[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

アメリカ化学留学 ”立志編 ーアメリカに行く前に用意すること?ー”!

[スポンサーリンク]

 

 

アメリカ留学シリーズです。 今回は留学前の心構え的なことを書こうかなと思います。というのも僕はいわゆる大学院留学は凄い敷居低い留学方法だと思っています。だから留学していることを過度に自負している留学経験者や、「留学する人はこうでなくてはいけない!」みたいなアドバイスをする人に対してちょっとした違和感というか、はなもちならなさをというか、なんていうかそんなことでビビらせる必要はないのになぁというかというのを感じることがあります。

 

そんな訳で今回は日本で化学を専攻していた場合、大学院ルートでの留学がいかに“ライフハック”であるか、ということを書いていきたいです。

 

1つめ 学力的にどーなの?という問題

 

最初の難関は入学までのToeflなりのテストだと思います。ここは真摯な努力と気合による根性で乗り切るしかないと思います。でもこの程度の努力は他の道に進んでいる人も望む望まざるにかかわらず必要になる程度のものです。それならば自分で選んだ物を努力するというのは、まぁ悪くないものだと思います。

留学後の日常英語や研究で使う英語は、自覚的に勉強して慣れていけば伸びるものです。その点で案じる必要はないと思います。

留学する人は英語がみんなペラペラでなくてはいけない、みたいな風潮や物言いがありますが、そんなことはありません。その都度に自発的な努力は要されますが、逆に言うと自分の力不足を痛感するごとに己を磨けば良いのです。あと意外と留学経験者で英語が上手くない人は多いです。つまり英語にある程度慣れたあとに、英語がペラペラに見えていた帰国子女や留学経験者の友達の英語が意外と日本語訛りがあることに気づくこともしばしばあるのです。何が言いたいかというと、英語が喋れることや外国で暮らしてきたことを”I am THE man”的というか選民意識的に語る人がいますが、そんなのはチャラく右から左に受け流していれば良いのです。というか英語なんて伝わればいいのです。

 

英語以外の学力ですが、主に化学研究で必要となる物理や数学の知識は日本の大学受験をした人ならば世界的にトップレベルにあるといえると思います。これは研究で大きなアドバンテージになります。また御存知の通り日本は化学大国です。日本の大学だと学部の4年生から研究室入りすることが普通だと思うのですが、化学のキャリアを日本という丁寧かつレベルの高い所でスタートできるのはラッキーなことだといっていいと思います。

 

つまり学力的にはそんなに気負う必要はないということです。その場その場で頑張るぞ!と思っていればオールオーケーです。

 

2つめ 環境的にどーなの?という問題。

 

この問題は例えば親や友達に会いにくい、という問題です。ただこの問題はITが普及していこう劇的に緩和されました 。

例えばほんの15年前だと、emailもそこまで普及しておらず、消息を知るには手紙だけだったと言います。それが今はスカイプを使えば無料でビデオチャットができて、Youtubeを使えば日本の番組がチェックできて、iphoneを使えばどこにいてもつながることができます。そういった意味で世界は劇的に狭くなっています。(ただ逆に言うと昔に留学していた人は勇者だなぁと思います)

さらに例えば留学していなくて国内であっても親元を離れた会社に入ったりどこかに転勤になることを考えると、そこまで一緒にいれることもなかなかない気がします。それは例えば友達とかも同じで、休みの間に日本に帰った時に会えれば、1年に1回は会えるわけで、それは多くはないとはいえ、そこまで少なくはないと思います。

 

ただ例えば遠距離恋愛や家族ののっぴきならない事情などが問題になることもありますし、いろいろと解決しがたい状況が起こることもあります。ただそういうことは不可抗力的なものなのでしょうがない気がします。残念ながら僕はこれを解決する答えを持ちあわせていません。

あとご飯とかは自炊すれば日本食も食えるし、そんなに案ずることはありません。化学者は料理が得意(つまり料理は合成みたいなものだから)なわけで、慣れれば余裕レベルです。

 

つまり環境的にはそんなに気負う必要はないということです。その場その場で頑張るぞ!と思っていればオールオーケーです。

 

3つめ 財力的にどーなの?という問題。

 

学費的にはびっくりするほどのアドバンテージが大学院留学にはあります。前述したように自然科学系のPh.D.コースにはアシスタントシップがつくことが多く、学費免除はおろか生活費まで出してくれるところが少なくありません。また学科からだけではなく、例えばその日本語のクラスの授業を受け持ってアシスタントシップをもらっている友だちもいます。日本の政府や奨学金団体からの融資も普通の留学と比べて格段と多いです。

つまり財力的にはそんなに気負う必要はないということです。その場その場で頑張るぞ!と思っていればオールオーケーです。

 

さいごに

そして一番のキモはどれだけお金をかけて留学しようが、どれだけ勇者的な悲壮感で留学しようが、得られるものは同じということです。僕には経験していない事も多いので一概にまとめるのは難しいのですが、インターネットでMITの授業が無料で見られ、スカイプで格安で英会話が練習できる昨今、留学のみによって得られるものというのは少なくなっている気がしています。強いて言えば英語を喋れる自信とか、多角的な視野というか、違う環境へのリアルな理解とか、そういう抽象的な表現しかできない感覚的なパラダイムの広がりくらいしかなくなってきていると思うのです。そしてそういうものは語学留学だろうが、高校から留学しようが帰国子女だろうがあまり関係ない気がします。

 

つまり大学院留学はそんなに偉いわけでもないし、さらには気負う必要はなどないということです。その場その場で頑張るぞ!と思っていればオールオーケーな気がします。

究極的にエールを送るのならば、ネガティブなことをいう人や大人の意見な皮をかぶった小さくまとまれ的な講釈は、あなたのポテンシャルよりも優れているという保証はないのだからにフットワーク軽く動いてみるのもいいことだと思いますよ!下手な懸念は持つだけ邪魔になります。留学してしまえば、新しい世界はわりとすぐ近くにありますよ。ってなもんです。

 

ビビらず行けよ、行けば分かるさ、ありがとー!

 

(この文章で書かれるケースはあくまで北米の1大学の個人の体験を基にしています。あくまで参考程度に読んでください)

 

関連書籍

やすたか

投稿者の記事一覧

米国で博士課程学生

関連記事

  1. 化学合成で「クモの糸」を作り出す
  2. 高温焼成&乾燥プロセスの課題を解決! マイクロ波がもたらす脱炭素…
  3. アルドール・スイッチ Aldol-Switch
  4. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2023年版】
  5. 金と炭素がつくりだす新たな動的共有結合性を利用した新たな炭素ナノ…
  6. 亜鉛挿入反応へのLi塩の効果
  7. 多成分反応で交互ポリペプチドを合成
  8. 第45回BMSコンファレンス参加者募集

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 三菱ケミカル「レイヨン」買収へ
  2. ダイキン、特許を無償開放 代替フロンのエアコン冷媒
  3. レギッツジアゾ転移 Regitz Diazo Transfer
  4. 知的財産権の基礎知識
  5. 光触媒で空気中に浮遊する”新型コロナウイルス”の感染性を消失させることに成功
  6. ホストとゲスト?
  7. DOWとはどんな会社?-1
  8. ウィリアム・ロウシュ William R. Roush
  9. Letters to a Young Chemist
  10. ノッド因子 (Nod factor)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年2月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP