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ポンコツ博士の海外奮闘録XVII~博士,おうちを去る~

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ポンコツシリーズ

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続き②  16話

第17話:ポンコツ博士,おうちを去る

ポンコツ滞在者,移動を決心する

研究・プライベート共に海外生活に慣れてきた11月,筆者はこれまで滞在していたホームステイ先から移動することを決意した。その理由は,はっきり言って生活環境が著しく悪かったからである。滞在直後は問題なさそうに感じたが,実はゴミ屋敷だった+滞在ルールがコロコロ変わる+消耗品が全て自己負担になる等の問題で本来の契約よりも大幅に生活費が高くなってしまった(家賃含めて月1500-2000ドルくらい)。日本でそれなりにハードな生活を過ごし,海外に滞在したことない無知な筆者からすると「これがアメリカンな生活か…」と受け止めて生活していたが,ほとんどのルームメイトがおかしさを訴えて1ヶ月も持たず転居していくため,鈍感な筆者も違和感を感じた。

頻繁にルームメイトが変わったおかげで世界各国のフレンドが増えたため,それはそれでよかったが「ポンコツよ。Youは何故この環境に耐えられるんだい?Youのマインドは常人では考えられないレベルに達しているよ。そうだな…もはやYouはマリアやブッダのような人間に見えるよ。でも,Youは本当に早く移動した方がいい。」と出会ったほとんどの人にアメリカンな助言をいただいたため,筆者も移動することを決めた。

ポンコツ生活人,トラブルを告白する

実際,トラブルが多い滞在先だった。具体的には,ルームメイトが頻繁にいなくなるため,筆者が全てのキッチンペーパーやトイレットペーパー,ティッシュなどの紙代を負担しており,ハンドソープや食器用洗剤も頻繁に空になるため,ホストより先に自炊の多い筆者が補充していた。また,筆者が買ってきた調味料(特にコンソメとケチャップ,チーズ)をルームメイトではなくホストが勝手に使う上に,しかも使い切るというなかなかのモンスターハウスだった。そして筆者の調味料をふんだんに使用して出来上がるご飯が本当に美味しくないため,食にストレスを抱えやすい筆者はかなりの不満を持っていた。

どのくらいご飯が美味しくないかというと,筆者以外のルームメイトは食事をその瞬間ではにこやかに受け取るが,ホストが仕事orドッグランに行ったタイミングで近くのバス停のゴミ箱にいつも捨てていたようだ(n = 4)。筆者はそれを聞いて爆笑すると共に,上手い世の渡り方や生き抜くメンタリティを学んだ。

ポンコツ引越し予定者,不安要素を語る

一方,移動するにあたって少々心残りがあった。シベリアンハスキーであるTちゃんの成長具合である。ホストファミリーはハスキー犬特有のヤンチャっぷりを全くコントロールできず,Tちゃんのトイレトレーニングやお風呂トレーニングなどの初期教育に全て失敗していた。最低限のコマンドである「お手(Hand),座れ(sit down),伏せ(lay down),待て(Wait)」を教えたのが筆者と日本人のルームメイトというところがなかなか味わい深い。

ちなみにホストはTちゃんを嫌っているわけではなくむしろ溺愛していたが,教育環境という点では最悪な家庭だった。一般に,アメリカの犬たちはかなり躾がされており,スーパーやバーなどに普通に入ってきたとしても極めて落ち着きがあって大人しいままである。それでいて飼い主が愛情をしっかり注いでいることを犬も感じているように見えることから,家族やパートナーという表現が似合うほどの関係性を本当に築いていたことに筆者は驚きと感動を覚えていた。Tちゃんの成長具合を踏まえると,この境地に至るまでの最低限の教育環境と初期教育の大切さを痛感した。

ちなみに血統書付きのオッドアイのTちゃんは,筆者の滞在と共に超キュートなハスキー子犬からクールビューティー系イケメンハスキーな外見に成長したが,教育失敗の結果,実際の中身はう○ちお漏らし系天然イタズラやんちゃ娘に育ってしまった(fig. 1)。誠に残念な結果である。

Fig. 1) Tちゃんの成長軌跡 (成長過程はA(2ヶ月)→B(4ヶ月)→C(6ヶ月)→D(10ヶ月))

ポンコツブリーダー,トレーニング方法に悩む

トイレに関しては筆者やルームメイトの被害を最小限に抑えるため,ルームメイトと共にTちゃんがトイレを室内でうまくできるようにトイレトレーの購入やあれこれしつけのアイデアを提案した。しかし,大元のホストがほぼ協力してくれずにトイレポイントが定まらなかったため,リビングか玄関前ですべてを暴発するのが日常になった。

一応,Tちゃんが成長するにつれてある程度我慢できるようになり,家の中の暴発回数は減った。しかし,その代わりとして早朝時にTちゃんが「トイレに行きたい…!」という悲痛なモーニングシャウトをするようになった。結局,筆者が毎回外に連れ出してトイレをさせることが日課になり,もし筆者が早朝時に快眠して彼女の叫びに気づかない場合はリビングにお漏らし決定というとんでもないシステムになった。無理なら室内で飼わずに庭で飼おうよ…と強く思った。

また,ホストがお風呂で暴れ回るTちゃんを制御できずに全く洗わなくなったため,Tちゃんは一部のルームメイト内から「体臭系バカ娘」の称号を得ていた。確かにドッグランから帰ってきた砂まみれのTちゃんはあまりにも臭いので,筆者は犬用のバスタオルを購入して拭いたり,犬用ドライシャンプーを独自に購入してラボからパクってきたニトリルグローブを装着のもと,月2-3回ほど洗浄したりすることでこの問題を解消していた。換毛期の時期も同様で,筆者が独自にfurminatorを購入して毎日グルーミングすることで家内の毛塗れ状態を回避した。

ここまで読んでくれた純情な読者は「えぇ…?もはやTちゃんの飼い主じゃん…。ポンコツさんっていい人なんですか…?」と認識するだろうが,その認識は訂正させていただきたい。筆者は研究生活時代に培った「自分の快適な環境は自分で作る精神」を類比思考し,快適な生活を送るために現場の環境をただ良くしようとしていただけなのだ。

ポンコツブリーダー,感動の別れをする

しかし,本質的な環境の改善ができなかったため,それ以上改善できないまま筆者の旅立ちの日を迎えてしまった。Tちゃんには成長後から筆者の前でしかしなくなった「とりあえず寝転がって股を開いてお腹を触らせる」という行為があった。筆者は「こんなビ○チな子に育てたつもりはなかったのに…」と日々嘆いていたが,Tちゃんは,筆者が家から出ていくことを雰囲気と経験で悟ったのか,筆者がスーツケースを移動させる間ずっとFig. 2Aのようにずっとお腹を触らせる態勢で「クゥーン…クゥーン…」と鳴くため,筆者は危うくうるっときてしまった(Fig. 2)。

Fig.2) Tちゃんの恥ずかしいポーズシリーズ A) 引越し直前 B)→C)→D)→A)と成長 (C)あたりから筆者以外にしなくなった。

一通りの荷物を車に乗せた後,Tちゃんとの最後の別れを惜しむために筆者が全力で頭やお腹を撫でてやると,Tちゃんは全力で筆者のジャージの裾を噛んでビチョビチョにした(しかもちょっと破けた)。筆者は最後に改めて教育の大切さを痛感させられた(…いや,まぁ…可愛いからいいんだけどね)。

ポンコツ新入居者,愕然とする

次に引っ越した家は…最高だった。あまりの待遇の違いに腰がたまげそうになった。筆者は現在も引っ越し先に滞在しており,筆者のアメリカ留学中,おそらくここから移動することはないだろう。なお,筆者が理想とするしっかり教育された双子のピジョン・フリーゼがいるため,彼&彼女との思い出もどこかで綴りたいと思う。また,今回は犬回であったが,猫もいたので隙をみて猫らとの思い出も載せていこうと思う。

続く

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たぶん有機化学が専門の博士。飽きっぽい性格で集中力が続かないので,開き直って「器用貧乏を極めた博士」になることが人生目標。いい歳になってきたのに,今だ大人になれないのが最近の悩み。読み方はナナメルorナナメェ…?

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