[スポンサーリンク]

一般的な話題

ホウ素と窒素で何を運ぶ?

[スポンサーリンク]

炭素と水素ホウ素窒素からなる一見すると単純な化合物ですが、興味深い用途が提案されています。この化合物をあなたは何に使いますか?

 

1つめのヒントです。ホウ素や窒素の電子配置を考えての通り、実際は5員環のかたちの方が自然かもしれません。そして、先ほどの化合物は常温常圧で液体です。

2015-07-24_17-09-42

2つめのヒントです。3分子のこの化合物が集まると、化学変化して次のような化合物ができます。こうして、できあがった化合物も常温常圧で液体です。

2015-07-24_17-11-43

最後のヒントです。3分子が反応して新しく1分子になる過程で何か放出されますよね。

 

化学反応の前後で水素が放出されますよね。エネルギー変換効率に優れた燃料電池でおなじみの水素です。高圧で凝縮したり、水素吸蔵合金に取り込ませたり、いくつかの方法が考案されてきましたが、どれも水素を扱うコストや安全面などで問題がありました。極端な例をあげると、パラジウム使いまくりの水素吸蔵合金を重々と積み込んだ燃料電池車では、エコロジーでエコノミーとは言えませんよね。それが、液体化合物を介して水素分子を扱えるというのだから、興味深い新たな可能性が示されたと思いませんか。

 

2015-07-24_17-14-21

できあがった化合物は、無機ベンゼンのふたつ名で知られるボラジン(B3N3H6)の構造を持っています。そのおかげもあってか、安価な塩化鉄(FeCl2)を触媒にして、1気圧80℃20分で、ほとんどロスなく、穏和に反応が進行します。

惜しむらくは、現時点では再利用のための逆反応に水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)を使うということでしょうか。この点については、まだ最適化されたものではなく、究極的にはもっとエネルギーのやりとりが小さい化合物で済むように、改良していきたいとのことです。

 

参考文献

  1.  “A Single-Component Liquid-Phase Hydrogen Storage Material” Wei Luo et al. J. Am. Chem. Soc. 2011 DOI: 10.1021/ja208834v

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4274209210″ locale=”JP” title=”ベーシックマスター無機化学 (BASIC MASTER SERIES)”][amazonjs asin=”4274211037″ locale=”JP” title=”有機化学 (ベーシックマスター)”][amazonjs asin=”4797337281″ locale=”JP” title=”燃料電池と水素エネルギー 次世代エネルギーの本命に迫る (サイエンス・アイ新書)”]

 

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 日本発化学ジャーナルの行く末は?
  2. 製品開発職を検討する上でおさえたい3つのポイント
  3. 【マイクロ波化学(株)環境/化学分野向けウェビナー】 #CO2削…
  4. アルドール・スイッチ Aldol-Switch
  5. 工程フローからみた「どんな会社が?」~OLED関連
  6. 【速報】2010年ノーベル化学賞決定!『クロスカップリング反応』…
  7. ぼくらを苦しめる「MUST (NOT)」の呪縛
  8. 2010年日本化学会年会を楽しむ10の方法

注目情報

ピックアップ記事

  1. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎知識とよくある誤解
  2. 夢・化学-21 化学への招待
  3. 電子1個の精度で触媒ナノ粒子の電荷量を計測
  4. 触媒のチカラで不可能を可能に?二連続不斉四級炭素構築法の開発
  5. p-メトキシベンジル保護基 p-Methoxybenzyl (PMB) Protective Group
  6. 機構解明が次なる一手に繋がった反応開発研究
  7. 熱や力で真っ二つ!キラルセルフソーティングで構築されるクロミック二核錯体
  8. MacでChem3Dー新たなる希望ー
  9. カンファー(camphor)
  10. GRE Chemistry

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年2月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP