[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第176回―「物質表面における有機金属化学」Christophe Copéret教授

[スポンサーリンク]

第176回の海外化学者インタビューは、クリストフ・コペレ教授です。スイス連邦工科大学チューリヒ校化学科に所属し、触媒作用、分子認識、イメージング、マイクロエレクトロニクスに応用可能な機能性材料の研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

子供の頃、兄の本を読んでいたのですが、その中に「大人になったらどんな仕事に就けるのか」について書かれているものがありました。その中でも、”ingénieur chimiste(化学工学者)”という言葉が印象に残っています。というのも、分子という小さなレゴを使って、複雑な構造やプロセスを作る仕事だったからです。このことが、化学者になろうと思った大きな理由の1つです。高校の物理と化学の教師が非常に優秀で厳格だったことも、その動機付けになりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

人類の歴史に興味があるので、歴史家や社会学者になりたいとは思います。しかし、より現実的な選択肢としては、シェフになることでしょう。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私たちが取り組んでいることは、物質表面で起こる化学を理解することです。複雑な無機化学系を用いる分子的アプローチによって、現代的な分子生物学や分子化学の精度に到達しうる、非常に複雑な機能性材料を設計できるようになりたいと考えています。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

トクヴィルとともに夕食を持てるなら、至上の喜びです。彼はフランス国王のために働きながら、政治システム、特に民主主義システムによる長所と短所について驚くべき先見性を持っていました。現代世界の激動のほとんどを説明する彼の見解は、当時から非常に明快でしたが、現在でも十分に通用するものです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

数週間前、学生たちの吹きガラスを手伝っていました(私たちの研究室ではとても重要な技術で、提案書や原稿を書く間の良い息抜きになります!)。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

選択はいつも難しいことですが、マルセル・プルーストの作品集『失われた時を求めて』、そして一冊だけ選ぶとしたら、最終巻の『回帰する時』でしょうか。

音楽では、ロシア作曲家の作品で、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲3番』でしょうか。

失われた時を求めて 文庫版 全13巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

失われた時を求めて 文庫版 全13巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

マルセル・プルースト
¥15,059(as of 06/01 12:22)
Amazon product information

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

間違いなく新進気鋭の科学者たちでしょう。これまで化学の議論を楽しんできた、親しい共同研究者や友人たちの中から選ぶことにします。ENS LyonのOlivier Mauryは発光分子と材料の専門家、CPE LyonのChloé Thieuleuxは材料化学の専門家です。

 

原文:Reactions – Christophe Copéret

※このインタビューは2011年10月7日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり
  2. 第32回 液晶材料の新たな側面を開拓する― Duncan Bru…
  3. 第八回 ユニークな触媒で鏡像体をつくり分けるー林民生教授
  4. 第126回―「分子アセンブリによって複雑化合物へとアプローチする…
  5. 第121回―「亜鉛勾配を検出する蛍光分子の開発」Lei Zhu教…
  6. 第11回 有機エレクトロニクス、分子からデバイスまで ̵…
  7. 第19回「心に残る反応・分子を見つけたい」ー京都大学 依光英樹准…
  8. 第140回―「製薬企業のプロセス化学研究を追究する」Ed Gra…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第八回ケムステVシンポジウム「有機無機ハイブリッド」を開催します!
  2. 不安定な高分子原料を従来に比べて 50 倍安定化することに成功! ~水中での化学反応・材料合成に利用可能、有機溶媒の大幅削減による脱炭素に貢献~
  3. アカデミックから民間企業への転職について考えてみる
  4. バイオマスからブタジエンを生成する新技術を共同開発
  5. 向山酸化還元縮合反応 Mukaiyama Redox Condensation
  6. 【協業ご検討中の方向け】マイクロ波化学とのコラボレーションの実際
  7. ブラン・ウレー クロロアルキル化 Blanc-Quellet Chloroalkylation
  8. 「独創力」を体現する四国化成の開発部隊
  9. Innovative Drug Synthesis
  10. 科学はわくわくさせてくれるものーロレアル-ユネスコ賞2015 PartII

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

注目情報

最新記事

材料開発の変革をリードするスタートアップのデータサイエンティストとは?

開催日:2023/06/08  申し込みはこちら■開催概要MI-6はこの度シリーズAラウ…

世界で初めて有機半導体の”伝導帯バンド構造”の測定に成功!

第523回のスポットライトリサーチは、千葉大学 吉田研究室で博士課程を修了された佐藤 晴輝(さとう …

第3回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、7月21日(金)に第3…

第38回ケムステVシンポ「多様なキャリアに目を向ける:化学分野のAltac」を開催します!

本格的な夏はまだまだ先ですが、毎日かなり暖かくなってきました。皆様お変わりございませんでしょうか。…

フラノクマリン -グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせ-

2023年2月に実施された第108回薬剤師国家試験において、スウィーティーという単語…

構造の多様性で変幻自在な色調変化を示す分子を開発!

第522回のスポットライトリサーチは、北海道大学 有機化学第一研究室(鈴木孝紀 研究室)で博士課程を…

マテリアルズ・インフォマティクス適用のためのテーマ検討の進め方とは?

開催日:2023/05/31 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

リングサイズで性質が変わる蛍光性芳香族ナノベルトの合成に成功

第521回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科理学専攻 物質・生命化学領域 有機化…

材料開発の変革をリードするスタートアップのプロダクト開発ポジションとは?

開催日:2023/06/01 申し込みはこちら■開催概要MI-6はこの度シリーズAラウン…

種子島沖海底泥火山における表層堆積物中の希ガスを用いた流体の起源深度の推定

第520回のスポットライトリサーチは、琉球大学大学院 理工学研究科海洋自然科学専攻 地殻内部水圏地化…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP