[スポンサーリンク]

一般的な話題

キッチン・ケミストリー

[スポンサーリンク]

 
化学者のみなさん、料理は好きですか?

勝手な予想ですが、実験好きや実験化学者の場合、嫌いではないという人が大半であると思います。ただし、化学者の場合、時間がないのでできないという人も大半だと思います。筆者もその一人です。

kitch-chem-2-enlarged.jpg

キッチンケミストリーって?

マサチューセッツ工科大学(MIT)の1年生の授業に「キッチン・ケミストリー」という授業があるのを昨日ニュースでしりました。教えているのはLakehead大学の教師であるPatricia Christie博士。

料理は化学反応の宝庫であると、料理を通して基本的な化学反応を大学生たちに教えています。例えば、スコーンをつくるときにベーキングパウダーを入れ、その際にちょっとのお酢を入れるといいのはなぜ?など。

下の動画は先日チョコレートチップクッキーを作ったときの動画です。

 

MITでは唯一“食べることのできる授業”で人気な授業だそうですよ。

 

化学者が料理を紹介する名著?

話は少しはずれますが、大好きな本としてWhat’s Cooking in Chemistry?: How Leading Chemists Succeed in the Kitchen
があります。これは数年前の本ですが著名な数十名の有機化学者が自身のケミストリーについて1ページで概略を述べる「Scientific Sketch」と、なんと得意であり好きな「料理のレシピ」、最後に「教授の一言」から成り立っています。

例えば、コロンビア大のBreslow教授は子牛とソーセージのシチュー、スクリプス研究所のNicolaou教授は、フィッシュアンドチップス、ハーバード大Evans教授に至っては通称ロンリースープと名付けているブランズウィック・シチューという具合です。ちなみにロンリースープの名の由来は妻が3-4日家を空ける時、いつもこれを食べているとのこと(苦笑)。なかなか面白い本ですよ。ぜひオススメしたいです。

 

キッチンケミストリーとクッキングケミストリー

一方で、似たような言葉で時々“クッキングケミストリー”という言葉も使われますが、キッチン・ケミストリーに比べると若干否定的な意味合いがあります。ポンポンと試薬をいれてグツグツ煮て、あけてさあできあがりよというような簡単な反応、つまり反応を追わなくてもできるような反応という意味です。または、反応実験をしているのにも関わらず、反応経過を全く見ていない際に皮肉として使われます。反応を仕掛けて、放置、その後も確認せずクエンチ、さらには組成生物も確認せずに単離精製と。本当のクッキングケミストリーならばよいですが、違うレシピでやられてもこまります。そんな時のいいわけは決まって文献ではその条件、時間であったから。

100歩譲って同じ化合物であるならばまだしも、異なる化合物でそれをいうのは料理に例えると、ラーメンとうどんは同じ麺類だから同じレシピ!!といっているようなものです。

また、料理だって「反応を追う」(見た目や味見)ことぐらいするわい!という意見があると思われますが、まさにその通りです

化学反応も料理もそれをしなければならないというよりも、それが一番楽しいひとときなのではないでしょうか?意外に見れていない人が多くいる現実にもっと化学を楽しんでほしいといつも考えています。

出来上がりをよくするため、失敗した時何が原因であったか考える為にはしっかりと”観察、味見”してもらいたいものです。分子レベルでモノが作られている瞬間を逃すのはもったいないと思います。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527326219″ locale=”JP” title=”What’s Cooking in Chemistry: How Leading Chemists Succeed in the Kitchen (Erlebnis Wissenschaft)”]

 

外部リンク

  • MIT OpenCourseWare | Kitchen ChemistryMITキッチンケミストリーのサイト。2006年から更新されていないようだが、授業は毎年行っていて、サイトにはレシピとホームワークが掲載されている。
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 宇宙に漂うエキゾチックな星間分子
  2. 2016年JACS Most Read Articles Top…
  3. 有機合成化学協会誌2019年9月号:炭素–水素結合ケイ素化・脱フ…
  4. パーフルオロ系界面活性剤のはなし ~規制にかかった懸念物質
  5. 小さなケイ素酸化物を得る方法
  6. 生物に打ち勝つ人工合成?アルカロイド骨格多様化合成法の開発
  7. Communications Chemistry創刊!:ネイチャ…
  8. 反応経路自動探索が見いだした新規3成分複素環構築法

注目情報

ピックアップ記事

  1. とあるカレイラの天然物〜Pallambins〜
  2. 電気化学と金属触媒をあわせ用いてアルケンのジアジド化を制す
  3. トップリス ツリー Topliss Tree
  4. スーパーブレンステッド酸
  5. 「温故知新」で医薬品開発
  6. Aza-Cope転位 Aza-Cope Rearrangement
  7. 光親和性標識法の新たな分子ツール
  8. コーリー・ギルマン・ガネム酸化 Corey-Gilman-Ganem Oxidation
  9. 【インドCLIP】製薬3社 抗エイズ薬後発品で米から認可
  10. 椎名マクロラクトン化 Shiina Macrolactonization

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP