[スポンサーリンク]

一般的な話題

薬学部6年制の現状と未来

[スポンサーリンク]

初めまして、今年度よりケムステメンバーとなりましたKと申します。 今回は自己紹介も兼ね在学していた6年制薬学部の現状を学生視点からリポートしてみたいと思います。

薬学部6年制とは?

そもそも薬学部はなぜ6年制へ変わったのでしょうか?、薬学部が6年制となったのは2006年度から、今年度で8年目となります。私は昨年度薬学部を卒業したので7年目の2期生となります。

6年制となった理由として

「薬剤師の教育の場である薬学部を6年制にすることで先進国の中で遅れている薬剤師の教育を充実させ医療の質の向上をはかる。」

との目標が旧厚生省(現・厚生労働省)の要望1)として出されたことが始まりでした。

 

内容は?

全ての薬学部の授業内容は全く同じでモデル・コアカリキュラムによる目標項目が設けてあり4年時に知識を問われるCBT (Computer Based Testing) と臨床における態度を計られるOSCE (Objective Structured Clinical Examination、客観的臨床能力試験) の両薬学共用試験に合格しなければ病院・薬局での実務実習(各々2.5カ月間)のへ参加する資格がありません。

出題範囲はそれまでに修得した規定単位の範囲から出され平成23年度 (73大学74学部) にはおのおの98.92%、100%が合格しています2)。その後実務実習を行い、卒業研究を2.5カ月間行い卒業し国家試験受験資格を得ます。

 

実際は?

3年時までの化学・生物・物理の基礎系に関する授業、実習は他の理工系学部とほぼ同じです。4年時よりOSCEに向けた臨床系の実習が開始されます。模擬患者役とのやり取りを採点される形式や調剤実習などが組まれています。無事合格し実務実習に赴くのですが、病院と薬局ではそのスタンスが異なり、特に病院においてはチーム医療が掲げられる今日、薬に関する事を一手に引き受けている現状は大変な業務であると感じました。

実習終了後、大学へ戻り所属研究室で卒業研究を行い卒論を提出し卒業となります。大学によっては卒業試験を課されそれに合格することで晴れて卒業となります。

 

問題点は?

6年制薬学部となって8年が経過しましたが多くの問題が山積しているというのが現状ではないかと思われます。まず卒業後の進路選択が以前よりせばまるでしょう。4年制では病院・薬局・MR・一般企業・公務員・大学院・研究者と様々な進路があり幅広い多様性が見られました。しかしながら6年制へと変更になった目的に”質の高い薬剤師養成″という大義名分がある為、必然的に薬剤師養成コースとなりMRなどを除き臨床系が重視される現状があります。この為、一部の大学は専門学校化の体を成していることは否めません。
次に研究室での卒業研究期間が2.5カ月と短く修士相当の基礎研究力があるのかが疑問に思えるような状況が多々見受けられます。短期間で出来ることは限られる為、内容も薄く、見かけだけとなり大学によっては研究力の著しい低下が起きている現状は今後薬学にとって大きな影響を生じかねません。
次に新設校の問題です。6年制課程導入以降私立大学の乱立は総定員の増加と入試の易化を招き場所によっては進学が到底無理な学生を入学させ、その後の進路設定に大きな影響を与える結果となっています。さらに今後統合・閉鎖が起きることは間違いなく避けられない現状であり、その様な事が起きた場合、特に研究よりも教育を重視している大学では在学生の問題と合わせ、他大学ポストへ移ることのできなかった教職員が出てしまうことは重大な問題であると考えられます。

残念ながら他にも多くの問題点がありますが、それらは以前に予見されていた提言3)の通りであると実感しました。

 

最後に

6年制へ移行し8年が経過しましたが現状では多くの問題があります、もう暫くは時間が必要なのでしょう。

今後より良いものとなっていくことを祈ります。

 

関連記事・リンク

 

関連書籍

 
The following two tabs change content below.
K

K

薬理工農を渡り歩いている合成屋です、生物と化学の境界領域に興味があります。
K

最新記事 by K (全て見る)

関連記事

  1. 新風を巻き起こそう!ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞201…
  2. 触媒でヒドロチオ化反応の位置選択性を制御する
  3. 高難度分子変換、光学活性α-アミノカルボニル化合物の直接合成法
  4. インターネットを活用した英語の勉強法
  5. クロスカップリング反応にかけた夢:化学者たちの発見物語
  6. マイクロプラスチックの諸問題
  7. 科学カレンダー:学会情報に関するお役立ちサイト
  8. 18万匹のトコジラミ大行進 ~誘因フェロモンを求めて②~

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 国武 豊喜 Toyoki Kunitake
  2. ブラッド・ペンテルート Bradley L. Pentelute
  3. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑨
  4. Horner-Emmons 試薬
  5. 劉 龍 Ryong Ryoo
  6. アメリカ化学留学 ”実践編 ー英会話の勉強ー”!
  7. トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミンを用いた原子移動ラジカル重合
  8. 目指せ!フェロモンでリア充生活
  9. 階段状分子の作り方
  10. 1,3-ジオールの不斉非対称化反応による光学活性オキサゾリン誘導体の合成

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士

第48回の海外化学者インタビューは、エリック・セリー博士です。英国で教育を受け、カリフォルニア大学ロ…

ペプチド縮合を加速する生体模倣型有機触媒

2019年、ニューヨーク大学のParamjit S. Aroraらは、活性アシル中間体への求核付加遷…

第47回―「ロタキサン・カテナン・クラウンエーテルの超分子化学」Harry Gibson教授

第47回の海外化学者インタビューは、ハリー・ギブソン教授です。バージニア工科大学の化学科に所属し、プ…

女優・吉岡里帆さんが、化学大好きキャラ「DIC岡里帆(ディーアイシーおか・りほ)」に変身!

印刷インキや有機顔料世界トップシェアのDIC株式会社は、2020年1月より、数々のヒット作に出演し、…

tRNAの新たな役割:大豆と微生物のコミュニケーション

畑に生えている大豆の根っこを抜いてみると、丸い粒みたいなものがたくさんできています。根粒(こんりゅう…

第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colquhoun教授

第46回の海外化学者インタビューは、ハワード・コルクホーン教授です。英国レディング大学の化学科に所属…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP