[スポンサーリンク]

ケムステニュース

未来の病気診断はケータイで!?

[スポンサーリンク]

今回はChemistry Worldから「Monitoring asthma with mobile phones (携帯電話で喘息の診断をする)」というニュースをお届けします。

イギリスの会社Applied Nanodetector Technology は、既にプロトタイプたるケータイを作り上げ、先日のUK NanoForum & Emerging Technologies 2009にて公表したそうです。

見た目はフツーのケータイと何ら変わらないのですが、空いてる小さな孔から進入する吐息の一酸化窒素(NO)濃度をppbレベルで検出し、ディスプレイに表示する機能が搭載されているそうです。吐息のNO濃度は気道炎症のマーカーとなり、喘息診断に活用出来るそうです。つまり普段のコンディションとの違いを、ケータイ画面から判断出来るようになるということです。

これを可能とした材料は、今を時めくカーボンナノチューブ。コレを使えば、ケータイに搭載できるほどの超小型NOセンサーを作ることが出来るそうです。

carbon-nanotube.jpgソースがこの記事だけなので、これ以上の詳細は不明ですが、なんとも夢のある技術ではないでしょうか。

吐息からは200種類以上の化学物質がはき出されているそうですから、このアイデア・コンセプトは幅広く応用が利きそうです。

例えば、吐息に含まれるウィルスを特異的に検出できるようになれば、昨今世間を騒がせている新型インフルエンザにかかっているかどうか、なんてこともケータイで判別可能になるかもしれません。

エタノールやアセトアルデヒド濃度を検出できれば、二日酔いに苦しむサラリーマンも喜びそうですね(笑)。

ついでに手持ち部分に体温センサーを付けて、声調の違いを音声認識する仕組みを搭載すれば、日々の身体コンディションも自動でモニター出来るでしょう。情報をまとめてリモートサーバに送信・保存するシステムを作れば、個人の健康データベースが自動的に構築できます。診断記録やカルテと相互参照するシステムを組み合わせることで、特定の病気に罹患している可能性や危険性までをも、ケータイの方で知らせてくれるようになる――そんな未来像が思い描けそうに思えます。

「病理診断に役立つ超小型化学センサーをケータイに搭載する」というシンプルなアイデアですが、筆者はこういう応用を、今の今まで思いも付きませんでした。まったくなるほど!!ですね。

パーソナル性が高く人体に密着した用途のケータイだからこそ、こういう機能の搭載は意義深く、優れた着眼点だと思えます。特にケータイビジネスが進んでおり、また高齢化に伴い健康を気にする人が増える日本では、将来的に特に需要があるビジネスたりえるのではないでしょうか。

記事のタイトルだけ見ると些か誇張気味にも思えますが、中身を聞くとまったく合理的かつ優れた発展性のあるアイデアではないでしょうか。

こんなことを可能とする化学って、全く凄いですよね!

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 毒劇アップデート
  2. 有機超伝導候補が室温超高速光応答材料に変身
  3. 2009年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表
  4. 化学物質研究機構、プロテオーム解析用超高感度カラム開発
  5. 中外製薬、抗悪性腫瘍剤「エルロチニブ塩酸塩」の製造販売承認を申請…
  6. 冬のナノテク関連展示会&国際学会情報
  7. 駅トイレ光触媒で消臭
  8. 臭素系難燃剤など8種を禁止 有害化学物質の規制条約

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 研究室でDIY!~割れないマニホールドをつくろう~
  2. 第3の生命鎖、糖鎖の意味を解明する!【ケムステ×Hey!Labo 糖化学ノックインインタビュー③】
  3. START your chemi-storyー日産化学工業会社説明会
  4. マンチニールの不思議な話 ~ウィリアム・ダンピアの記録から~
  5. 第32回ケムステVシンポ「映える化学・魅せる化学で活躍する若手がつくばに集まる」を開催します!
  6. ワイリーからキャンペーンのご案内 – 化学会・薬学会年会参加予定だったケムステ読者の皆様へ
  7. 「オプジーボ」の特許とおカネ
  8. 学問と創造―ノーベル賞化学者・野依良治博士
  9. ノーベル化学賞受賞者が講演 3月1日、徳島文理大学
  10. ローゼンムント・フォンブラウン反応 Rosenmund-von Braun Reaction

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP