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化学者のつぶやき

(-)-ナカドマリンAの全合成

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Total Synthesis of (-)-Nakadomarin A. Jakubec, P.; Cockfield, D. M.; Dixon, D. J. J. Am. Chem. Soc. 2009, ASAP. doi:10.1021/ja908399s

ナカドマリンAは海綿Amphimedon sp.から単離される海産性アルカロイドであり、強力な細胞毒性・抗生作用を示すことが知られています。 この化合物は、すなわち含窒素環・フラン環・8員環・15員環・4つの不斉点(うち一つは4級炭素)が複雑に組み合わさった大変にユニークな構造をしています。ユニークな生物活性およびその構造的特性から、合成化学者の興味を惹いて止まない化合物の一つとなっています。 今回報告されたオックスフォード大・Dixonらによる全合成は、後半の炭素骨格構築プロセスが特にCOOLです。いずれも必見の変換となっています。

鍵反応は、シンコナアルカロイド由来の有機分子触媒を用いる不斉マイケル反応。これにより、4級炭素を含む連続不斉点を制御しつつ、フラグメント同士を結合させています。反応時間が長いのはご愛敬。 nakadomarinA_2.gif
引き続きホルムアルデヒドを炭素源として用い、カスケード変換的に複素環構築を行った後[1]、官能基を整えてPictet-Spengler型の環化反応条件に伏し縮環構造を構築、最後にオレフィンメタセシスを行って15員環を巻かせています。
nakadomarinA_3.gif総工程数は僅かに16工程(!!!)であり、既報の全合成例[2]が最短でも29工程必要としていたことを考えれば、今回のルートが途轍もなく効率良いものであることが分かります。 有機分子触媒が全合成に用いられる例も昨今増えてきました。有機分子触媒が進行させる反応はさほど妙な官能基変換を必要としないものが多いゆえに、上手く使えばこれほどに綺麗な全合成を行うことが可能となる――今回紹介した全合成は、その良き実証例となってくれるように思います。

 

関連文献

[1] Jakubec, P.; Helliwell, M.; Dixon, D. J. Org. Lett. 2008, 10, 4267. DOI: 10.1021/ol801666w [2] (a) Nagata, T.; Nakagawa, M.; Nishida, A. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 7484. DOI: 10.1021/ja034464j (b)  Ono, K.; Nakagawa, M.; Nishida, A. Angew. Chem., Int. Ed. 2004, 43, 2020. doi:10.1002/anie.200453673 (c) Young, I. S.; Kerr, M. A. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 1465. DOI: 10.1021/ja068047t

 

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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