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博士課程学生の奨学金情報

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以前、「化学者のつぶやき」で「博士課程学生の経済事情」ということで、博士程の学生の多くがどのようにして生計を立てているのかを紹介しました。 今回の記事は博士課程学生向けの奨学金情報についてです。

経済的に恵まれた環境にいる場合とそうでない場合では、ストレスの度合いが天と地ほどの差があります。しかしながら、その待遇は本人のやる気や能力とは関係なく決定されてしまう場合が多く、学生側から積極的に動き出さなければ状況は厳しくなるばかりです。

そんな現状を打破するきっかけになればと思い、奨学金に関する情報を発信していきます。

ただ、以前の記事も含めて、決して安易な気持ちで博士課程への進学を勧めている訳ではありません。『博士課程学生の現状を知ってもらう事』及び『経済的な理由で進路が断たれるのを防ぐ事』を目的としています。

これらの記事を見て現状を知る事で、進むにしろ、立ち止まるにしろ、少しでも進路決定の手助けになれば幸いです。


博士課程の学生として、日本国内の大学院やそれに類する研究機関において研究生活を送るさい、最も多く利用されているのが日本学生支援機構の奨学金だと思います。ほとんどの学生にとって、これが生活費の基盤となっているはずです。

アルバイト等の時間を惜しんで研究をしたい学生に取って非常に有り難い制度ですが、この奨学金はあくまでも貸与であり、環境に恵まれ、かつ努力を惜しまなかった返還免除対象者以外の人は、卒業後は働きながら貸与した奨学金を返還する義務があります。

 

例. 日本学生支援機構第一種奨学金の場合
max 12.2万円×12ヶ月=年間146万円(貸与)

日本学生支援機構が主催する奨学金の詳細な情報は日本学生支援機構のHPをチェックして下さい。

その他の例としては、「ガクシン」と呼ばれる日本学術振興会の特別研究員として国から経済的な支援を受け、生活している人もいます。特別研究員として採用されれば、研究奨励費として月に約20万円の給料がもらえます。言うまでもありませんが「研究奨励費」です、研究に専念する為の給料です。



日本学術振興会特別研究員(DC1及びDC2)
約20万円×12ヶ月=年間約240万円(給与)

 

特別研究員に関する詳細な情報は日本学術振興会のHPをチェックして下さい。

これを見て明らかなように、別研究員として採用された学生は経済的な心配をすることなく研究に専念できます。 しかしながら、全ての学生がこのような手厚い待遇を受けられるはずも無く、特別研究員として採用される学生は一部の人間に限られています。

以前と比較すれば博士課程学生の特別研究員(DC1・DC2)枠は増加してはいるものの、すべての学生の手に渡るほどではありません。

研究生活はお金が全てではないです。しかし、経済的な問題をクリアできれば精神的なストレス・プレッシャーから解放されるのは確実です。研究に従事している誰もが、余計な問題(実際は重大な問題になっているわけですが・・・)については考えたくないはずです。

では、学生に対する援助は誰にお願いするべきなのでしょう?
国でしょうか?それとも民間の企業でしょうか?

いずれにしても『私が博士後期課程に在学している間、毎月20万円位寄付してくれる心優しい人はいらっしゃいませんかー!?』と問うたところで、

『この不景気にそんな奇特な人がいるはずが無い』と吐き捨てられるか、
『何故国が援助しなければならないのか』とあっさり仕訳けられかねません。

しかしながら、驚くべきことに『 い る ん で す !!』

正確には、「日本学術振興会特別研究員の研究奨励費(20万円)に匹敵するほどの金額のお金を奨学金として給付してくれる奨学金団体がある」んです!!今回はそのような革新的な奨学活動を続ける団体を紹介します。

ざっと調べた感じでは、「海外留学者を対象に奨学金を給付する」といった制度は比較的たくさんあるようです。詳細に関しては以下のサイトが非常に詳しいので、参考にしてみてください。
「修士でも申請できる大学院留学奨学金一覧」(そうだ!スタンフォ?ド、いこう。)
留学に関する情報も充実していますので、進学を機に日本を飛び出すという方にはそちらも参考にしてみては。
Makotoさん、有益な情報をありがとうございました!!

段階では数ある奨学金制度全てを網羅することはできていませんので、情報が集まり次第、追加していこうと思います。とりあえず今回は、日本国内の研究機関に所属する大学院生を対象としており、比較的誰でも応募できるような門戸が開かれた奨学金制度に焦点を当てて記事を執筆しました。具体的には、以下の二つです。

吉田育英会 大学院生給与奨学金ドクター21吉田育英会HP
 研究奨励金  月額20万円
 学校納付金  給与期間内に最高250万円を限度とする実費

●本庄国際奨学財団 日本国内の日本人大学院生奨学金本庄国際奨学財団HP
 以下の三種類のコースから選択できる。いずれも最終目標とする学位取得までの最短年 限とする。
 1. 月額20万円を1?2年間
 2. 月額18万円を3年間
 3. 月額15万円を4?5年間

募集要項や採用方法等の詳細はそれぞれのHPを参照すれば分かりますので、興味を持たれた方はチェックしてみてください。あるいは大学に募集要項が届いてる場合もありますので、大学の対応事務に確認してみてください。

いずれの奨学金団体もすでに年に複数人の博士後期課程の学生を経済的に援助してきた実績があります。一体どんな団体なのか、という疑問を持つことだと思いますので、簡単に紹介します。

吉田育英会は・・・
「YKKグループの創設者吉田忠雄氏の提唱により設立され、資質優秀な方に財政的支援を行い、教育の機会均等の場を提供することにより、国家、社会に有能な人材を育成することを目的としています。」
(吉田育英会HP、「吉田育英会概要」より転載)

そうです!ファスナーや建材で有名なYKKグループの奨学金事業です!
YKKのファスナーは信頼できる正規品の証明です。

本庄国際奨学財団は・・・
「財団法人本庄国際奨学財団は、株式会社伊藤園代表取締役会長本庄正則が、個人の保有資産である2億円と株式会社伊藤園株式100万株を基本財産、1億円を運用財産として寄付をし、平成8年12月25日文部大臣(当時)より設立を許可されました。 ?中略? 主に発展途上国とその地域の平和的発展を願って、将来そのリーダーとなり得る優秀な学生に対して、奨学金援助を行っております。研究分野を問わず、優秀な学生には学位取得に至るまで奨学金援助を行い、アルバイト等に時間を奪われることなく学問に専念して学位を取得し、帰国後は母国のため有為な人材になって欲しい、さらに親日家となり母国と我が国の掛け橋になってもらうことが、「本庄国際奨学金」の基本理念であります。」
(本庄国際奨学財団HP、「財団の紹介」より一部抜粋して転載)

 

 

そうです!「お?いお茶」や「充実野菜」で有名な伊藤園の奨学金事業です!
筆者はお?いお茶が大好きで毎日のように飲んでます。


先にも説明したとおり、奨学金の返還や入社などの義務は一切無く、純粋に若手研究者の経済的な支援を目的としています。これが本来の奨学金のあるべき姿であると思いますが、実際に実行している団体がどの程度あるでしょうか?おそらく数えるほどしか無いでしょうから、これらの奨学金制度は競争率も高く、応募すれば誰でも採用される訳ではありません。

そのため、一次試験として書類審査(研究計画書や願書等)、二次試験として面接が課されています。詳細については明らかではないので一般的な話しかできませんが、審査委員には大学教授等、その道の専門家の方々が関与しているはずです。

しかしながら、審査の面ではあらゆる分野をカバーしているとも思えないので、言うまでもないかもしれませんが、研究内容や研究計画に関する提出書類は、誰が読んでもわかりやすく書くことが必須ではないでしょうか。

また、面接では分野によって研究内容についてツッコんだ質問をされたり、全く異分野の先生方に分かりやすく説明する心得が必要かも知れません。面接官としては専門家以外に奨学金団体の方も入ってくるはずなので、奨学金財団の設立趣旨や歴史等についても理解した上で挑むのが望ましいと思います。

一つだけ注意点を挙げておくと、吉田育英会の奨学金制度に関しては推薦依頼校の場合とそれ以外の大学からの応募の場合では書類の提出方法が異なります。募集要項を良く読んだ上で申請するようにして下さい。

先の事業仕訳でも話題になりましたが、博士後期課程の学生を含む若手研究者に対する民間の企業による援助を期待するのは中々に難しいことはよくわかります。
 
それにも関わらず、このような先進的かつ我々若手科学者にとって有り難い取り組みを行っている二つの団体は、まさに時代を先取りしていると思います。
特に基礎研究に関して言えば「産学連携の実現」が難しい事は、この何十年かの取り組みを見れば歴然としています。おそらく企業・産業サイド(産)と研究者サイド(学)が求める人材や能力の間に大きなギャップがあるためだと理解しています。

では、どのように協力し合って行くのがお互いの利益になるのでしょうか?
ベストな答えは未だわかりませんが、その一つがこのような奨学金制度であると思います。

学生に対する経済的な支援とそれに支えられる活発な研究活動によって、優れた研究者が育まれ社会に輩出される・奨学金をもらっていた学生が社会に出た後に、自分がお世話になった奨学金のシステムを別の場所で立ち上げる・それを糧にまた優秀な学生が育つ・・・

という正のスパイラルが確立されれば、企業側も喜んで奨学金制度を作ってくれる事でしょう。理想論を語っているだけだと指摘されそうですが、今は科学者自身が自分たちの未来を考えて行動する事が重要なのではないでしょうか。まず第一歩は「科学者」を知ってもらう事でしょう。

筆者にとってはこのChem-stationでの活動がその一つですが、自分の考えを表現できれば方法・媒体は何でもいいと思います。最近になって化学系の漫画がweb上でもちらほら見受けられるようになりましたが、筆者が書くような堅苦しい文章よりもきっと多くの人を惹きつけるでしょうし、個人的にも更新を待ってたりします。

我々科学者にとって明るい未来のために、今は研究でもそれ以外の場面でも出来る限りの事をしていきましょう!

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トリプチセン

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博士見習い。専門は14族を中心とした有機典型元素化学。 ・既存の有機化学に新しい風を! ・サイエンスコミュニケーションの普及と科学リテラシーの構築! これらの大きな目標のため

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