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ウォルター・カミンスキー Walter Kaminsky

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ウォルター・カミンスキー (Walter Kaminsky, 1941年5月7日-2024年11月23日) はドイツの高分子化学者である。独ハンブルグ大学教授(写真:MISC2003)。

経歴

1941 ドイツのハンブルグに生まれ
1971 ハンブルグ大学博士号
1972 ハンブルグ大学助教授
1978 ハンブルグ大学 教授

受賞歴

1988 European Research Prize for the Recycling of Plastic Waste,
1991 Heinz Beckurts Prize for isotactic polymerization with metallocene catalysts,
1995 Alwin Mittasch Medal for the metallocene catalysts,
1996 Honorary Member of the Royal Society of Chemistry
1997 Carothers Award of the American Chemical Society, Delaware Section for Contributions and Advances in Industrial Applications of Chemistry
1997 Walter Ahlstrom Prize, Helsinki/Finland,
1998 Honorary Professor of the Zhejiang University in China
1999 Benjamin Franklin Medal for Chemistry
1999 Outstanding Achievement Award of the Society of Plastic Engineers, SPE Devision, USA
2003 Hermann Staudinger Prize 2002
2011 Medal for Most Excellent Contributions to the FSRJ

研究

メタロセン触媒の開発

工業的高分子合成に長い間活躍してきたチーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒はマルチサイト触媒(触媒の中に多くの活性点構造を含んでいる)でした。

1980年にカミンスキーは、二塩化ジルコノセンとメチルアルミノキサン(MAO)を組み合わせた均一系メタロセン重合触媒(カミンスキー触媒)を開発しました[1]。これはシングルサイト重合触媒と呼ばれ、マルチサイト触媒に比べて活性点構造が均一であるという特徴を有します。このため、高分子量かつ均一度(タクティシティ)の高い構造のポリマーを作ることができます。これにより、オレフィン精密重合への道を拓きました。

kaminsky_cat.gif

参考:重合反応の歴史(引用:Prof. Walter Kaminsky 講演会・インタビュー

第1世代 高圧法:1,000気圧以上で、酸素ラジカルによるエチレン重合。中圧法:CrOx/SiO2を触媒として、不均一系で、エチレンを100気圧以下で重合させる。現在では以下の触媒に代わった。

第2世代 低圧法:1953年マックス・プランク研究所のチーグラーの発明による配位アニオン重合触媒。TiCl4-AlEt3の複合錯体と溶媒を用いる均一系触媒で、数十気圧下、高密度ポリエチレンの製造

が可能となった(1955年、ヘキスト社)。プロピレン重合:続いて1954年、ナッタがTiCl3(固体結晶)とAlEt3を組み合わせることで、プロピレンの立体規制重合に成功した。選択的にアイソタクチックポリマーが得られる(企業化はモンテカチーニ社,1957年)。

第3世代 TiCl4-AlEt3/MgCl2系触媒で不均一系、無溶媒で高活性、高寿命なため、触媒は生成物から除去する必要もなくなり、分子量分布幅の狭い、立体規則性の高いオレフィン重合が可能となった

(1968年,三井化学ほか)。

第4世代 均一系、サンドイッチ化合物のメタロセンの一種、Co3ZrCl2がアルモキサンを助触媒として、エチレン重合に高活性を示すことがカミンスキーにより発見された。その後、配位子の工夫な

どでポリプロピレン、ポリスチレンなどの各種オレフィンの重合触媒も開発されてきている。特長としては、活性種が単一であるため、分子量分布幅が狭く、側鎖が交互に規則的に向くシンジオタクチックポリマーが得られる。

関連文献

  1. Sinn, H; Kaminsky, W; Vollmer, H. -J.; Woldt, E. Angew. Chem. Int. Ed. 1980, 19, 390. DOI: 10.1002/anie.198003901

関連書籍

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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