか。ご検討よろしくお願いします。

金子准教授の略歴

2007年東京大学工学部化学システム工学科卒業。2009年同大学院工学系研究科修士課程修了。2009年日本学術振興会特別研究員(DC1)、2011年同大学院工学系研究科博士課程修了。2011年同大学院工学系研究科・助教、2017年明治大学理工学部応用化学科・専任講師を経て、2020年より明治大学理工学部応用化学科・専任准教授。広島大学先進理工系科学研究科・客員准教授、大阪大学太陽エネルギー化学研究センター・招聘准教授、理化学研究所・客員主幹研究員、データケミカル株式会社・最高技術責任者/CTOを兼務。

関連リンク

関連書籍

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

弘昌, 金子
¥4,752(as of 01/19 15:58)
Amazon product information
Pythonで気軽に化学・化学工学

Pythonで気軽に化学・化学工学

金子 弘昌
¥2,970(as of 01/19 04:43)
Amazon product information

*本インタビューは2022年5月6日に行われたものです

hoda

投稿者の記事一覧

大学院生です。ケモインフォマティクス→触媒

関連記事

  1. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師
  2. 第169回―「両性分子を用いる有機合成法の開発」Andrei Y…
  3. 第162回―「天然物の合成から作用機序の解明まで」Karl Ga…
  4. 第39回「発光ナノ粒子を用いる生物イメージング」Frank va…
  5. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  6. 第50回「非二重らせん核酸は生物種を超えて生命を制御できるか」建…
  7. 第136回―「有機化学における反応性中間体の研究」Maitlan…
  8. 第144回―「CO2を捕捉する多孔性金属-有機構造体の開発」My…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ベンジャミン・リスト Benjamin List
  2. ビール好きならこの論文を読もう!
  3. トランジスタの三本足を使ってsp2骨格の分子模型をつくる
  4. 世界初!ラジカル1,2-リン転位
  5. 青色LED和解:中村教授「日本の司法制度は腐ってる」
  6. 【消臭リキ】マッチでトイレで消臭トライ 
  7. 結合をアリーヴェデルチ! Agarozizanol Bの全合成
  8. 小島 諒介 Ryosuke Kojima
  9. 化学系ブログのランキングチャート
  10. 非リボソームペプチド Non-Ribosomal Peptide

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授

第XX回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授

第69回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授

第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成

シクロプロパン環をもつインドールアルカロイド(–)-rauvomine Bの初の全合成が達成された。…

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」を開催します!

続けてのケムステVシンポの会告です! 本記事は、第52回ケムステVシンポジウムの開催告知です!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP