[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

アンリ・カガン Henri B. Kagan

[スポンサーリンク]

アンリ・ボリス・カガン(Henri Boris Kagan、1930年12月15日-)は、フランスの有機化学者である (写真はこちらより引用)。パリ第11大学名誉教授。

経歴

19xx ソルボンヌ大学 卒業
1960 コレージュ・ド・フランス 博士号取得(J. Jacques教授)
1960 コレージュ・ド・フランス Research Associate(A. Horeau教授)
19xx パリ第11大学に着任、のちに名誉教授。
1990 French Academy of Science 会員

受賞歴

1990 Prelog Medal
1998 Yamada-Koga prize
1998 名古屋メダル
1998 キラリティーメダル
1999 テトラヘドロン賞
2001 ウルフ賞化学部門
2002 野依賞
2005 Bower Award and Prize for Achievement in Science
2005 ベンジャミンフランクリンメダル

フランス国立科学研究センターシルバーメダル
August-Wihelm-von Hoffman Medal
Grand Prix de la Fondation de la Maison de la Chimie
Chevalier de la Légion d’honneur
JSPS Award for Eminent Scientsts

研究概要

均一系不斉触媒反応の開発におけるパイオニアの一人。

二座不斉リン配位子DIOPの開発

触媒的不斉水素化反応において、高エナンチオ選択性を与える二座配位子DIOPの開発に成功した[1]。これにより不斉触媒反応におけるC2対照二座キラル配位子の実効性が示された。研究領域の黎明期における重要研究の一つである。

円偏光を用いる絶対不斉合成

1971年に円偏光(CPL)を照射する不斉6π環化反応を進行させ、[6]ヘリセンへの不斉合成を達成した[2]。

不斉触媒反応における非線形効果の発見

光学純度の低い不斉触媒を用いて反応を行ったときに、生成物がもとの促進剤よりも光学純度高く得られることがある。これを不斉触媒反応における正の非線形効果(positive non-linear effect)と呼ぶ。

1986年にKaganらはこの現象を始めて発見し、継続的な実験・理論両面からのアプローチを通じて概念を確立せしめた[3]。現在ではホモキラリティ起源の理解や、速度論的光学分割法、不斉触媒系の反応機構解析への応用などに用いられている重要概念である。

論文より引用)

 

低原子価サマリウムを用いる有機合成反応の開発

ヨウ化サマリウム(II)の調製法を開発[4]。温和な1電子還元剤として用いることが可能である事を実証し、還元型カップリング反応など、様々な反応形式を開拓した。

コメント&その他

  1. 触媒的不斉合成法の有力ノーベル賞候補と見なされていたにも関わらず、2001年ノーベル化学賞において、惜しくも選から漏れてしまいました。これを受けて方々で議論が巻き起こりました。

関連文献

  1. Kagan, H. B.; Dang, T.-P. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 6429. doi:10.1021/ja00773a028
  2. Kagan, H. B.; Moradpour, A.; Nicoud, J. F.; Balavoine, G.; Tsoucaris, G. J. Am. Chem. Soc. 1971, 93, 2353. doi:10.1021/ja00738a061
  3. (a) Puchot, C.; Samuel, O.; Dunach, E.; Zhao, S.; Agami, C.; Kagan, H. B. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108,  2353. doi:10.1021/ja00269a036 (b) Guillaneux, D.; Zhao, S.-H.; Samuel, O.; Rainford, D.; Kagan, H. B. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 9430. doi:10.1021/ja00100a004 (c) Kagan, H. B. Synlett 2001, 888. doi:10.1055/s-2001-14660 (d) Satyanarayana, T.; Abraham, S.; Kagan, H. B. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 456. DOI: 10.1002/anie.200705241
  4. (a) Girard, P.; Namy, J. L.; Kagan, H. B. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 2693.  doi:10.1021/ja00528a029 (c) Kagan, H. B. Tetrahedron 2003, 59, 10351. doi:10.1016/j.tet.2003.09.10

関連書籍

[amazonjs asin=”4759800824″ locale=”JP” title=”カガン有機立体化学”][amazonjs asin=”0713127449″ locale=”JP” title=”Organic Stereochemistry”][amazonjs asin=”3131326018″ locale=”JP” title=”Stereochemistry II. Fundamentals and Methods. Determination of Configurations by Dipole Moments, CD or ORD”][amazonjs asin=”3131327014″ locale=”JP” title=”Stereochemistry III. Fundamentals and Methods. Determination of Configurations by Chemical Methods”][amazonjs asin=”3131328010″ locale=”JP” title=”Stereochemistry IV. Fundamentals and Methods”][amazonjs asin=”3642095585″ locale=”JP” title=”Amino Acids and the Asymmetry of Life: Caught in the Act of Formation (Advances in Astrobiology and Biogeophysics)”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. アーサー・C・コープ賞・受賞者一覧
  2. ロバート・コリュー R. J .P. Corriu
  3. ルステム・イズマジロフ Rustem F. Ismagilov
  4. Thieme-IUPAC Prize in Synthetic …
  5. デイビッド・サーラ David Sarlah
  6. カルロス・バーバス Carlos F. Barbas III
  7. 山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi
  8. 藤嶋 昭 Akira Fujishima

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成化学協会誌2021年5月号:『有機合成のブレークスルー』合成反応の選択性制御によるブレークスルー
  2. フィブロイン Fibroin
  3. なぜ電子が非局在化すると安定化するの?【化学者だって数学するっつーの!: 井戸型ポテンシャルと曲率】
  4. ガボール・ソモライ Gabor A. Somorjai
  5. (S)-5-(ピロリジン-2-イル)-1H-テトラゾール:(S)-5-(Pyrrolidin-2-yl)-1H-tetrazole
  6. (S,S)-(-)-2,2′-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン):(S,S)-(-)-2,2′-Isopropylidenebis(4-tert-butyl-2-oxazoline)
  7. ホストとゲスト?
  8. トリプトファン選択的タンパク質修飾反応 Trp-Selective Protein Modification
  9. Ni(0)/SPoxIm錯体を利用した室温におけるCOの可逆的化学吸着反応
  10. 吉野彰氏が2021年10月度「私の履歴書」を連載。

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

注目情報

最新記事

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

第62回Vシンポ「見えない空気を科学する~センサによる室内環境・臭気の見える化と快適空間デザインの最前線~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第62回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、前回同様…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP