[スポンサーリンク]

chemglossary

原子間力顕微鏡 Atomic Force Microscope (AFM)

[スポンサーリンク]

原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy;AFM)とは、走査型顕微鏡の一種である。試料と探針間に働く原子間力を検出することによって、試料表面を原子レベルで可視化する技術。

試料表面を探針(tip)でなぞると、試料との間に原子間力(引力)が生じる。その力の大きさをカンチレバー(Cantilever)の”たわみ”とし
て検出する。たわみ具合はレーザー光の反射角から精密に見積もることができる。このようにして、試料表面の凹凸を画像化する(下図)。同様
の測定ができる走査型電子顕微鏡(STM)に比べ、導電性のない材料にも適用可能という利点を持つのが特徴である。

非接触型原子間力顕微鏡(Non-contacting Atomic Force Microscope: NC-AFM)では、探針を試料上空で上下振動させて走査し、探針-試料間距離に応じて変化する振動パラメータ変化を検出する。分解能などさまざまな点で接触型よりも優れており、原子レベルの解像度を誇る。

AFM_1.gif
(画像:Aglient.com)

2009年にIBMの研究者らは、一酸化炭素(CO)を先端に結合させた探針を用い、NC-AFMの分解能を大幅に向上させることに成功した[1]。分子軌道が存在する場所においては、CO分子との間にパウリの排他原理に基づく斥力が働くため、これを検出することで、化学結合までをも可視化できるようになった。以下の写真は彼らのグループによって撮影されたペンタセン分子のをAFM像である。

AFM_pentacene_1.jpg

鮮明なAFM画像を撮影するには、ノイズの影響を最小限にすべく、超高真空・極低温で測定を行う必要がある。

 

関連文献

[1] “The Chemical Structure of a Molecule Resolved by Atomic Force Microscopy”

L. Gross et al. Science 2009, 325, 5944. DOI: 10.1126/science.1176210

Resolving individual atoms has always been the ultimate goal of surface microscopy. The scanning tunneling microscope images atomic-scale features on surfaces, but resolving single atoms within an adsorbed molecule remains a great challenge because the tunneling current is primarily sensitive to the local electron density of states close to the Fermi level. We demonstrate imaging of molecules with unprecedented atomic resolution by probing the short-range chemical forces with use of noncontact atomic force microscopy. The key step is functionalizing the microscope’s tip apex with suitable, atomically well-defined terminations, such as CO molecules. Our experimental findings are corroborated by ab initio density functional theory calculations. Comparison with theory shows that Pauli repulsion is the source of the atomic resolution, whereas van der Waals and electrostatic forces only add a diffuse attractive background.

 

関連書籍

関連リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ケミカルジェネティクス chemical genetics
  2. 深共晶溶媒 Deep Eutectic Solvent
  3. フッ素のゴーシュ効果 Fluorine gauche Effec…
  4. 二水素錯体 Dihydrogen Complexes
  5. Spin-component-scaled second-ord…
  6. アルカロイド alkaloid
  7. 陽電子放射断層撮影 Positron Emmision Tomo…
  8. ポリメラーゼ連鎖反応 polymerase chain reac…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (3)
  2. フェノールのC–O結合をぶった切る
  3. 【解ければ化学者】オリーブオイルの主成分の素はどれ?【脂肪の素ってどんな分子? そして脂と油の差は?】
  4. ケック マクロラクトン化 Keck Macrolactonization
  5. リニューアル?!
  6. 薬剤師国家試験にチャレンジ!【有機化学編その2】
  7. アルキルアミンをボロン酸エステルに変換する
  8. プレプリントサーバー:ジャーナルごとの対応差にご注意を【更新版】
  9. ペリ環状反応―第三の有機反応機構
  10. 第27回 国際複素環化学会議 (27th ISHC)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

注目情報

最新記事

進む分析機器の開発

がん研究会がんプレシジョン医療研究センターの芳賀淑美主任研究員、植田幸嗣プロジェクトリーダーらの研究…

無機物のハロゲンと有機物を組み合わせて触媒を創り出すことに成功

第449回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(椴山グループ)5年…

熱化学電池の蘊奥を開く-熱を電気に変える電解液の予測設計に道-

第448回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 工学院 機械系 機械コース 村上陽一研究室の長 …

毎年恒例のマニアックなスケジュール帳:元素手帳2023

hodaです。去年もケムステで紹介されていた元素手帳2022ですが、2023年バージョンも発…

二刀流センサーで細胞を光らせろ!― 合成分子でタンパク質の蛍光を制御する化学遺伝学センサーの開発 ―

第447回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 理学系研究科化学専攻 生体分子化学研究室(キャ…

【12月開催】第4回 マツモトファインケミカル技術セミナー有機金属化合物「オルガチックス」の触媒としての利用-ウレタン化触媒としての利用-

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合…

化学ゆるキャラ大集合

企業PRの手段の一つとして、キャラクターを作りホームページやSNSで登場させることがよく行われていま…

最先端バイオエコノミー社会を実現する合成生物学【対面講座】

開講期間2022年12月12日(月)13:00~16:202022年12月13日(火)1…

複雑なモノマー配列を持ったポリエステル系ブロックポリマーをワンステップで合成

第446回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 高分子化学研究室(…

河崎 悠也 Yuuya Kawasaki

河崎 悠也 (かわさき ゆうや) は、日本の有機化学者。九州大学先導物質化学研究所 …

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP