[スポンサーリンク]

一般的な話題

分子構造を 3D で観察しよう (1)

[スポンサーリンク]

こんにちは、アセトアミノフェンです。今回から数回にわたり、さまざまな方法で分子の 3 次元構造を観察する方法をご紹介しようと思います。もちろん簡単な分子であれば手で分子模型を組み立てることもできますが、複雑なタンパク質のような分子になるとそうはいきません。そこで、コンピュータを使って 3D モデルを作成する方法を、いろいろと紹介してみます。第1回は、Protein Data Bank に公開されているタンパク質や核酸の構造を表示し、画像として保存するまでの手順です。

 

Protein Data Bank について

はじめに、タンパク質や核酸の 3 次元構造のデータを集めた国際的なデータベースである Protein Data Bank にアクセスしてみましょう。このデータベースは米国の構造バイオインフォマティクス研究共同体 (RCSB) によって管理されています。日本では大阪大学が管理するミラーサイトがあり、こちらでも全く同じデータベースにアクセスすることができます。

日本語サイトのほうはアクセスすればすぐに情報を見つけることができると思いますので、今回は米国のサイトにアクセスしてみます。本記事のテーマは 3D モデルの表示なので、サイトの内容の詳細は省略します。


PDB-ChemStation01-01
 

ページの一番上に検索窓がありますので、試しに「1bna」と入力して検索してみてください。すると、以下のようなページに移動します。


PDB-ChemStation01-02
 

右のほうに Download Files という項目がありますので、今回は PDB File (Text) をクリックします。これで 1bna.pdb というファイルをダウンロードできます。1bna というのは、PDB に登録された構造ひとつひとつに割り当てられた固有な番号のひとつで、この場合は B 型の DNA の構造が保存されています。どのような構造なのかは、あとで表示したときに確認することにしましょう。

 

PDB ファイルを表示しよう

PDB ファイルというのは分子の 3 次元構造を保持しているのですが、実は中身はテキストファイルです。メモ帳やテキストエディットで中身を表示すれば、PDB ファイルの作成者の情報とともに、元素の種類や座標が事細かに記述されていることが分かります。ここでは PDB ファイルの情報を解釈して美麗な 3D モデルを表示してくれるソフトウェアを使います。

多数のフリーソフトがありますが、ここでは Windows, Mac, Linux などでまったく同じ操作性の Jmol というソフトウェアを使います。Jmol を使うにはあらかじめ Java をインストールしている必要がありますので、もしインストールされていない場合は先にインストールを済ませておきましょう。Java は Jmol を使わない場合にも、例えば無料で利用できる Marvin Sketch のような化学構造式エディタなど、ほかのソフトウェアでもよく利用されますので、インストールしておいて損は無いと思います。

 

Jmol のダウンロード

それでは、Jmol をダウンロードしましょう。

少し下に Obtain Jmol という項目が見つかります。どんな OS を使っていても、donwload link から直接ダウンロードできる zip ファイルで問題ありません。


PDB-ChemStation01-03
 

解凍してみると、中に入っている Jmol.jar がメインのアプリケーションです。普通にダブルクリックで起動できます。


PDB-ChemStation01-04
 

起動すると、黒い画面と一緒にスクリプト・コンソールという画面が出てきます。Jmol は直感的な操作ができる黒い GUI ウィンドウのほかにコマンドで操作するウィンドウを持ち、コマンドのほうがより細かい調節に向いています。今回はなるべく日本語版の GUI を使うようにします。

さて、先ほどダウンロードした PDB ファイルを黒いウィンドウにドラッグアンドドロップしてみましょう。すると、図 A のように表示されるはずです(見やすいようにドラッグして少し回転してあります)。


PDB-ChemStation01-ABC
 

らせん状の構造の周りに浮いている赤い点は水分子で、水素原子はかかれていません。というのも、構造を決定するために用いられた X 線回折法では、原理的に水素原子の位置を決定することができないからです。今回は水分子を表示せず、メインの DNA 分子だけを表示してみましょう。

Jmol の上部のメニューから「表示 > 選択 > 水」と進みます。特に画面では変化しませんが、これで水分子全てが選択されます。そこで「表示 > 原子 > なし」をクリックすると、水分子の赤い点が消えます。これで図 B のように DNA の核酸分子だけが残りました。

モデル化された図を見てみると、2 本の鎖が右巻きらせんの形をしています。この構造が、生体内の DNA 分子がとる最も一般的な構造で、B 型 DNA と呼ばれます。2 本の鎖の間に平行に向き合って生えている五角形や六角形は塩基対です。

少しモデルのスタイルを変更してみます。まだ今は水分子を選択した状態ですので、今度は核酸分子に切り替えましょう。「表示 > 選択 > 核酸」と進みます。続いて黒い部分を右クリックすると、またメニューが現れます。ここで「スタイル > モデルの表示方法 > CPK 空間充填」とクリックすると、図 C のような元素の種類によって色分けされた空間充填モデルに変化します。赤が酸素、青が窒素、オレンジがリン、グレーが炭素です。

 

画像として保存

モデルを画像として保存してみましょう。こうすると、プレゼン用資料に貼り付けるのに便利です。

上部のメニューから「ファイル > エクスポート > 画像として書き出し」を選択すると、ファイル名と保存先を聞かれますので、適当に指定して保存しましょう。画像の種類は PNG が劣化しづらいのでお勧めしたいのですが、Jmol 14.2.12 では保存に失敗するようでした(おそらくバグです)。でも、PNG で保存したい場合は、Jmol の機能ではなくスクリーンショット機能を使えば大丈夫です。


PDB-ChemStation01-D
 

次回は、もっと細かく表示を調節したい場合の方法を説明する予定です。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4062575620″ locale=”JP” title=”DVD-ROM付 パソコンで見る動く分子事典 Windows Vista対応版―分子の三次元構造が見える・わかる (ブルーバックス)”]

 

参考になる外部サイト

 

関連するケムステの記事

 

Avatar photo

アセトアミノフェン

投稿者の記事一覧

工学(修士);専門は応用化学・生物物理学。会社員です。

関連記事

  1. 尿はハチ刺されに効くか 学研シリーズの回顧
  2. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑮:4Kモニタ…
  3. プロテオミクス現場の小話(1)前処理環境のご紹介
  4. 自励振動ポリマーブラシ表面の創製
  5. 「低分子医薬品とタンパク質の相互作用の研究」Harvard大学 …
  6. シグマ アルドリッチ構造式カタログの機能がアップグレードしたらし…
  7. 薬学会年会も付設展示会キャンペーンやっちゃいます
  8. ストックホルム国際青年科学セミナー・2018年の参加学生を募集開…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケミカルジェネティクス chemical genetics
  2. 第二回ケムステVプレミアレクチャー「重水素標識法の進歩と未来」を開催します!
  3. ESIPTを2回起こすESDPT分子
  4. シス型 ゲラニルゲラニル二リン酸?
  5. 生体内での細胞選択的治療を可能とする糖鎖付加人工金属酵素
  6. 有機EL素子の開発と照明への応用
  7. 『ほるもん-植物ホルモン擬人化まとめ-』管理人にインタビュー!
  8. 山口健太郎 Kentaro Yamaguchi
  9. マイクロ波による事業創出やケミカルリサイクルについて/マイクロ波化学(株)9月度ウェビナー
  10. 【書籍】化学における情報・AIの活用: 解析と合成を駆動する情報科学(CSJカレントレビュー: 50)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP