[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第91回―「短寿命化学種の分光学」Daniel Neumark教授

[スポンサーリンク]

第91回の海外化学者インタビューは、ダニエル・ノイマルク教授です。カリフォルニア大学バークレー校化学科に在籍し、化学力学、分光学、およびクラスター化学に取り組み、とりわけ遷移状態や他の過渡的化学種を調べるためのマイナスイオン光脱離の活用に重点を置いています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

子供の頃、野球や他のスポーツが特に得意ではなかったので、地下室に籠もり化学実験セットを使って遊んでいました。高校では優秀な化学の教師(2000年 ACS Conant Award for High School Chemistry Teachingを受賞したFrank Cardulla)に教わり、大学では1986年にノーベル化学賞を受賞したDudley Herschbachの指導を受けながら研究できました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

医学をやろうと真剣に考えましたが、自分には適切なベッドサイドマナーがないと分かりました。友人や同僚のほとんどは賛同してくれると思います。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

気候変動や再生可能エネルギー源の必要性など、世界の主要な問題の多くは化学者によって解決されます。これらの問題は分子レベルにおける物質の基本的理解を必要とします。化学者はこれを持っています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ヨシフ・スターリンはこの100年間で最も魅力的な歴史的人物の一人だと思いますが、彼と夕食を共にしたいかどうかは分かりません。改めて考えると、ボルシチとウォッカの夜はそれほど悪くないかもしれません。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

1986年にバークレーで研究を始めたとき、遷移状態分光学の実験にかなりかかわっていました。複数のプロジェクトを進めていたのですが、学生たちが私より装置をうまく動かせることがわかったので、日常業務から距離を置き始めました。しかし今でも毎日研究室を訪れ、(学生にとって非常に恐ろしいことでしょうが)時折ドアノブを回します。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

『戦争と平和』です。ずっと読みたいと思っていましたが、時間がありませんでした。そしてCDは、ベートーベンの『第九』です。

[amazonjs asin=”4334754171″ locale=”JP” title=”戦争と平和1 (光文社古典新訳文庫)”][amazonjs asin=”B00SBNMZU6″ locale=”JP” title=”ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》”]

原文:Reactions – Daniel Neumark

※このインタビューは2008年11月21日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第43回―「均質ナノ粒子の合成と生命医学・触媒への応用」Taeg…
  2. 第57回「製薬会社でVTuber担当?化学者の意外な転身」前川 …
  3. 第81回―「均一系高分子重合触媒と生分解性ポリマーの開発」奥田 …
  4. 第136回―「有機化学における反応性中間体の研究」Maitlan…
  5. 第107回―「ソフトマター表面の物理化学」Jacob Klein…
  6. 第95回―「生物学・材料化学の問題を解決する化学ツールの開発」I…
  7. 第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり
  8. 第24回「アルキル-πエンジニアリングによる分子材料創成」中西尚…

注目情報

ピックアップ記事

  1. スケールアップ実験スピードアップ化と経済性計算【終了】
  2. 有機合成化学協会誌2024年1月号:マイクロリアクター・官能基選択的水和・ジラジカル・フルオロフィリック効果・コバレントドラッグ
  3. 巨大な垂直磁気異方性を示すペロブスカイト酸水素化物の発見 ―水素層と酸素層の協奏効果―
  4. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授
  5. 脱一酸化炭素を伴う分子間ラジカル連結反応とPd(0)触媒による8員環形成反応を鍵としたタキソールの収束的全合成
  6. 東レ工場炎上2人重傷 名古屋
  7. 有機合成化学協会誌2021年10月号:フッ素化反応2010-2020
  8. 単一細胞レベルで集団を解析
  9. 産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜
  10. 浜松ホトニクス、ヘッド分離型テラヘルツ波分光分析装置を開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP