[スポンサーリンク]

一般的な話題

美麗な分子モデルを描きたい!!

[スポンサーリンク]

長年こういう化学ブログをやっていますと、いろいろ凝りたくなってきます。今回はそんな話から。

筆者は記事中の化学構造式をいつもChemDrawで描いてます。しかし、常々感じる問題がありました。多くの人は、平面構造式から立体をイメージできないようなのです。筆者は平面→立体の脳内変換が得意そのものでそこは全く苦にならないのですが・・・せっかく化学構造式を描いても、実際の分子の形をイメージしてもらえないのでは実にもったいない。加えて「美しい分子モデルで魅せたい!」という思いもあったため、亀の甲を使わずに三次元的な分子モデルを描くスキルには前々から興味がありました。

ちょっとしたものを描くだけなら、ChemDraw付属のChem3Dを使うのが最も手っ取り早いです。しかし筆者の技術では美しいというには程遠い、地味~なモデル(冒頭左から2番目)しか描けませんでした。もーちょっとクオリティ高くならんのかよ・・・と悶々したものをいつも感じておりました。

そこで一念発起して、もっときれいな三次元モデルを描く方法がないかと調べてみました。

ChemDrawの化学構造式を、立体図に起こせるやり方の模索
②余分な有料ソフトを買わずに済む、無料なやり方の模索

という2点を念頭に置き、 試行錯誤に数日を費やし、最終的に・・・冒頭右端のような分子モデルを描くことに成功しました!

やったよお前ら!! (・・・まあ偉いのは自分じゃなくて、ソフトを提供してくれてる作者様ですがね)

てな訳で今回のテーマは、右端図のような「美しい3D分子モデルを描く方法」の解説です。(※Winを例にとって説明します)

有機化学美術館スタイルファンの皆様に

原子位置情報を含むファイル(MOLやPDBファイル)を図示してくれるソフトウェアは、世の中にたくさんあります。優れたフリーウェアがあるのなら、それを使えば実現できるのでは?と考えました。Google先生の助けを借りて可視化ソフトを探してみると、例えばここここなんかに一覧が見つかりました。

しかしアプリの種類ががいっぱいありすぎて、どれがいいのかわからん!!・・・つーわけでかたっぱしから試してみました

結論。

Discovery Studio Visualizerというソフトを使えば、一番簡単に実現できると思います。このソフトは有機化学美術館さんが使っておられるものと同じで、フリーで使えるという大変な優れもの。ダウンロード手順はちと面倒ですが、まぁそこは頑張ってみてください。いろんな機能があるらしく全く使いこなせておりませんが、ともかく分子モデルを描く方法を。

やり方自体は至極簡単。ChemDrawで描いた構造式をDiscovery Studioの窓にペーストし、画像として保存するだけです

3Dmodel_2

左にあるメニューで細かい修整も可能です。”clean geometry”をクリックすれば、ごく簡単な配座訂正もしてくれますし、原子を足したり消したりすることも可能です。
右クリックメニューの”Display Style”で適切なスタイルを選べば、いろんなタイプの分子が描けます。”Stick”を選べば、有機化学美術館スタイルのCGモデルが描けてしまいます。凄い!

ファッショナブルな分子モデルを求める方に

これだけでも十分すぎるクオリティです。しかし自分は凝り性なものですから、さらに綺麗に描ける方法は無いものか?と欲深く探索を続けてみました。

冒頭右端のようなちょっと幽き感じの分子モデルは、Discovery Studioでは描けません。

ここで登場するのがQuteMolという描画ソフトです。PDB形式のファイルを読み込んで図示するだけの単機能アプリですが、出力が非常にアーティスティックで、筆者はとても気に入りました。

使い方はこれまた簡単。Discovery Studioで表示させた分子をPDBフォーマットで保存し、QuteMolで開くだけ。あとはお好みでスタイルを調節すればOK。出力はPNG、JPG、そしてなんとGIFアニメーションまでサポート!

3Dmodel_3
このやり方で描いてみた分子モデルをいくつか載せておきましょう。Space-filling (CPK)modelでも描けます。うーむ、素晴らしい!(自画自賛)

3Dmodel_4
さて、いかがでしたでしょうか。正直手順がメンドイのが最大の欠点でしょうか。またこのやり方だと、構造最適化計算まではできませんので、別のソフトの力を借りる必要があります。

しかし素晴らしく綺麗な分子モデルが描け、自分好みにカスタマイズできるのは大きな魅力です。勝負プレゼン用の分子グラフィックスを準備する際にでも、是非お役立てください。

関連商品

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. その実験結果信用できますか?
  2. 私が思う化学史上最大の成果-1
  3. ホウ素ーホウ素三重結合を評価する
  4. 神経変性疾患関連凝集タンパク質分解誘導剤の開発
  5. 大学院生になっても宿題に追われるってどないなんだが?【アメリカで…
  6. 個性あるジャーナル表紙
  7. ADC薬 応用編:捨てられたきた天然物は宝の山?・タンパクも有機…
  8. オスミウム活性炭素 –ニトロ基選択的還元触媒–

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 不正の告発??
  2. 原子間力顕微鏡 Atomic Force Microscope (AFM)
  3. 自宅での仕事に飽きたらプレゼン動画を見よう
  4. アピオース apiose
  5. 有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ
  6. 水が決め手!構造が変わる超分子ケージ
  7. アミン化合物をワンポットで簡便に合成 -新規還元的アミノ化触媒-:関東化学
  8. 18万匹のトコジラミ大行進 ~誘因フェロモンを求めて②~
  9. アノードカップリングにより完遂したテバインの不斉全合成
  10. ホストとゲスト?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年7月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

注目情報

最新記事

【ナード研究所】新卒採用情報(2024年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代…と、…

株式会社ナード研究所ってどんな会社?

株式会社ナード研究所(NARD)は、化学物質の受託合成、受託製造、受託研究を通じ…

マテリアルズ・インフォマティクスを実践するためのベイズ最適化入門 -デモンストレーションで解説-

開催日:2023/04/05 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

ペプチド修飾グラフェン電界効果トランジスタを用いた匂い分子の高感度センシング

第493回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 物質理工学院 材料系 早水研究室の本間 千柊(ほ…

日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 2

第一弾に引き続き第二弾。薬学会付設展示会における協賛企業とのケムステコラボキャンペーンです。…

有機合成化学協会誌2023年3月号:Cynaropicri・DPAGT1阻害薬・トリフルオロメチル基・イソキサゾール・触媒的イソシアノ化反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年3月号がオンライン公開されました。早…

日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 1

さて、日本化学会春季年会の付設展示会ケムステキャンペーンを3回にわたり紹介しましたが、ほぼ同時期に行…

推進者・企画者のためのマテリアルズ・インフォマティクスの組織推進の進め方 -組織で利活用するための実施例を紹介-

開催日:2023/03/22 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

Part 1・Part2に引き続き第三弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。…

第2回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、4月21日(金)に第2…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP