[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第168回―「化学結晶学から化学結合を理解する」Guru Row教授

[スポンサーリンク]

第168回の海外化学者インタビューは、グル・ロウ教授です。インド科学研究所(バンガロー)の固体・構造化学ユニットに所属し、分子性結晶の電荷密度解析、in situ クライオ結晶学、多形性、医薬品の共結晶など、化学結晶学や材料設計に関連するテーマに取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

これは面白い話です。私は物理学者として出発し、固体物理学で修士課程を修了した後、インド科学研究所 物理学科の面接を受けました。そして、マドラス大学から移動してきたK.ヴェンカテサン教授(ドロシー・ホジキン教授のもとでポスドクとして働き、ビタミンB12の構造決定に携わった)と一緒に働くことになったのですが、彼は有機化学部門に結晶学者として参加していました。結局、私は有機化学で博士号を取得し、その後、化学者になったのです。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

物理学を学んでいたでしょうし、もしかしたら化学結晶学者ではなく、高分子結晶学者になっていたかもしれません。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

現在は、分子性結晶中の分子間相互作用の評価と重要性について、電荷密度分析を用いて研究しています。Gautam Desiraju教授と私、そして学生たちは、シントンと呼ばれるフラグメントの電荷密度を、ある分子から他の分子に移すことができる新しい方法論(SBFA)を開発しました。この研究は、高分子への薬剤結合メカニズムの解明に大きなインパクトを与えるものと信じています。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

もちろんアルベルト・アインシュタイン教授です。我々は二人ともベジタリアンですしね。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

2週間前に、学生の一人が吸湿性の結晶をリンデマンキャピラリーへマウントするのに苦労したときです。学生が結晶構造の解明や精緻化に困難を感じたときには、いつも手助けをするつもりです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

『不思議の国のアリス』は、何度も読み返していますが、読むたび新しい発見があります。

私は音楽ファンではありませんが、古いヒンディー映画の曲を聴くのは好きです。

[amazonjs asin=”B01914HLHK” locale=”JP” title=”不思議の国のアリス (角川文庫)”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

特定の人はいませんが、化学物質や興味深い学生と一緒に研究室で働いている化学者なら誰でも、興味深い話をしてくれると思います。

原文:Reactions – Guru Row

※このインタビューは2011年8月11日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第66回―「超分子集合体と外界との相互作用を研究する」Franc…
  2. 第133回―「遺伝暗号リプログラミングと翻訳後修飾の研究」Jas…
  3. 第89回―「タンパク質間相互作用阻害や自己集積を生み出す低分子」…
  4. 第146回―「原子から社会までの課題を化学で解決する」中村栄一 …
  5. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授
  6. 第152回―「PETイメージングに活用可能な高速標識法」Phil…
  7. 第66回「機能的な構造を探求する」大谷亮 准教授
  8. 第29回「安全・簡便・短工程を実現する」眞鍋敬教授

注目情報

ピックアップ記事

  1. マイクロ波プロセスの工業化 〜環境/化学・ヘルスケア・電材領域での展開と効果〜(2)
  2. 有機合成化学協会誌2019年11月号:英文版特集号
  3. バイヤー・ビリガー酸化 Baeyer-Villiger Oxidation
  4. 日本学士院賞・受賞化学者一覧
  5. 生体分子と疾患のビッグデータから治療標的分子を高精度で予測するAIを開発
  6. 東京大学理学部 化学教室
  7. 【6月開催】第九回 マツモトファインケミカル技術セミナー 有機金属化合物「オルガチックス」の密着性向上剤としての利用 -添加剤としての利用-
  8. 日本プロセス化学会2023ウィンターシンポジウム
  9. 加藤 昌子 Kato Masako
  10. 材料開発におけるインフォマティクス 〜DBによる材料探索、スペクトル・画像活用〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

先端の質量分析:GC-MSおよびLC-MSデータ処理における機械学習の応用

キャラクタライゼーションの機械学習応用は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびラボオートメ…

原子半径・電気陰性度・中間体の安定性に起因する課題を打破〜担持Niナノ粒子触媒の協奏的触媒作用〜

第648回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(山口研究室)博士課程後期2年の松山…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP