[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第九回 タンパク質に新たな付加価値を-Tom Muir教授

[スポンサーリンク]

ショートインタビュー第9回目はニューヨークにあるロックフェラー大学・合成タンパク化学研究室のTom Muir教授です。

彼はタンパク質を制御し研究していくべく、化学的手法の開発および適用に取り組んでいます。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

高校と大学、そしてもっとも長い間、私にとっては、常に化学が簡単な科目だった。だからそれが一番、抵抗が少ない道だったよ。 大学生の夏、素晴らしい研究体験をしてから、スイッチが元に戻らなくなった。 これまで明らかに作られたことの無い分子を作ったからだね(それがわかったのは偶然だけど)。 この体験は、私の心に衝撃を与えたし、そして今でも同じことは起きる。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

私は視覚的な方法でものを考えている。化学はまさに創造的科学だが、いくつかの点では抽象的でもある。我々が作る分子を表現するにも、そこはかとなく不可解な象形文字が使われるしね。 絵を描き彫刻をすることで人間は、人間の創造的営みの結果を実際に見る。 これこそが、私が是非ともできるようになりたいことだね。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

我々の取り組みを継続することによって―すなわちその過程で損害を与えることなく、世界が必要とするものを作るによってだ。 化学はしばしばマスメディアによって悪い風評を得てしまう。化学者のほとんどがメディアレーダーの下に居続ける気があれば、それが実際ベストだと私は思える。 何人かの科学者は天才的な大使なので、そういった人々にこそ代弁させるべきだろう。報道によって噛み砕かれ吐き出されるというリスクを冒さずとも済むよう、残りの科学者は実験に執着するべきだろう。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

素晴らしい質問だね。ダ・ヴィンチやソクラテスのような人物を挙げたくなってしまうけれども、夕食なので、たぶん詩人のRubbie Burnsと共にするだろう。彼は短い人生を満ち足りたものとして生きた。彼の言葉と音楽は、人々を鼓舞しつづけ、快適を生み出し続けている。Burnsとの夕食は、退屈なものなどではないだろう。

Rubbie Burns

Rubbie Burns

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

実際の実験か! たぶん1年か2年前に、ATPをタンパク質に取り付けようとしたことかな。しかしいつもは、決まりきった手順で研究室のメンバーを補助しているよ。それは油断ならず、潜在的な危険が伴ったりもする手順だけども。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

CDはThe Clashの”London Calling”。そして本だけど、これはJoyceの”Ulysses”をもう一度読む、良い機会なんだろうね。

原文:Reactions – Tom Muir

※このインタビューは2007年4月20日に公開されたものです。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第140回―「製薬企業のプロセス化学研究を追究する」Ed Gra…
  2. 第16回 教科書が変わる心躍る研究を目指すー野崎京子教授
  3. 第125回―「非線形光伝播の基礎特性と応用」Kalai Sara…
  4. 第109回―「サステイナブルな高分子材料の創製」Andrew D…
  5. 第22回 化学の複雑な世界の源を求めてーLee Cronin教授…
  6. 第58回「新しい分子が世界を変える力を信じて」山田容子 教授
  7. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Ne…
  8. 第61回―「デンドリマーの化学」Donald Tomalia教授…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成化学協会誌2023年5月号:特集号「日本の誇るハロゲン資源: ハロゲンの反応と機能」
  2. コラボリー/Groups(グループ):サイエンスミートアップを支援
  3. 【ケムステSlackに訊いてみた①】有機合成を学ぶオススメ参考書を教えて!
  4. 「フント則を破る」励起一重項と三重項のエネルギーが逆転した発光材料
  5. ジブロモイソシアヌル酸:Dibromoisocyanuric Acid
  6. 【朗報】HGS分子構造模型が入手可能に!
  7. 化学研究で役に立つデータ解析入門:エクセルでも立派な解析ができるぞ編
  8. GlycoProfile アジド糖
  9. 分子構造を 3D で観察しよう (2)
  10. エッシェンモーザーメチレン化 Eschenmoser Methylenation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

注目情報

最新記事

世界で初めて有機半導体の”伝導帯バンド構造”の測定に成功!

第523回のスポットライトリサーチは、千葉大学 吉田研究室で博士課程を修了された佐藤 晴輝(さとう …

第3回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、7月21日(金)に第3…

第38回ケムステVシンポ「多様なキャリアに目を向ける:化学分野のAltac」を開催します!

本格的な夏はまだまだ先ですが、毎日かなり暖かくなってきました。皆様お変わりございませんでしょうか。…

フラノクマリン -グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせ-

2023年2月に実施された第108回薬剤師国家試験において、スウィーティーという単語…

構造の多様性で変幻自在な色調変化を示す分子を開発!

第522回のスポットライトリサーチは、北海道大学 有機化学第一研究室(鈴木孝紀 研究室)で博士課程を…

マテリアルズ・インフォマティクス適用のためのテーマ検討の進め方とは?

開催日:2023/05/31 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

リングサイズで性質が変わる蛍光性芳香族ナノベルトの合成に成功

第521回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科理学専攻 物質・生命化学領域 有機化…

材料開発の変革をリードするスタートアップのプロダクト開発ポジションとは?

開催日:2023/06/01 申し込みはこちら■開催概要MI-6はこの度シリーズAラウン…

種子島沖海底泥火山における表層堆積物中の希ガスを用いた流体の起源深度の推定

第520回のスポットライトリサーチは、琉球大学大学院 理工学研究科海洋自然科学専攻 地殻内部水圏地化…

脂質ナノ粒子によるDDS【Merck/Avanti Polar Lipids】

mRNAワクチンなどの核酸医薬品は、生体内における安定性が低く、細胞内移行性も悪い。このため、核酸医…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP