[スポンサーリンク]

ケムステニュース

第一三共 抗インフルエンザ薬を承認申請

[スポンサーリンク]

daiichi1.gifのサムネール画像のサムネール画像
第一三共は2010年2月1日、日本国内におけるインフルエンザA型またはB型の治療薬CS-8958の製造販売承認申請を行った。

 MOA(mode of action:作用機序)は既存の抗インフルエンザ薬(タミフル・リレンザ・ラピアクタ)と同じノイラミニダーゼ阻害作用です。また、今回第一三共が承認申請を行った本化合物はご覧のように既存薬リレンザと基本骨格はほぼ同じです。2級水酸基がメチルエーテルになり、先っちょにピロピロしたもの(炭素鎖)が付いているだけです。服用方法もリレンザと同じ吸引となります。







daiichi2.gif


 このような新薬を業界ではMe too drug(ミートゥードラッグ)なんて呼びます。どこの製薬会社もやっている戦法で、新薬の特許とにらめっこして、特許を抜けられる化合物の中で既存薬に比べてなんらかの優位性(進歩性)を持つ化合物を探すのです。構造が類似していれば薬物としてのパラメーターも類似するのは当然のことで、その分開発にかかる時間・コスト・リスクを抑えられることができます。しかし、先にも述べたように何らかの優位性(進歩性)がないと当然新薬として認められません。今回のCS-8958に関しては1回の投与(吸引)で十分な治療効果を発揮することが臨床試験で示されました。さらに新型(H1N1)及び強毒型鳥インフルエンザ(H5N1)に対しても動物実験で高い効果を発揮することがわかっています。

 また、本化合物はプロドラッグであります。先っちょのピロピロアシル炭素鎖が体内で徐々に分解し”真の活性体”に変換されていきます。これによって体内血中濃度が長い時間維持され、長時間作用型、つまりは1回の投与で高い治療効果、に繋がっています。

daiichi3.gif

 

  • 関連書籍

  • 堀本 研子, 河岡 義裕
  • 発売日 : 2009/09/18
  • 出版社/メーカー : 講談社
  • おすすめ度 : (9 reviews)
    5インフルエンザについて正しい知識が得られます。
    5新型インフルエンザに関する専門家による優れた科学コミュニケーションの本
    5中高校生向きの本だが、大人でも解りやすくて推薦図書
    5変異するウィルス
    5世界最強のインフルエンザ対策国・日本

  • 外岡 立人
  • 発売日 : 2006/08
  • 出版社/メーカー : 岩波書店
  • おすすめ度 : (4 reviews)
    4本自体は非常に薄いが、内容は充実
    5格好の入門書
    563ページの本ですが、内容は大切なことばかり
    5著者は新型インフルエンザ情報収集の第一人者

Avatar photo

matsumoto

投稿者の記事一覧

修士(工学)。学生時代は有機合成・天然物合成に従事し、現在は某製 薬メーカー合成研究員。

関連記事

  1. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2023年版】
  2. サイエンスイングリッシュキャンプin東京工科大学
  3. 「携帯」の電池で電車走る・福井大などが実験に成功
  4. 三菱ケミカルと三井化学がバイオマス原料由来ポリエステルの関連特許…
  5. 2016年化学10大ニュース
  6. 毒を持ったタコにご注意を
  7. 「日本化学連合」が発足、化学系学協会18団体加盟
  8. がん治療用の放射性物質、国内で10年ぶり製造へ…輸入頼みから脱却…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学メーカー発の半導体技術が受賞
  2. 有機合成化学協会誌2017年7月号:有機ヘテロ化合物・タンパク質作用面認識分子・Lossen転位・複素環合成
  3. カチオン重合 Cationic Polymerization
  4. クラレが防湿フィルム開発の米ベンチャー企業と戦略的パートナーシップ
  5. Arcutine類の全合成
  6. ゴジラ級のエルニーニョに…出会った!
  7. ミズロウ・エヴァンス転位 Mislow-Evans Rearrangement
  8. 硫黄化合物で新めっき 岩手大工学部
  9. PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド
  10. MOFを用いることでポリアセンの合成に成功!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728

注目情報

最新記事

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP