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身のまわりの分子

シスプラチン しすぷらちん cisplatin

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シスプラチン(cisplatin)は、金属を含む医薬品の代表例であり、もっとも広く用いられる抗ガン剤の一種です。

  • 歴史・用途

1965年にB.Rosenbergらが電場がおよぼす大腸菌の増殖に対する影響を調べている最中、白金電極においてはその増殖が電場なしでも抑制されることを偶然見いだしました。この発見を機に、さまざまな白金化合物が合成・検討され、抗癌剤としてのシスプラチンが見いだされました。

シスプラチンはDNA二重鎖に強く結合し、DNA複製を行えなくしてガン細胞の分裂を抑制、ひいては死滅させます(上図)。この機能には二種の置換基がそれぞれシス配座に位置することが必須であると言われています。トランス幾何異性体は、全く薬理作用を示しません。

シスプラチンは配位子置換のトランス効果を最大限活用した、エレガントな合成法で製造されます。

(ちなみに、Pt(NH3)42+にクロライドイオンを添加する方法を用いれば、同じくトランス効果により、トランス配座の”トランスプラチン”が選択的に得られます。)

cisplatin_2.gif
  • 関連文献
[1] Wang, D.; Lippard S. J. Nature Rev. Drug. Descov. 2005, 4, 307.

 

  • 関連記事

トランス効果 Trans Effect

  • 関連書籍
Cisplatin: Chemistry and Biochemistry of a Leading Anticancer Drug
John Wiley & Sons Inc
Bernhard Lippert(著)
発売日:2006-12-11
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Icon Health Publications(著)
発売日:2004-09-30
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発売日:2000-04
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矢沢サイエンスオフィス(編集)
発売日:2006-02
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ランキング:171508
  • 関連リンク

シスプラチン (有機化学美術館)

シスプラチン (Wikipedia日本)

Cisplatin (Wikipedia)

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cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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